第56回日本作業療法学会

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一般演題

管理運営

[OQ-1] 一般演題:管理運営 1

Fri. Sep 16, 2022 1:20 PM - 2:20 PM 第5会場 (RoomB)

座長:小川 真寛(神戸学院大学)

[OQ-1-5] 口述発表:管理運営 1リハビリテーション専門職の場面の違いによるリスク認知の特徴

林 亜遊1有久 勝彦2林 辰博1石附 智奈美3宮口 英樹3 (1大阪医療福祉専門学校 作業療法士学科,2国際医療福祉大学福岡保健医療学部作業療法学科,3広島大学大学院医系科学研究科)

【緒言】筆者らはリスク認知に関する評価を行えるTime Pressure-Kiken Yochi Training効果測定システム(以下,TP-KYT)を独自に作成し(有久,2019),評価法としての妥当性や熟達者の特徴,職種の特徴などについて本学会で報告してきた.今回従来のTP-KYT(以下,TP-KYT-A)に加えて新しいTP-KYT(以下,TP-KYT-B)を開発した.評価表が増えることで前後比較を容易にし,様々なリスク場面のリスク認知の特徴を明らかにすることに貢献すると考えられる.そこで本報告ではTP-KYT-AおよびBの記述内容の分析からその妥当性を検討する.
【目的】TP-KYT-AとBの妥当性を記述内容の観点から検討することを目的とする.
【方法】対象:TP-KYT-A;リハ専門職57名(理学療法士25名・作業療法士29名・言語聴覚士3名.女性28名・男性29名,平均年齢±標準偏差33.52±5.88歳.平均経験年数±標準偏差8.73±5.24年).TP-KYT-B;リハ専門職43名(理学療法士22名,作業療法士16名,言語聴覚士5名),平均年齢±標準偏差31.55±8.23歳.平均経験年数±標準偏差5.90±6.17年).TP-KYT:リスク状況のイラストについて危険と感じた内容について10秒の時間制約下でできるだけ多くのリスクをチェック方式によって抽出してもらい,その後その内容について記述を求めた.記述内容はリストに沿って得点化することができる(有久,2019).TP-KYT-A・Bはそれぞれ5つのリスク場面の評価を求めるが,今回は排泄場面と移乗場面を取り上げた.分析方法:TP-KYT-A・Bで用いた排泄場面と移乗場面に関する記述内容を分析対象とした.テキストマイニングの解析ソフトであるKH Coder-3を用いて分析した.同様の意味を持つ単語をまとめ合わせるコーディングルールを作成し,対応分析によって分析した.コーディングルールは,「危険」,「位置」,「環境にあるもの」,「身体部位」,「能力」,「動作」の6つである.コーディングルールの作成に当たっては質的研究の経験を持つ共同研究者のスーパーバイズを受けて吟味した.倫理的配慮:対象には研究目的と方法など説明し,自由意志による参加を求めた.尚,本研究は共同演者所属機関の倫理審査会の許可を得て実施した.
【結果】総抽出語(内,使用)9,731(4,726)語,異なり語数(内,使用)784(626)語であった.対応分析の結果,成分1の寄与率80.8%,成分2の寄与率15.64%(累積寄与率96.44%)であった.成分1は「静的場面と動的場面の違い」を成分2は「介助者の有無」を表していた.各場面に特徴的なコーディングルールは,TP-KYT-Aのトイレ場面で「危険」,TP-KYT-Bのトイレ場面で「危険」,「位置」,TP-KYT-Aの移乗場面で「身体部位」,「動作」,TP-KYT-Bの移乗場面で「動作」,「位置」であった.
【考察】成分1は右にTP-KYT-Aの移乗場面,左にTP-KYT-A・Bのトイレ場面,TP-KYT-Bの移乗場面が配置された.TP-KYT-Aの移乗場面は一人で座っているイラストであり,TP-KYT-A・Bのトイレ場面およびTP-KYT-Bの移乗場面は行動を起こそうとしているイラストであった.成分2は上方にTP-KYT-A・Bのトイレ場面およびTP-KYT-Aの移乗場面が配置され,下方にTP-KYT-Bの移乗場面が配置された.TP-KYT-A・Bのトイレ場面,TP-KYT-Aの移乗場面は患者一人のイラストであったのに対して,TP-KYT-Bの移乗場面は介助場面であった.これらのことから同じ移乗場面であっても行動を起こそうとしているか・そうでないか,介助者の有無など状況の違いによってリスクが異なることが分かった.今回TP-KYT-A・Bの比較を行ったがAか,Bかであるよりも場面やその場面の状況による違いが大きく,TP-KYT-BはTP-KYT-Aと同様にリスク場面の評価として適していると言える.