第56回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

管理運営

[OQ-1] 一般演題:管理運営 1

2022年9月16日(金) 13:20 〜 14:20 第5会場 (RoomB)

座長:小川 真寛(神戸学院大学)

[OQ-1-4] 口述発表:管理運営 1回復期リハビリテーション病棟におけるFIM予後予測を基にしたADL介入の効果

~疾患別による比較から得られた知見~

田原 真悟1岡部 拓大2伊東 惟1 (1医療法人社団武蔵野会 小平中央リハビリテーション病院 リハビリテーション科,2東京家政大学健康科学部リハビリテーション学科)

【背景】昨今,回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)では適正なアウトカム評価が求められている.2020年の医療保険改定では,リハビリテーション実績指数(入院時と退院時のFIMの差を在院日数で割ったもの)の基準が引き上げられた. それ以降,当院では,経験を積んだ管理職のセラピストが,入院時FIMの点数と初期評価での障害像を基に退院時のFIMの予後予測を行い,実績指数=40から入院日数を設定し,担当のセラピストと情報共有した上でプログラムを立案している.その結果,実績指数が有意に向上し(共同演者の岡部らが報告),疾患別(運動器・脳血管)によって各ADLの向上に変化がみられた為,以下に報告する.
【目的】回復期リハビリ病棟におけるFIMの予後予測と実績指数を基にしたリハビリテーションアプローチの効果を,疾患別に比較検討を行うことを目的とした.
【対象】本取り組みを行う前である未介入期(2019年12月から2020年5月までの6ヶ月間)における入院患者59名と取り組み実施後の介入期(2020年6月から2020年11月までの6ヶ月間)における入院患者73名の計132名を解析対象とした.
【方法】調査項目として,年齢,性別,疾患別(運動器・脳血管),入院日数,入院時と退院時FIMの各項目点数,FIM利得(退院時 FIMと入院時 FIMとの差),実際の在院日数を後ろ向きに調査した.各疾患別における未介入期と介入期との各FIMの点数の差を検証するため,Mann-Whitney Utestを行った.
【倫理的配慮】本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得て実施された.
【結果】未介入期と介入期との間で年齢,性別比,入院時のFIMの点数に有意な差は認められなかった.介入期では未介入期と比較し,脳血管疾患ではFIM利得(p=0.01)が有意に向上し,運動器疾患では入院日数(p=0.046)が有意に短縮していた.各疾患別における未介入期と介入期とのFIM利得(退院時のFIM点数と入院時のFIMの点数の差)の比較では,運動器疾患において未介入期と介入期との間に有意な差は認められなかった.脳血管疾患では,食事 (p=0.037),整容 (p=0.001),更衣 (上半身:p=0.003,下半身:p<0.001),トイレ動作 (p<0.001),移乗 (ベッド:p=0.003,車いす :p=0.002,トイレ : p=002,浴槽 : p=0.015),歩行(p=0.002)のADL項目において介入期の点数が有意に高かった.
【考察】当院の回復期リハビリ病棟におけるFIMの予後予測と実績指数を基にした介入によって,運動器疾患ではADLの変化に差はなく,脳血管疾患でADLの変化に差があったことが認められた.運動器疾患において介入期と未介入期で有意な差がみられなかった要因として,運動器疾患では,心身機能レベルでの機能向上がADL改善につながりやすく,介入前後において予後予測や目標設定に差異が無かったのではないかと考える.一方,脳血管疾患では,重症度や後遺症によって,障害像の個別性が多岐にわたり,心身機能のアプロ―チだけではADL向上につながりにくいことが多いと思われる.介入期では,ADLの予後予測を行い,明確な期間や目標を設定することで,生活行為に焦点をあてた活動レベルの作業療法アプローチが可能となり,実績指数の改善にも繋がったのではないかと考える.今回の取り組みで,対象者個々の生活に寄り添い,活動レベルを意識した作業療法の必要性が高いことを改めて認識する契機となった.