[OP-6-6] 口述発表:基礎研究 6/援助機器 3アームサポート「MOMOプライム」の上肢訓練機器としての有用性の検討―健常者における表面筋電計を用いたペグ挿し課題の解析―
【はじめに】MOMOプライム(以下MOMO)は,常に一定の力で前腕を水平方向に支え,三角筋を使った上肢の上下方向の動きもサポートする機能を有す.MOMOを用いることで,頚髄損傷や筋ジストロフィー等の神経疾患,廃用症候群や脳卒中後の症例で作業活動や食事の自立が可能になる.また,腱板断裂術後の症例でもMOMOが有用である可能性がある.しかし,MOMOの機能(目的動作補助,代償動作抑制)を数値化し,評価した報告はない.そこで今回,健常者を対象にMOMO装着の有無でのペグ挿し課題時の各種筋収縮を表面筋電計で測定し,肩関節疾患の上肢機能訓練として使用する場合のMOMOの有用性を評価した.
【対象および方法】対象は本研究の趣旨を説明して同意を得られた健常者13名である.対象の内訳は男性8名,女性5名で,利き手は右11名,左2名,平均年齢30±4.6歳であり全例右上肢を測定対象とした.リーチ動作時の各種筋収縮を調査するため,方法はペグ挿し課題として,MOMO装着なしとありの2条件とした.測定筋は僧帽筋上部線維(UT),三角筋前部線維(DA),上腕二頭筋(BC),上腕三頭筋(TC)とした.方法は,机の縁より5cm前方に横1列にペグを5つ並べ,右手で左側より順に取り45cm前方の基盤に左側から順に挿す課題とした.開始肢位は肘関節90°位で机に垂直に腕を置いた肢位,停止肢位は4cm前方到達位とした.計測方法は,ペグを取る,前方へ移動する,ペグを離す,次のペグの上に戻る動作を各2秒間で行い,それを1周期として5周期(40秒間)施行した. MOMOのスプリング強度は,上肢を脱力した状態で肩関節屈曲角度0°,外転40°となるよう調整した.表面筋電計(トランクソリューション社TS-MYO)を用い,周波数帯域は50〜450Hz,筋電図のデータ解析区間は5周期の中間3周期を解析に用いた.3周期のそれぞれ1周期分のRMS(Root Mean Square)を用い整流平滑化し,積分値(IEMG)を求め,平均値で表した.また,MOMO装着後のIEMGの平均値を,装着前のIEMGの平均値で割った%IEMG比で比較した.統計学的解析ではMOMO装着なし,ありの3周期の平均値を対応のあるt検定で比較し,有意水準は5%未満とした.
【結果】MOMOを装着することで筋活動量はUTで平均0.095mVから0.064mV(p=0.045),DAは平均0.405mVから0.122mV(p<0.001),BCは平均0.178mVから0.039mVで有意に減少した(p<0.001).TCは平均0.049mVから0.085mVで有意に増加した(p=0.043).%IEMGはMOMO装着後にUT:67%,DA:30.1%,BC:22.1%,TC:171.2%であった.
【考察】リーチ動作はOpen kinetic motionであり,一連の動きは抗重力下に行うことになり,通常であれば動作に関連する筋の収縮は持続的に観察される.しかし,MOMOの使用により上肢が下から支持され除重力位になったことで,UTとDAの筋活動が有意に減少したと考えられた.また,MOMOのスプリング強度を肩関節外転40°に設定したことで,リーチ動作が水平屈曲方向に転換されたため,BCの筋活動が減少したと考えられる.一方,リーチ動作においてはMOMOにより水平伸展方向にアシストされるが,ペグ挿し課題では肘伸展動作が含まれ,前腕を支持するMOMOの機器がTCの筋活動に抵抗性に働いたため,筋収縮が有意に増加した可能性がある.肩関節障害では,肩関節屈曲動作時に肩すくめ動作が多く認められ,挙上やリーチ動作が制限される.今回の結果からUTを抑制させながらDA,BCの筋活動が少ない状態でペグ課題を遂行できることが明らかになった.そのため,MOMO使用により肩すくめの原因となるUTの代償的筋収縮を抑制しながら,肩関節疾患の回復途中にある症例のリハビリテーションに有用であると考えられた.
【対象および方法】対象は本研究の趣旨を説明して同意を得られた健常者13名である.対象の内訳は男性8名,女性5名で,利き手は右11名,左2名,平均年齢30±4.6歳であり全例右上肢を測定対象とした.リーチ動作時の各種筋収縮を調査するため,方法はペグ挿し課題として,MOMO装着なしとありの2条件とした.測定筋は僧帽筋上部線維(UT),三角筋前部線維(DA),上腕二頭筋(BC),上腕三頭筋(TC)とした.方法は,机の縁より5cm前方に横1列にペグを5つ並べ,右手で左側より順に取り45cm前方の基盤に左側から順に挿す課題とした.開始肢位は肘関節90°位で机に垂直に腕を置いた肢位,停止肢位は4cm前方到達位とした.計測方法は,ペグを取る,前方へ移動する,ペグを離す,次のペグの上に戻る動作を各2秒間で行い,それを1周期として5周期(40秒間)施行した. MOMOのスプリング強度は,上肢を脱力した状態で肩関節屈曲角度0°,外転40°となるよう調整した.表面筋電計(トランクソリューション社TS-MYO)を用い,周波数帯域は50〜450Hz,筋電図のデータ解析区間は5周期の中間3周期を解析に用いた.3周期のそれぞれ1周期分のRMS(Root Mean Square)を用い整流平滑化し,積分値(IEMG)を求め,平均値で表した.また,MOMO装着後のIEMGの平均値を,装着前のIEMGの平均値で割った%IEMG比で比較した.統計学的解析ではMOMO装着なし,ありの3周期の平均値を対応のあるt検定で比較し,有意水準は5%未満とした.
【結果】MOMOを装着することで筋活動量はUTで平均0.095mVから0.064mV(p=0.045),DAは平均0.405mVから0.122mV(p<0.001),BCは平均0.178mVから0.039mVで有意に減少した(p<0.001).TCは平均0.049mVから0.085mVで有意に増加した(p=0.043).%IEMGはMOMO装着後にUT:67%,DA:30.1%,BC:22.1%,TC:171.2%であった.
【考察】リーチ動作はOpen kinetic motionであり,一連の動きは抗重力下に行うことになり,通常であれば動作に関連する筋の収縮は持続的に観察される.しかし,MOMOの使用により上肢が下から支持され除重力位になったことで,UTとDAの筋活動が有意に減少したと考えられた.また,MOMOのスプリング強度を肩関節外転40°に設定したことで,リーチ動作が水平屈曲方向に転換されたため,BCの筋活動が減少したと考えられる.一方,リーチ動作においてはMOMOにより水平伸展方向にアシストされるが,ペグ挿し課題では肘伸展動作が含まれ,前腕を支持するMOMOの機器がTCの筋活動に抵抗性に働いたため,筋収縮が有意に増加した可能性がある.肩関節障害では,肩関節屈曲動作時に肩すくめ動作が多く認められ,挙上やリーチ動作が制限される.今回の結果からUTを抑制させながらDA,BCの筋活動が少ない状態でペグ課題を遂行できることが明らかになった.そのため,MOMO使用により肩すくめの原因となるUTの代償的筋収縮を抑制しながら,肩関節疾患の回復途中にある症例のリハビリテーションに有用であると考えられた.