[OR-3-2] 口述発表:教育 3作業遂行6因子分析ツール(OPAT6)を用いた臨床指導プログラムの実践報告
【はじめに】作業療法士(以下,OT)には,クライエント(以下,CL)の課題解決のために関連する要因を多面的に評価し,治療,指導,援助方針を立てることを求められる.しかし,入院期間の短縮が進み,心身機能,身辺動作の改善が中心となりやすく,新人等若手への指導もその部分に偏りやすくなってしまうことを経験する.
作業遂行6因子分析ツール(OPAT6)は「対象者が意味のある作業にどの程度関われているか」という主体的な作業の実行状況に着目し,「健康状態」「心身機能」「活動能力」「情緒」「認識」「環境」の6つの関連因子の相互作用を図式化するものである.このツールを1~2年目スタッフの指導に活用することで,CLにとり重要な作業の実行状況の改善を目標・介入方針・療法計画に落とし込みやすくなると想定した.今回,複数病院において,OPAT6活用した臨床指導プログラム(以下,臨床指導プログラム)の作成,実施し,その効果と課題を検討したため報告する.倫理的配慮として,本報告は書面にて対象者へ説明し同意を得ている.
【目的】臨床指導プログラムの作成,実施,その効果と課題の検討
【対象】実施病院は,2つの回復期リハビリテーション病院,1つの急性期病院に所属している臨床経験2年以下のOT(以下,被指導者)9名とその被指導者を日頃から指導している臨床経験10年以上の指導者5名であった.
【方法】臨床指導プログラムの開始にあたり,指導者は,開発者からOPAT6の使用方法をマニュアルを用いて説明を受けた.その後,被指導者へ臨床指導プログラムを用いた.被指導者の担当症例から1名を選出し,チーム目標の確認,暫定的な主要課題の設定を行わせた.その課題をOPAT6にてアセスメントし課題整理を行わせた.そして,改善をもたらすと考えられる主要な作用因子であるキーファクターを抽出させ,それに沿った目標設定,療法計画を行った.指導回数は1回とし,指導時間は30分に設定した.臨床指導プロフラム実施後に,対象者にアンケートを実施した.アンケート項目は①生活機能の課題の全体像の説明,②課題にもとづき必要とされる医学的・社会的情報の抽出,③CLの内的側面の影響の説明,④改善すべき主要因子の抽出,⑤目標設定,⑥主要因子に対する療法計画の6項目とした.これらの項目に対して,ADLを中心とした指導(以下,従来指導)と臨床指導プログラムを用いた指導双方のCLの理解のしやすさや目標設定,療法計画のしやすさを0(1人でできない)~10(1人でできる)点とし採点した.
【結果】被指導者の従来指導と臨床指導プログラムを用いた指導の結果は,中央値が①4点,7点,②4点,7点,③3点,7点,④3点,6点,⑤5点,7点,⑥4点,6点と,全体的に臨床指導プログラム方が良好であった.指導者の中央値は,①6点,6点,②6点, 6点,③3点, 7点,④4点, 8点,⑤4点, 6点,⑥4点, 6点であった. 被指導者の自由記載は,「従来指導よりもCLを知ることができ,CLの内的側面を活動や身体面と結びつけやすい」,「難聴や失語症があるCLは主要課題の設定が難しい」,といった意見が聞かれた.指導者側は,「後輩の理解の程度はOPAT6の方がよい」といった意見が聞かれた.
【考察】若手OTに対する指導を行う際にOPAT6を活用することで課題整理,目標設定,療法立案がしやすくなることから,OPAT6は若手OTへの指導の一助になり得る可能性が判った.課題は,指導前後での比較,フォローアップ体制がされていない.今後さらなる検討を図っていきたい.
作業遂行6因子分析ツール(OPAT6)は「対象者が意味のある作業にどの程度関われているか」という主体的な作業の実行状況に着目し,「健康状態」「心身機能」「活動能力」「情緒」「認識」「環境」の6つの関連因子の相互作用を図式化するものである.このツールを1~2年目スタッフの指導に活用することで,CLにとり重要な作業の実行状況の改善を目標・介入方針・療法計画に落とし込みやすくなると想定した.今回,複数病院において,OPAT6活用した臨床指導プログラム(以下,臨床指導プログラム)の作成,実施し,その効果と課題を検討したため報告する.倫理的配慮として,本報告は書面にて対象者へ説明し同意を得ている.
【目的】臨床指導プログラムの作成,実施,その効果と課題の検討
【対象】実施病院は,2つの回復期リハビリテーション病院,1つの急性期病院に所属している臨床経験2年以下のOT(以下,被指導者)9名とその被指導者を日頃から指導している臨床経験10年以上の指導者5名であった.
【方法】臨床指導プログラムの開始にあたり,指導者は,開発者からOPAT6の使用方法をマニュアルを用いて説明を受けた.その後,被指導者へ臨床指導プログラムを用いた.被指導者の担当症例から1名を選出し,チーム目標の確認,暫定的な主要課題の設定を行わせた.その課題をOPAT6にてアセスメントし課題整理を行わせた.そして,改善をもたらすと考えられる主要な作用因子であるキーファクターを抽出させ,それに沿った目標設定,療法計画を行った.指導回数は1回とし,指導時間は30分に設定した.臨床指導プロフラム実施後に,対象者にアンケートを実施した.アンケート項目は①生活機能の課題の全体像の説明,②課題にもとづき必要とされる医学的・社会的情報の抽出,③CLの内的側面の影響の説明,④改善すべき主要因子の抽出,⑤目標設定,⑥主要因子に対する療法計画の6項目とした.これらの項目に対して,ADLを中心とした指導(以下,従来指導)と臨床指導プログラムを用いた指導双方のCLの理解のしやすさや目標設定,療法計画のしやすさを0(1人でできない)~10(1人でできる)点とし採点した.
【結果】被指導者の従来指導と臨床指導プログラムを用いた指導の結果は,中央値が①4点,7点,②4点,7点,③3点,7点,④3点,6点,⑤5点,7点,⑥4点,6点と,全体的に臨床指導プログラム方が良好であった.指導者の中央値は,①6点,6点,②6点, 6点,③3点, 7点,④4点, 8点,⑤4点, 6点,⑥4点, 6点であった. 被指導者の自由記載は,「従来指導よりもCLを知ることができ,CLの内的側面を活動や身体面と結びつけやすい」,「難聴や失語症があるCLは主要課題の設定が難しい」,といった意見が聞かれた.指導者側は,「後輩の理解の程度はOPAT6の方がよい」といった意見が聞かれた.
【考察】若手OTに対する指導を行う際にOPAT6を活用することで課題整理,目標設定,療法立案がしやすくなることから,OPAT6は若手OTへの指導の一助になり得る可能性が判った.課題は,指導前後での比較,フォローアップ体制がされていない.今後さらなる検討を図っていきたい.