[OR-2-4] 口述発表:教育 2リスクマネジメントの能力の向上のための授業
~リスクコミュニケーションを通じたリスク感覚の変化~
【はじめに】リスクマネジメントが機能するためには事故を読みとる「リスク感性」の必要性が指摘され,リスク感性は年齢や経験年数を重ねるだけでは高まらないとの報告もある.そのため,教育が必要とされる.リスク感性は「リスクを察知して自然に安全行動が取れるような感覚」とされ,リスク感性は①リスク感覚:危ないと感じるが行動に現れない,②リスク認識:危ないと感じ注意行動に現れる,③リスク意識:危ないと感じ危険回避行動をとる,の3段階で教育が必要とされる(釜,2004).リスク感性は事故を振り返り危ないと感じた時点で芽生えた「リスク感覚」をディスカッションによって次につなげていくことが必要とされる.本校では安全な医療を提供できる作業療法士を養成の必要性を感じ,1年生の学生を対象に授業を実施した.今回,授業がリスク感覚の変化に与える効果を検証する.
【方法】対象:作業療法士学科昼間部3年制課程1年生41名.男性12名,女性29名,平均年齢:18.9歳
方法:90分3回の授業.授業構成は①「Time pressure-Kiken Yochi Training効果測定システム」(以下TP-KYT),②授業1(生活上のリスクについて),③授業2(リハビリテーション場面のリスク)を実施し,①の前後,②③後の計4回のアンケートを実施した.②③の授業は,講義と演習を組み合わせ,講義ではリスクやリスクマネジメント,リスクコミュニケーションなどの用語の説明をした.演習では2人1組でお互いの見つけたリスクを共有し,③ではTP-KYTで用いた1場面について得点の高いリスクはどれかを考えさせた.授業構成はリスクマネジメントプロセスの最初の段階となる「リスクを分析できる」に注目した.分析のためには,リスクを見つけることが必要となり,そのためには危ないと感じること(リスク感覚)が重要と考えた.そこで演習を通じ他者のリスクを共有することで,個々のリスク感覚の向上を目標とした.
アンケート:「リスク感覚(普段の生活で危ないと感じる事)はどれくらいと思いますか」について,0(危ないと感じない)から10(とても危ないと感じる)の11段階で自己評価を求めた.リスク感覚の変化の検定はFriedman検定の後,群間比較には Bonferroniの多重比較を用いた.危険率を5%以下とし,統計解析ソフトは EZR(Ver.1.54) を使用した.アンケートの実施にあたり,個人情報保護や成績に関係しない事を口頭説明し同意を得て実施した.尚,本研究は筆者が所属する学校研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:第21-教82号)
【結果】TP-KYT前と授業1・2(p<0.05・p<0.01),TP-KYT後と授業2(p<0.01),授業1と授業2(p<0.05)の間に有意な差が見られた.TP-KYT前後,TP-KYTの後と授業1との間に差は見られなかった.
【考察】授業前後でリスク感覚に有意な変化が見られ,授業を通じて自己のリスク感覚を高めることが出来たと考える.リスク感覚は「危ないと感じる事」であり,学生の主観的な事柄を聞いている.個々の主観的な判断はリスク認知とされ,個人因子が影響する.個々のリスク認知の違いを埋めるためにはリスクコミュニケーションによる相互作用が重要とされる.今回の授業による他者との相互作用はリスク感覚に影響を与えることに有効な方法である考える.また,梶田(1992)は自己評価について「人間形成の土台となる部分の教育」と述べ,①自己の対象化,②外的客観的な視点の取入れ,③自己の各側面の分析的吟味,④自己感情の喚起,深化,⑤新たな努力への意欲と方向付けられるとしている.学生が自己評価することは,専門家としてのリスク認知を獲得ためには重要かつ必要であると考える.
【方法】対象:作業療法士学科昼間部3年制課程1年生41名.男性12名,女性29名,平均年齢:18.9歳
方法:90分3回の授業.授業構成は①「Time pressure-Kiken Yochi Training効果測定システム」(以下TP-KYT),②授業1(生活上のリスクについて),③授業2(リハビリテーション場面のリスク)を実施し,①の前後,②③後の計4回のアンケートを実施した.②③の授業は,講義と演習を組み合わせ,講義ではリスクやリスクマネジメント,リスクコミュニケーションなどの用語の説明をした.演習では2人1組でお互いの見つけたリスクを共有し,③ではTP-KYTで用いた1場面について得点の高いリスクはどれかを考えさせた.授業構成はリスクマネジメントプロセスの最初の段階となる「リスクを分析できる」に注目した.分析のためには,リスクを見つけることが必要となり,そのためには危ないと感じること(リスク感覚)が重要と考えた.そこで演習を通じ他者のリスクを共有することで,個々のリスク感覚の向上を目標とした.
アンケート:「リスク感覚(普段の生活で危ないと感じる事)はどれくらいと思いますか」について,0(危ないと感じない)から10(とても危ないと感じる)の11段階で自己評価を求めた.リスク感覚の変化の検定はFriedman検定の後,群間比較には Bonferroniの多重比較を用いた.危険率を5%以下とし,統計解析ソフトは EZR(Ver.1.54) を使用した.アンケートの実施にあたり,個人情報保護や成績に関係しない事を口頭説明し同意を得て実施した.尚,本研究は筆者が所属する学校研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:第21-教82号)
【結果】TP-KYT前と授業1・2(p<0.05・p<0.01),TP-KYT後と授業2(p<0.01),授業1と授業2(p<0.05)の間に有意な差が見られた.TP-KYT前後,TP-KYTの後と授業1との間に差は見られなかった.
【考察】授業前後でリスク感覚に有意な変化が見られ,授業を通じて自己のリスク感覚を高めることが出来たと考える.リスク感覚は「危ないと感じる事」であり,学生の主観的な事柄を聞いている.個々の主観的な判断はリスク認知とされ,個人因子が影響する.個々のリスク認知の違いを埋めるためにはリスクコミュニケーションによる相互作用が重要とされる.今回の授業による他者との相互作用はリスク感覚に影響を与えることに有効な方法である考える.また,梶田(1992)は自己評価について「人間形成の土台となる部分の教育」と述べ,①自己の対象化,②外的客観的な視点の取入れ,③自己の各側面の分析的吟味,④自己感情の喚起,深化,⑤新たな努力への意欲と方向付けられるとしている.学生が自己評価することは,専門家としてのリスク認知を獲得ためには重要かつ必要であると考える.