[ON-8-5] 口述発表:地域 8一般市民への手指衛生に関する啓発活動の検討
【はじめに】
新型コロナウイルス感染症の感染対策は,飛沫・接触感染の予防が中心となり,不織布マスクの着用と手指衛生が重要であるとされている.しかし,一般市民の手指衛生の実施状況の調査は行われていないのが実情である.今回,一般市民の手指衛生の実態を調査し,啓発活動後に再調査を行い,今後の普及促進について検討したので報告する.なお,本研究は協力店舗の同意並びに所属機関の承認を受けて実施している.
【方法】
対象は某スーパーマーケットの入店者とした.調査期間は初回調査を2021年1月27日から,再調査は2021年2月10日からの3日間とし,それぞれ17:00~18:00とした.また啓発活動は,2021年2月1日からの5日間の17:30~18:00に実施した.
手指衛生の実施状況は,店舗の入り口で観察により判定し,年齢層・性別も記録した.手指衛生の判定は,米国疾病対策予防センターの勧告に基づき,①消毒液の量,②指先を消毒液に浸しているか,という2つの視点で行った.
初回の調査後に啓発活動を実施した.手指衛生の方法を記載したチラシを来店者に配布し,かつ手指衛生をしようとした者には実技指導を行った.データ解析はχ²検定を用いて分析した.
【結果】
初回の総入店者は762名(男性:295名,女性467名),年齢層は15歳未満44名(6%),15~64歳544名(71%),65歳以上173名(23%)であった.手指衛生の実施状況は十分13名(2%),不十分1項目41名(5%),不十分2項目230名(30%),未実施478名(63%)であった.不十分の内訳は,消毒液の量が不十分18名(7%),指を消毒液に浸さない23名(8%),両者が不十分230名(85%)となっていた.不十分な者の多くは消毒液の量が少なく,手掌や手指の掌側面の一部をこするような形で実施していた.
啓発活動後の総入店者は789名(男性:306名,女性483名),年齢層は15歳未満56名(7%),15~64歳586名(74%),65歳以上147名(19%)であった.手指衛生の実施状況は十分75名(9%),不十分1項目50名(6%),不十分2項目210名(27%),未実施455名(58%)であった.不十分の内訳は,消毒液の量が不十分6名(2%),指を消毒液に浸さない44名(17%),両者が不十分209名(81%)となっていた.
年齢層と手指衛生の実施状況に有意差が認められ(初回:p=0.001,再調査:p=0.00),高年ほど適切な実施率が高かった.また,性別と手指衛生の実施状況は再調査にて有意差を認めた(p=0.00).啓発活動後,手指衛生の実施状況は十分の者が増えたものの,初回と再調査の間に有意差は認めなかった(p=0.334).
【考察】
初回調査より,適切な手指衛生の実施率は非常に低い状況であることが明らかになった.この要因としては,具体的な実施方法を知る機会が少ないことが考えられる.また,年齢や性別による実施率の差も明らかになり,高齢の女性ほど手指衛生を適切に行っていた.
啓発活動前後の実施率には有意差は認めらなかったが,手指衛生実施者のうち「十分」な者は2%から9%と増加していた.一般市民に対する適切な手指衛生の啓発には,チラシのみ効果は限定的であると考えられ,幼少期から直接方法を指導することや,テレビやインターネットで継続して情報を発信することが重要であると考えられる.また,啓発活動の標的は実施率の低い中年以下の男性が重要であろう.
新型コロナウイルス感染症の感染対策は,飛沫・接触感染の予防が中心となり,不織布マスクの着用と手指衛生が重要であるとされている.しかし,一般市民の手指衛生の実施状況の調査は行われていないのが実情である.今回,一般市民の手指衛生の実態を調査し,啓発活動後に再調査を行い,今後の普及促進について検討したので報告する.なお,本研究は協力店舗の同意並びに所属機関の承認を受けて実施している.
【方法】
対象は某スーパーマーケットの入店者とした.調査期間は初回調査を2021年1月27日から,再調査は2021年2月10日からの3日間とし,それぞれ17:00~18:00とした.また啓発活動は,2021年2月1日からの5日間の17:30~18:00に実施した.
手指衛生の実施状況は,店舗の入り口で観察により判定し,年齢層・性別も記録した.手指衛生の判定は,米国疾病対策予防センターの勧告に基づき,①消毒液の量,②指先を消毒液に浸しているか,という2つの視点で行った.
初回の調査後に啓発活動を実施した.手指衛生の方法を記載したチラシを来店者に配布し,かつ手指衛生をしようとした者には実技指導を行った.データ解析はχ²検定を用いて分析した.
【結果】
初回の総入店者は762名(男性:295名,女性467名),年齢層は15歳未満44名(6%),15~64歳544名(71%),65歳以上173名(23%)であった.手指衛生の実施状況は十分13名(2%),不十分1項目41名(5%),不十分2項目230名(30%),未実施478名(63%)であった.不十分の内訳は,消毒液の量が不十分18名(7%),指を消毒液に浸さない23名(8%),両者が不十分230名(85%)となっていた.不十分な者の多くは消毒液の量が少なく,手掌や手指の掌側面の一部をこするような形で実施していた.
啓発活動後の総入店者は789名(男性:306名,女性483名),年齢層は15歳未満56名(7%),15~64歳586名(74%),65歳以上147名(19%)であった.手指衛生の実施状況は十分75名(9%),不十分1項目50名(6%),不十分2項目210名(27%),未実施455名(58%)であった.不十分の内訳は,消毒液の量が不十分6名(2%),指を消毒液に浸さない44名(17%),両者が不十分209名(81%)となっていた.
年齢層と手指衛生の実施状況に有意差が認められ(初回:p=0.001,再調査:p=0.00),高年ほど適切な実施率が高かった.また,性別と手指衛生の実施状況は再調査にて有意差を認めた(p=0.00).啓発活動後,手指衛生の実施状況は十分の者が増えたものの,初回と再調査の間に有意差は認めなかった(p=0.334).
【考察】
初回調査より,適切な手指衛生の実施率は非常に低い状況であることが明らかになった.この要因としては,具体的な実施方法を知る機会が少ないことが考えられる.また,年齢や性別による実施率の差も明らかになり,高齢の女性ほど手指衛生を適切に行っていた.
啓発活動前後の実施率には有意差は認めらなかったが,手指衛生実施者のうち「十分」な者は2%から9%と増加していた.一般市民に対する適切な手指衛生の啓発には,チラシのみ効果は限定的であると考えられ,幼少期から直接方法を指導することや,テレビやインターネットで継続して情報を発信することが重要であると考えられる.また,啓発活動の標的は実施率の低い中年以下の男性が重要であろう.