[ON-6-6] 口述発表:地域 6COVID-19感染拡大は地域在住高齢者の生活機能にどのような影響を与えたか?
~明石市における基本チェックリストの分析~
緒言
本邦において2020年3月始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大は,多くの人の移動や行動は制限し,様々活動が制限される事態を生じた.高齢者はCOVID-19の重症化のリスクが高いため,多くの人が外出や楽しみ活動を自粛したのでないかと考える.この結果として生活機能の低下を起こし,長期的にみて介護が必要な高齢者も増える可能性が指摘されている.しかしながら,COVID-19感染拡大により,どのように高齢者の生活や心身機能に影響を与えたかについてCOVID-19感染拡大前の調査と比較した研究はほとんどされていない.そこで,本研究の目的は,COVID-19感染拡大は地域で生活している高齢者の生活機能にどのような影響を与えたかを,基本チェックリストの調査から明らかにすることとした.
本調査は本学における人を対象とする研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.対象者には研究の目的,方法等を説明の上,書面による同意を得て実施した.また本調査は,明石市福祉局地域共生社会室の協力を得て実施した.
方法
対象者は明石市が支援している通いの場77か所に通っている高齢者とした.調査期間は2021年6月から10月であった.対象者には基本チェックリストの1から20までの20項目の調査を実施した.また,基本チェックリストは過去に遡り,COVID-19感染拡大前の2018年5月から2020年2月のデータを後ろ向きに収集した.
感染拡大前後で基本チェックリストの変化を調べるため,感染拡大前後における基本チェックリストの良い者と不良者の割合を項目毎に比較した.また,感染拡大の基本チェックリストへの影響をより明確化するために,感染拡大前の2年間(2012年から2014年)の基本チェックリストの変化を調べた森田ら(2021)の先行研究と本調査の結果を比較した.比較には基本チェックリストを運動機能,低栄養,口腔機能,閉じこもり,認知機能の5領域にまとめ,それぞれ点数を算出した上で前後の数値の差を求めた.その結果を改善,維持,悪化の3群に分け,本調査と先行研究の結果の3群の比率の違いを5領域それぞれに比較した.これらの比較は全てχ二乗検定を用いた.
結果と考察
対象者は540名(女性:447名,平均年齢79.6±6.3歳)であった.感染拡大前後の調査の平均経過日数は712.9±169.9日であった.感染拡大後の基本チェックリストの調査日は感染拡大開始(2020年3月2日起算)から平均で525.1±37.8日後で,感染拡大前の調査日は感染拡大開始から遡り平均で188.8±160.3日前であった.
基本チェックリストの前後比較からは「バスや電車での外出」「友人の家への訪問」「外出の回数」に有意な比率の違いがあり,感染拡大により活動制限が生じた結果と考えられた.また,その他に運動機能の5項目中4項目や「固いものが食べにくい」,「何月何日か分からない時がある」という項目にも有意な比率の違いが認められ,活動制限が間接的に機能面に影響したと考えられた.先行研究(森田ら,2021)との比較から,運動機能,口腔機能,閉じこもり,認知機能に有意な比率の違いが認められ,感染拡大後に基本チェックリストが悪化している者の割合が先行研究よりも大きかった.これらの結果から,COVID-19感染拡大により高齢者は外出等の行動制限の影響を受け,様々な機能で低下している可能性が示唆された.このような現状を鑑みると,一次予防の対象者に対して様々な面での介護予防の必要性が生じており,作業療法士を含め各種専門職や行政の対応が今後の重要な課題と考えた.
本邦において2020年3月始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大は,多くの人の移動や行動は制限し,様々活動が制限される事態を生じた.高齢者はCOVID-19の重症化のリスクが高いため,多くの人が外出や楽しみ活動を自粛したのでないかと考える.この結果として生活機能の低下を起こし,長期的にみて介護が必要な高齢者も増える可能性が指摘されている.しかしながら,COVID-19感染拡大により,どのように高齢者の生活や心身機能に影響を与えたかについてCOVID-19感染拡大前の調査と比較した研究はほとんどされていない.そこで,本研究の目的は,COVID-19感染拡大は地域で生活している高齢者の生活機能にどのような影響を与えたかを,基本チェックリストの調査から明らかにすることとした.
本調査は本学における人を対象とする研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.対象者には研究の目的,方法等を説明の上,書面による同意を得て実施した.また本調査は,明石市福祉局地域共生社会室の協力を得て実施した.
方法
対象者は明石市が支援している通いの場77か所に通っている高齢者とした.調査期間は2021年6月から10月であった.対象者には基本チェックリストの1から20までの20項目の調査を実施した.また,基本チェックリストは過去に遡り,COVID-19感染拡大前の2018年5月から2020年2月のデータを後ろ向きに収集した.
感染拡大前後で基本チェックリストの変化を調べるため,感染拡大前後における基本チェックリストの良い者と不良者の割合を項目毎に比較した.また,感染拡大の基本チェックリストへの影響をより明確化するために,感染拡大前の2年間(2012年から2014年)の基本チェックリストの変化を調べた森田ら(2021)の先行研究と本調査の結果を比較した.比較には基本チェックリストを運動機能,低栄養,口腔機能,閉じこもり,認知機能の5領域にまとめ,それぞれ点数を算出した上で前後の数値の差を求めた.その結果を改善,維持,悪化の3群に分け,本調査と先行研究の結果の3群の比率の違いを5領域それぞれに比較した.これらの比較は全てχ二乗検定を用いた.
結果と考察
対象者は540名(女性:447名,平均年齢79.6±6.3歳)であった.感染拡大前後の調査の平均経過日数は712.9±169.9日であった.感染拡大後の基本チェックリストの調査日は感染拡大開始(2020年3月2日起算)から平均で525.1±37.8日後で,感染拡大前の調査日は感染拡大開始から遡り平均で188.8±160.3日前であった.
基本チェックリストの前後比較からは「バスや電車での外出」「友人の家への訪問」「外出の回数」に有意な比率の違いがあり,感染拡大により活動制限が生じた結果と考えられた.また,その他に運動機能の5項目中4項目や「固いものが食べにくい」,「何月何日か分からない時がある」という項目にも有意な比率の違いが認められ,活動制限が間接的に機能面に影響したと考えられた.先行研究(森田ら,2021)との比較から,運動機能,口腔機能,閉じこもり,認知機能に有意な比率の違いが認められ,感染拡大後に基本チェックリストが悪化している者の割合が先行研究よりも大きかった.これらの結果から,COVID-19感染拡大により高齢者は外出等の行動制限の影響を受け,様々な機能で低下している可能性が示唆された.このような現状を鑑みると,一次予防の対象者に対して様々な面での介護予防の必要性が生じており,作業療法士を含め各種専門職や行政の対応が今後の重要な課題と考えた.