第56回日本作業療法学会

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一般演題

基礎研究

[OP-3] 一般演題:基礎研究 3

Sat. Sep 17, 2022 9:00 AM - 10:00 AM 第6会場 (RoomB-1)

座長:金子 翔拓(北海道文教大学)

[OP-3-1] 口述発表:基礎研究 3大学生における長期休暇中の睡眠の質と生活様式の関係

井上 俊輔12石橋 裕3
(1社会医療法人 一成会 木村病院,2東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法科学域 博士前期課程,3東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法科学域)

【はじめに】
 徳永ら(2002)は, 中学生から社会人までの生活習慣を比較すると, 大学生の生活習慣が最も乱れており, 食生活や睡眠状況が著しく悪いことを報告している. 睡眠は大学生において取り組まれるべき課題である. 睡眠に関しては, その質が重要とされており, 睡眠の質は, 睡眠時間や睡眠効率といった定量的側面と, 睡眠の深さといった定性的側面で評価される. ところで, 大学生の睡眠や生活習慣は長期休暇中に乱れやすいことが考えられており, 長期休暇中の睡眠の質と生活様式に焦点を当てる必要があるのではないかと考えた. また, 睡眠の質と活動に対する価値や興味といった認識程度の関係を調査した研究はなく, 睡眠の質と生活様式を検討することで, 睡眠の質を活動の認識程度から理解する新たな視点を見出せるのではないかと考えた.
【目的】
 本研究は, 長期休暇中の大学生を対象に, 睡眠不良群の活動内容, 活動時間, 活動に対する価値や興味などの認識程度を睡眠良好群と比較し, 生活様式に違いがあるかを明らかにすることを目的とした.
【方法】
 研究デザインは, インターネット調査による横断的調査研究であった. アンケートサイトのURLを添付した研究対象者募集ポスターを, Social Networking Service上に掲載・拡散し, 研究対象者に回答を求めた. 研究対象者は, 過去1ヶ月間が長期休暇中かつ, 関東地方在住であり, 年齢が20歳代である4年制大学の大学生とした. なお, 調査は多くの大学生が長期休暇中である2021年8月23日から9月30日の期間で行った. 調査項目は, ピッツバーグ睡眠質問票日本語版(以下, PSQI-J)と, 作業質問紙であった. PSQI-Jは, 主観的な睡眠の質を評価できる質問紙であり, PSQI総合得点として0点から21点の範囲で得点が算出される. PSQI総合得点は, 5.5点以上で睡眠不良と判断される. 分析対象者は, PSQI総合得点をもとに睡眠不良群と睡眠良好群に分類し, 活動内容を2群間で比較した. 活動の合計時間, 認識程度については差の検定を行い, 次に睡眠不良群・睡眠良好群を従属変数, 有意水準を5%未満として, 有意差があった項目を独立変数とする多重ロジスティック回帰分析を行った. 本研究は, 東京都立大学荒川キャンパス研究倫理委員会の承認(番号:21015) を得て実施した.
【結果】
 アンケート回答者は136名であった. そのうち, 包含基準に当てはまらない者を除外した89名(65.4%)を分析対象者とした. 分析対象者をPSQI総合得点で2群に分けた結果, 睡眠不良群50名(56.2%), 睡眠良好群39名(42.8%)となった. PSQI-Jの平均点は, 睡眠不良群で7.9点(±1.5点), 睡眠良好群で3.4点(±1.4点)であった. また, 睡眠不良群は睡眠良好群と比較し「1日全体の活動」, 「仕事に該当する活動」, 「休息に該当する活動」の時間が有意に長く, 「休息に該当する活動」の「有能感」, 「興味」の得点が有意に低いことが明らかとなった. 多重ロジスティック回帰分析の結果, 睡眠不良群と睡眠良好群の生活様式の違いは「休息に該当する活動の有能感」(OR:2.5, 95%CI:1.2-5.2)であった. 最も多く休息に該当した活動は, 両群共に「動画鑑賞」であった.
【考察・結論】
 睡眠不良群は睡眠良好群と比較して「休息に該当する活動」に対して否定的な認識を持つことが明らかとなった. また, 休息に該当した活動は, 実際に行っていた活動内容でなく, 行っていた活動に対する認識程度が関係していることが示された. 今回の結果は, 活動時間や認識程度に焦点を当てることが, 睡眠に問題を抱えやすい大学生を理解する1つの見方となることを示唆するものであったと考えられる.