第56回日本作業療法学会

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一般演題

地域

[ON-7] 一般演題:地域 7

Sat. Sep 17, 2022 3:10 PM - 4:20 PM 第3会場 (Annex2)

座長:宮寺 亮輔(群馬医療福祉大学)

[ON-7-1] 口述発表:地域 7基本チェックリストにてフレイル状態であった地域在住高齢者の要介護認定に関わる回答項目

古川 智巳12北澤 一樹1宮脇 利幸1岩谷 力1務台 均2 (1長野保健医療大学保健科学部,2信州大学大学院医学系研究科)

【はじめに】
 地域在住高齢者の要介護認定とフレイル状態の関連について多く報告がされている.基本チェックリスト(以下,KCL)を用いたフレイル分類(Satake;2016)は総得点によって判定され8点以上をフレイルと定義している.しかし,フレイルと判断された高齢者においてどのような回答項目が多いかなど,各項目の回答の特徴については明らかになっていない.長野県飯山市では介護保険認定をうけていない地域在住高齢者に対し2010年より毎年11月にKCLを継続的に実施し,協力関係である本学にて調査の解析を行っている.今回,2015年のKCLの回答結果から総得点が8点以上のフレイル状態の者について,回答項目の特徴を確認し,さらにその後の新規の要支援・要介護認定に関わるKCL回答項目について検討した.
【対象と方法】
 2015年11月現在,飯山市在住の65歳以上の介護保険の認定を一度も受けていない高齢者でKCLの回答のあった5391名のうち,KCLの項目すべてに回答し,総得点が8点以上であった486名(女性285名,男性201名,平均年齢79.0歳,SD:7.6歳,KCL総得点平均11.1点,SD:3.1点).
 KCLの各質問項目に対し「否定的な回答をした」=「該当あり」とし,該当あり率が高い項目順に並びかえ回答項目の特徴を確認した.2015年11月から2020年3月末(4年4カ月間)までに要支援・要介護認定を受けた者を認定群,受けていないものを非認定群とし,両群間の年齢とKCL各項目を比較した.KCL各項目は該当あり・なしと認定群・非認定群とでクロス集計し,項目の該当率を求め,該当あり率を両群間で比較した(年齢はStudent-t 検定,クロス表はχ²検定を用い,共に有意水準はp<0.05とした).なお,本研究は当該施設の倫理審査委員会の承認を受けている.
【結果】
 該当あり率が高かった上位7項目は「No.10:転倒不安がある」77.8%,「No.6:つかまらずに階段を昇れない」74.9%,「No.23:億劫に感じる」69.5%,「No.25:疲れを感じる」58.6%,「No.13:固いものが食べにくい」57.8%,「No.7:つかまらずに立ち上がれない」55.8%,「No.8:15分歩いていない」52.3%であった.新規に要支援・要介護を受けた認定群は145名(介護度:要支援55名,要介護90名,介護保険認定率29.8%)であった.年齢は認定群で平均82.0歳(SD: 6.8歳),非認定群で平均77.7歳(SD:7.6歳)であり,認定群で有意に高かった(p<0.001).認定群の該当あり率が非認定群に対し有意に多かったKCL項目と認定群該当率は,「No.1:バス・電車で外出していない」58.6%,「No.2:買い物をしていない」44.1%,「No.3:預貯金の出し入れをしていない」42.8%,「No.5:家族や友人の相談にのっていない」42.8%,「No.7:つかまらずに立ち上がれない」66.9%であった.
【考察】
 KCLを用いたフレイル状態の者の回答項目の特徴は運動機能,うつ,口腔機能に分類される回答項目の該当あり率が特に高く,それぞれ身体的フレイル,認知的フレイル,オーラルフレイルといった要素が多いことが確認された.そのなかでも特に運動機能は該当あり率が高い項目が多く存在し,フレイルは身体的な脆弱が主体となるが,その他のフレイルの要素を含み多面的な問題を有している(千田;2018)ことを改めて支持する結果であると考えた.フレイル状態でその後4年4カ月間に介護認定をうけた認定群の該当あり率が非認定群より高かった項目は,IADLに分類される4項目と運動機能に分類される項目であり,これらの該当あり数が多い場合は,その後の介護認定になる可能性が高いため,通いの場や介護予防事業等の介入を検討してく必要がある.