[OR-2-3] 口述発表:教育 2オンライン研修会を利用した研究法に関する臨床研究教育の実践:
~コロナ禍における取り組み~
【はじめに】
日本作業療法士協会は職業倫理指針の一つとして自己研鑽を掲げ,作業療法士(以下OT)は自らが行った実践や研究を常に吟味し検証し直すことが求められている.しかし,COVID-19感染症の流行により,自己研鑽の機会は流行前と比して限られている.ところで,筆者は以前より臨床現場と定期的な情報交換を重ね,その現場から研究手法や研究発表の方法に関する研修会開催の依頼を受けた.
そこで「実践の研究」を目的に,臨床現場での作業療法を科学的視点から吟味・検証するためのオンライン研修会を実施したので,その概要と結果を報告する.
【方法】
A病院のOT3名・PT3名(経験年数3年2名,5年2名,6年1名,19年1名)を対象に研修会を実施した.研修会は2021年5月より毎月60~80分/回,オンライン会議ツールZoomを用いて開催し,計13回であった.研修会の設計にはカークパトリックの理論を取り入れ(Kirkpatrick, 2016) ,研修目標として「学会での研究の成果発表」を設定した.各研修において事前に資料の配布,進捗に応じた課題を課し,事後に研究進捗管理シートの提出を求めるなど,学習効果の最大化に努め目標達成を支援した.研修内容は主に研究法と統計法であり,具体的には研究計画の立案,研究課題の設定,先行研究の読み方,研究デザインの企画,統計分析手法・結果の検討であった.全研修会終了後に,カークパトリックの理論の内レベル1「反応」と2「学習」について,カナダ作業遂行測定(以下,COPM)及び独自の質問項目を含む選択式・自由記述式・無記名のアンケートを用いて両レベルの到達状況を評価した.自由記述式アンケートの回答はKH Coder 3を使用して計量テキスト分析を行った.本研究は,対象者施設の倫理規定に則り,承認を得て対象者に調査目的について説明し口頭および書面による同意を得た.
【結果】
選択式アンケートより,約7割が「参加前後で臨床研究に対する価値観が変わった」「参加により臨床研究を実施したい」と回答した.COPMより,10段階中の平均値を算出すると,「学習満足度」「参加重要度」「参加満足度」はそれぞれ「8.7」「9.7」「9.5」,「臨床研究の遂行到達度」は「8.8」であった.計量テキスト分析の結果,「研究」が最頻出の語句であり,出現回数が2回以上の語句をもとに共起ネットワーク分析を行ったところ,「研究」が中心の1つとなり,「進める」「分かる」「方法」が関係していた.さらに.自由記述式アンケートより,「研究進捗管理シートが役に立った」「オンライン開催により仕事場や自宅から参加できる,コロナ禍でも研究の打ち合わせなど,柔軟に決めることができた.」「(参加前は)研究の進め方がわからなかった.」と回答が得られた.
【考察】
COPMの結果より,カークパトリックの理論の内レベル1「反応」とレベル2「学習」において高水準に到達したことが示された.本研修会の利点として,場所や時間,あるいは移動などの物理的制約の少なさが挙げられた.アンケートにより研修会参加前には対象者のうち複数名が研究の進め方がわからないなどの困りごとを抱えていたことが明らかになったため,このような研修会が必要とされていることが示された. 本研修会はコロナ禍における研究進捗管理も含めた継続的な自己研鑽の機会提供を可能にした. 質の高い学習を行うためには,前提条件と行動目標を明確にすることが重要であると述べられているため(木村ら,2021),今後はより詳細に前提条件のヒアリングと綿密な行動目標の設定により効果を向上させることが見込まれる.
日本作業療法士協会は職業倫理指針の一つとして自己研鑽を掲げ,作業療法士(以下OT)は自らが行った実践や研究を常に吟味し検証し直すことが求められている.しかし,COVID-19感染症の流行により,自己研鑽の機会は流行前と比して限られている.ところで,筆者は以前より臨床現場と定期的な情報交換を重ね,その現場から研究手法や研究発表の方法に関する研修会開催の依頼を受けた.
そこで「実践の研究」を目的に,臨床現場での作業療法を科学的視点から吟味・検証するためのオンライン研修会を実施したので,その概要と結果を報告する.
【方法】
A病院のOT3名・PT3名(経験年数3年2名,5年2名,6年1名,19年1名)を対象に研修会を実施した.研修会は2021年5月より毎月60~80分/回,オンライン会議ツールZoomを用いて開催し,計13回であった.研修会の設計にはカークパトリックの理論を取り入れ(Kirkpatrick, 2016) ,研修目標として「学会での研究の成果発表」を設定した.各研修において事前に資料の配布,進捗に応じた課題を課し,事後に研究進捗管理シートの提出を求めるなど,学習効果の最大化に努め目標達成を支援した.研修内容は主に研究法と統計法であり,具体的には研究計画の立案,研究課題の設定,先行研究の読み方,研究デザインの企画,統計分析手法・結果の検討であった.全研修会終了後に,カークパトリックの理論の内レベル1「反応」と2「学習」について,カナダ作業遂行測定(以下,COPM)及び独自の質問項目を含む選択式・自由記述式・無記名のアンケートを用いて両レベルの到達状況を評価した.自由記述式アンケートの回答はKH Coder 3を使用して計量テキスト分析を行った.本研究は,対象者施設の倫理規定に則り,承認を得て対象者に調査目的について説明し口頭および書面による同意を得た.
【結果】
選択式アンケートより,約7割が「参加前後で臨床研究に対する価値観が変わった」「参加により臨床研究を実施したい」と回答した.COPMより,10段階中の平均値を算出すると,「学習満足度」「参加重要度」「参加満足度」はそれぞれ「8.7」「9.7」「9.5」,「臨床研究の遂行到達度」は「8.8」であった.計量テキスト分析の結果,「研究」が最頻出の語句であり,出現回数が2回以上の語句をもとに共起ネットワーク分析を行ったところ,「研究」が中心の1つとなり,「進める」「分かる」「方法」が関係していた.さらに.自由記述式アンケートより,「研究進捗管理シートが役に立った」「オンライン開催により仕事場や自宅から参加できる,コロナ禍でも研究の打ち合わせなど,柔軟に決めることができた.」「(参加前は)研究の進め方がわからなかった.」と回答が得られた.
【考察】
COPMの結果より,カークパトリックの理論の内レベル1「反応」とレベル2「学習」において高水準に到達したことが示された.本研修会の利点として,場所や時間,あるいは移動などの物理的制約の少なさが挙げられた.アンケートにより研修会参加前には対象者のうち複数名が研究の進め方がわからないなどの困りごとを抱えていたことが明らかになったため,このような研修会が必要とされていることが示された. 本研修会はコロナ禍における研究進捗管理も含めた継続的な自己研鑽の機会提供を可能にした. 質の高い学習を行うためには,前提条件と行動目標を明確にすることが重要であると述べられているため(木村ら,2021),今後はより詳細に前提条件のヒアリングと綿密な行動目標の設定により効果を向上させることが見込まれる.