[ON-7-4] 口述発表:地域 7地域在住高齢者における墓参り行動の満足度とうつ傾向との関連
【はじめに】
我が国における代表的な宗教活動として墓参りが挙げられ(第一生命,2007),特に生花の購入額が全国2位である鹿児島県は(総務省,2021),日本一墓参りを欠かさない県とされている.鹿児島県垂水市の地域在住高齢者においては,墓参りが9割以上実施されており(日高 et al, 2021),重要な活動であることが示唆されている.さらに,墓参りは心理面との良好な関連を認めている(日高 etal, 2022).一方,重要とする活動の満足度が高い高齢者はうつ傾向である割合が低いことが報告されており(Maruta M et al, 2020),墓参り行動の満足度がうつ傾向と有意に関連している可能性がある.そこで本研究は,地域在住高齢者における墓参り行動の満足度とうつ傾向との関連を明らかにすることを目的とした.
【対象と方法】
地域コホート研究(垂水研究2018,2019)に参加した65歳以上の地域在住高齢者1031名の内,作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)にて,「宗教活動」を重要な活動として選択した313名を対象とした.なお,うつ病や認知症の既往がある者,墓参り以外の宗教活動である者,データに欠損がある者を除外し,最終的に284名を本研究の分析対象とした.
選択された5段階の活動満足度の内,満足度4以上を高満足度群,満足度4未満を低満足度群の2群に分類した.うつ傾向に関しては,先行研究(Almeida OP et al, 1999)を参考に,GDS-15において5点以上をうつ傾向ありと判定した.性別,認知機能低下(NCGG-FAT),主観的健康感,身体的・社会的フレイルの有無,うつ傾向の有無をχ²検定,年齢,教育年数,握力,歩行速度,JST版活動能力指標スコアを対応のないt検定を用いて解析を行った.そして,墓参りの満足度とうつ傾向との関連を調査するため,従属変数に墓参りの満足度,独立変数にうつ傾向の有無を設定,人口統計学変数と2群間比較にて有意差の見られた項目を共変量として調整し,ロジスティク回帰分析を行った.統計はIBM SPSS Statistic Ver.25.0を用い,有意水準は5%未満とした.本研究は,鹿児島大学疫学研究等倫理委員会の承認(170351疫)を得て実施した.
【結果】
全対象者の28.7%(284名)が重要な活動として「墓参り」を選択しており,社会的活動の6種類の中で最も高い割合であった.2群間比較の結果,高満足度群(n=216, 平均年齢76.6±6.7,女性68.5%)は低満足度群(n=68,平均年齢75.1±6.7,女性60.3%)と比較して,握力が有意に低値であり(p=0.031),うつ傾向の割合が有意に低かった(p=0.021).さらに,ロジスティク回帰分析の結果,潜在的な共変量を調整した後も,墓参りの満足度はうつ傾向と有意な関連を認めた(OR:2.26, 95%CI:1.15-4.50, p=0.019).
【考察】
本研究において,3割近くの高齢者が墓参りを重要な活動として選択しており,社会的活動の中で最も選択されていた.これは,垂水市の高齢者にとって特に重要な活動である可能性を示しており,家庭的役割や先祖を敬う習慣として続けている作業なのかもしれない.さらに,墓参りの満足度とうつ傾向には有意な関連がみられた.習慣性のある活動の満足度を高めることは,高齢者の心理・精神的側面を支援する上で重要であると考える.
我が国における代表的な宗教活動として墓参りが挙げられ(第一生命,2007),特に生花の購入額が全国2位である鹿児島県は(総務省,2021),日本一墓参りを欠かさない県とされている.鹿児島県垂水市の地域在住高齢者においては,墓参りが9割以上実施されており(日高 et al, 2021),重要な活動であることが示唆されている.さらに,墓参りは心理面との良好な関連を認めている(日高 etal, 2022).一方,重要とする活動の満足度が高い高齢者はうつ傾向である割合が低いことが報告されており(Maruta M et al, 2020),墓参り行動の満足度がうつ傾向と有意に関連している可能性がある.そこで本研究は,地域在住高齢者における墓参り行動の満足度とうつ傾向との関連を明らかにすることを目的とした.
【対象と方法】
地域コホート研究(垂水研究2018,2019)に参加した65歳以上の地域在住高齢者1031名の内,作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)にて,「宗教活動」を重要な活動として選択した313名を対象とした.なお,うつ病や認知症の既往がある者,墓参り以外の宗教活動である者,データに欠損がある者を除外し,最終的に284名を本研究の分析対象とした.
選択された5段階の活動満足度の内,満足度4以上を高満足度群,満足度4未満を低満足度群の2群に分類した.うつ傾向に関しては,先行研究(Almeida OP et al, 1999)を参考に,GDS-15において5点以上をうつ傾向ありと判定した.性別,認知機能低下(NCGG-FAT),主観的健康感,身体的・社会的フレイルの有無,うつ傾向の有無をχ²検定,年齢,教育年数,握力,歩行速度,JST版活動能力指標スコアを対応のないt検定を用いて解析を行った.そして,墓参りの満足度とうつ傾向との関連を調査するため,従属変数に墓参りの満足度,独立変数にうつ傾向の有無を設定,人口統計学変数と2群間比較にて有意差の見られた項目を共変量として調整し,ロジスティク回帰分析を行った.統計はIBM SPSS Statistic Ver.25.0を用い,有意水準は5%未満とした.本研究は,鹿児島大学疫学研究等倫理委員会の承認(170351疫)を得て実施した.
【結果】
全対象者の28.7%(284名)が重要な活動として「墓参り」を選択しており,社会的活動の6種類の中で最も高い割合であった.2群間比較の結果,高満足度群(n=216, 平均年齢76.6±6.7,女性68.5%)は低満足度群(n=68,平均年齢75.1±6.7,女性60.3%)と比較して,握力が有意に低値であり(p=0.031),うつ傾向の割合が有意に低かった(p=0.021).さらに,ロジスティク回帰分析の結果,潜在的な共変量を調整した後も,墓参りの満足度はうつ傾向と有意な関連を認めた(OR:2.26, 95%CI:1.15-4.50, p=0.019).
【考察】
本研究において,3割近くの高齢者が墓参りを重要な活動として選択しており,社会的活動の中で最も選択されていた.これは,垂水市の高齢者にとって特に重要な活動である可能性を示しており,家庭的役割や先祖を敬う習慣として続けている作業なのかもしれない.さらに,墓参りの満足度とうつ傾向には有意な関連がみられた.習慣性のある活動の満足度を高めることは,高齢者の心理・精神的側面を支援する上で重要であると考える.