[OR-1-1] 口述発表:教育 1作業療法学科女子学生のライフイベントにおける就労意識の在学中の変化
【はじめに】
作業療法士(以下OT)のライフイベントに伴う離職・休職や指導的役割からの離脱は,本人の不利益となる場合があるほか,職場や職能団体活動においても担い手の損失など問題になり得る.演者はこれまでに,作業療法学科学生の就労に対する意識とライフコース展望について質問紙調査を行い,男女とも多くの学生が「結婚し,OTとして働き続けたい」と希望する一方,育児期にフルタイム就労(FTW)を希望する割合は男性と比較し女性の方が少ないこと,臨床業務に対する意欲は性差が小さいが,後輩育成や職場管理の役割に対する積極性では女性が有意に低いことを報告した1)2) .
今回は,初回調査時1年生だった学生の2年後3年次に再び調査を実施し,女子学生に着目して在学中の意識の変化を考察したので報告する.調査対象には書面と口頭で説明を行い,回答を持って研究同意とした.本研究は当該施設倫理委員会の承認を得ている(FUJI20200002).
【方法】
対象は,2019年度に3年制養成校作業療法学科1年生に在籍中であった学生とし,2019年,2021年に質問紙調査を行った.調査は無記名で,職業観,結婚・育児・介護における就労形態や家事・育児分担等の希望,ロールモデルの有無等を選択肢方式で質問した.調査用紙は筆頭演者が配布し,その場で回収した.
【結果】
回答のうち既婚者のものを除き,2019年度の1年生39名(男性15名,女性24名),2021年度の3年生32名(男性13名,女性19名)のデータを用いた.
結婚後,育児期とも退職したい学生は男女ともに少数であった.3年次に「結婚して仕事を続ける」と回答した学生のうち,FTW希望が女性は67%,男性は84%であった.女性はFTW希望が1年次より減少し,パートタイム就労(PTW)希望が0から27%に増加した.「育児期」のFTW希望の変化は,1年から3年で,女性は64%から46%,PTW希望は36%から46%であった.男性のFTW希望は3年次82%であった.男性は結婚後,育児期とも経年変化が少なかった.
業務に対する関心では,臨床業務,研修会への参加については,学年,性別を問わず「取り組みたい」が高値を示した.一方,複数の項目で経年変化に男女間の差異が見られた.女性では,部門責任者としての役割は1年次15%から3年次10%,職能団体活動は同42%から30%,関連資格の取得は同69%から65%と減少したのに対し,男性では,部門責任者40%から54%,職能団体活動46%から69%,関連資格の取得73%から92%と増加が見られた.
【考察】
これまで,学生の就労意識に男女差があることを報告したが,今回,1年次には,女性においても専門職としての役割に意欲的な回答の割合が比較的多く,学業が進む中で男性と志向の違いが現れた点は重要と考えられる.男性の意識変化からは,学生が授業や臨床実習を通して臨床業務以外の役割の重要性も認識していく過程があると推測されるが,女性は結婚・育児期における就労イメージが明確になるにつれてそれらの役割に消極的な選択をしているのではないかと考えられる.ロールモデルの不在など,その要因をさらに明らかにし,職業教育のあり方を検討したい.
【文献】
1)市村紋子:作業療法学生の就労に対する意識とライフコース展望の実態調査.第19回東海北陸作業療法学会誌, 2019.
2)市村紋子 中村直人:作業療法学生の就労に対する意識とライフコース展望の実態調査 第2報.第33回静岡県作業療法学会誌, 2020.
作業療法士(以下OT)のライフイベントに伴う離職・休職や指導的役割からの離脱は,本人の不利益となる場合があるほか,職場や職能団体活動においても担い手の損失など問題になり得る.演者はこれまでに,作業療法学科学生の就労に対する意識とライフコース展望について質問紙調査を行い,男女とも多くの学生が「結婚し,OTとして働き続けたい」と希望する一方,育児期にフルタイム就労(FTW)を希望する割合は男性と比較し女性の方が少ないこと,臨床業務に対する意欲は性差が小さいが,後輩育成や職場管理の役割に対する積極性では女性が有意に低いことを報告した1)2) .
今回は,初回調査時1年生だった学生の2年後3年次に再び調査を実施し,女子学生に着目して在学中の意識の変化を考察したので報告する.調査対象には書面と口頭で説明を行い,回答を持って研究同意とした.本研究は当該施設倫理委員会の承認を得ている(FUJI20200002).
【方法】
対象は,2019年度に3年制養成校作業療法学科1年生に在籍中であった学生とし,2019年,2021年に質問紙調査を行った.調査は無記名で,職業観,結婚・育児・介護における就労形態や家事・育児分担等の希望,ロールモデルの有無等を選択肢方式で質問した.調査用紙は筆頭演者が配布し,その場で回収した.
【結果】
回答のうち既婚者のものを除き,2019年度の1年生39名(男性15名,女性24名),2021年度の3年生32名(男性13名,女性19名)のデータを用いた.
結婚後,育児期とも退職したい学生は男女ともに少数であった.3年次に「結婚して仕事を続ける」と回答した学生のうち,FTW希望が女性は67%,男性は84%であった.女性はFTW希望が1年次より減少し,パートタイム就労(PTW)希望が0から27%に増加した.「育児期」のFTW希望の変化は,1年から3年で,女性は64%から46%,PTW希望は36%から46%であった.男性のFTW希望は3年次82%であった.男性は結婚後,育児期とも経年変化が少なかった.
業務に対する関心では,臨床業務,研修会への参加については,学年,性別を問わず「取り組みたい」が高値を示した.一方,複数の項目で経年変化に男女間の差異が見られた.女性では,部門責任者としての役割は1年次15%から3年次10%,職能団体活動は同42%から30%,関連資格の取得は同69%から65%と減少したのに対し,男性では,部門責任者40%から54%,職能団体活動46%から69%,関連資格の取得73%から92%と増加が見られた.
【考察】
これまで,学生の就労意識に男女差があることを報告したが,今回,1年次には,女性においても専門職としての役割に意欲的な回答の割合が比較的多く,学業が進む中で男性と志向の違いが現れた点は重要と考えられる.男性の意識変化からは,学生が授業や臨床実習を通して臨床業務以外の役割の重要性も認識していく過程があると推測されるが,女性は結婚・育児期における就労イメージが明確になるにつれてそれらの役割に消極的な選択をしているのではないかと考えられる.ロールモデルの不在など,その要因をさらに明らかにし,職業教育のあり方を検討したい.
【文献】
1)市村紋子:作業療法学生の就労に対する意識とライフコース展望の実態調査.第19回東海北陸作業療法学会誌, 2019.
2)市村紋子 中村直人:作業療法学生の就労に対する意識とライフコース展望の実態調査 第2報.第33回静岡県作業療法学会誌, 2020.