第56回日本作業療法学会

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一般演題

教育

[OR-2] 一般演題:教育 2

Fri. Sep 16, 2022 1:20 PM - 2:20 PM 第6会場 (RoomB-1)

座長:青山 克実(九州栄養福祉大学)

[OR-2-1] 口述発表:教育 2コロナ禍により制限された臨床実習が卒後の臨床能力に与えた影響

岡田 侑香1山倉 敏之1 (1医療法人社団筑波記念会筑波記念病院リハビリテーション部)

【はじめに】新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の感染拡大に伴い,2020年度において作業療法卒前教育である臨床実習の実施は困難を極め,2021年度に入職する新人の臨床能力に影響することが予測された.今回,新人作業療法士(以下,OT)の臨床実習の経験状況と当院で新入職員を対象に実施している客観的臨床能力試験(以下,OSCE)の結果から,コロナ禍により制限された臨床実習が卒後の臨床能力に与えた影響について考察したので報告する.【方法】2021年度当院に入職した新人OT11名を対象に,評価実習と2回の総合実習にCOVID-19感染拡大の影響があったか,また,どのような影響を受けたか,について記名式質問紙によりアンケートを実施した.また,2019年度から2021年度に入職した新人OT32名(2019年度10名,2020年度11名,2021年度11名)のOSCEの結果を年度に分け,項目別に比較した.OSCEの評価項目は,検査の説明,運動麻痺,関節可動域,失行,基本動作,評価技術,患者への配慮,問題点抽出,総合印象の9項目で,総合印象のみ0~4点の5段階,その他の項目は0~2点の3段階で評価した.【結果】2021年度に入職した新人OTにおいて,評価実習でCOVID-19感染拡大の影響を受けた者は1名,影響を受けなかった者は10名だった.総合実習において,2回ともオンラインを含む学内実習だった者は3名,1回は学内実習・1回は現地実習だった者は5名,1回は学内実習・1回は学内と現地実習の併用だった者は3名だった.OSCEの年度別平均得点は,2019年は14.60点,2020年は14.73点,2021年は9.09点だった.各項目の年度別平均得点は,2019年度/2020年度/2021年度の順に,検査の説明は1.90点/1.82点/1.64点,運動麻痺は1.80点/1.91点/1.55点,関節可動域は1.80点/1.73点/1.55点,失行は1.50点/1.91点/0.82点,基本動作は1.20点/1.73点/1.00点,評価技術は1.10点/1.18点/0.45点,患者への配慮は1.70点/1.45点/0.55点,問題点抽出は1.40点/0.91点/0.27点,総合印象は2.20点/2.09点/1.27点だった.【考察】2021年度に入職した新人OTへのアンケート結果より,多くがオンラインなど学内実習での対応だったことから,臨床を経験できる機会は少なかったと考えられる.オンライン実習の調査では,オンラインでのつながりだけでは対象者への検査・測定やプログラムの実施が十分できず,対象者の経過の観察や治療効果を学ぶことが不十分であった(中根征也ら,2021)とされている.OSCEの得点比較では,2021年度が全項目で2019年度と2020年度を下回っており,前述した臨床実習の経験状況や先行文献を踏まえても,臨床実習経験の少なさが臨床能力に影響を与えたと考える.特に2021年度の平均得点が低かった失行は実際の患者に関わらないと障害像をイメージしづらく,患者への配慮や問題点抽出も実際の患者との関わりや症例を通して学んでいくため,臨床実習経験の少なさが与えた影響は大きかったと考える.【結語】当院新人OTの臨床実習の経験状況とOSCEの結果から,本来臨床実習で患者に関わることで学べる部分が不足しており,少なからずCOVID-19感染拡大による臨床実習経験の少なさが臨床能力に影響を与えたことが示唆された.今後も様々な理由で臨床実習が制限される可能性はあるため,新人OTを受け入れる側として臨床実習の経験状況などを踏まえて柔軟に対応することが必要である.