第56回日本作業療法学会

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一般演題

教育

[OR-5] 一般演題:教育 5/理論 2

Sun. Sep 18, 2022 9:40 AM - 10:40 AM 第4会場 (RoomA)

座長:井村 亘(玉野総合医療専門学校)

[OR-5-1] 口述発表:教育 5/理論 2当院セラピスト教育における課題

アンケート調査におけるテキストマイニング分析

玉那覇 迅1金城 芙由子1 (1医療法人大平会 嶺井第一病院リハビリテーション科)

【はじめに】今回,当院リハビリテーション科(以下,当院リハ科)における教育の課題を検討することを目的に,セラピスト(以下,Th)を対象にアンケートを実施した.若手Thへは「教育される側」として,中堅Th,熟練Thへは「教育する側」として現状の想いや考えを具体的に抽出するために自由記載項目を設けた.そして,テキストマイニングにて内容をカテゴリー化し,量的に分析することで,当院のTh教育に対する課題を検討したので報告する.
【目的・方法】2020年11月に,当院Th(OT,PT,ST)53名を対象にアンケート調査を実施した.目的は,現在の当院リハ科の教育に対する想いや考えを表面化し,今後の教育システムに役立てることとした.対象の内訳は経験年数別に若手Th15名(1-6年目),中堅Th18名(7-13年目),熟練Th20名(14年目以上)である.分析するアンケート項目は,教育について「良かった点」と「困った点」について質問し,若手Thは“先輩からの指導に対して”,中堅・熟練Thへは“後輩指導に対して”の視点で回答してもらった.それぞれ,「ある」「なし」の二択の選択式の回答と自由記載項目を設けた.自由記載項目の文章は形態素分析にてテキストデーターへ変換し,各質問における群間の特徴語の抽出や,特徴語を元にコーディングを行いカテゴリー化を図った.そして,3群における各カテゴリーの占める割合やχ2検定にて群間の傾向を分析した.ソフトウェアは形態素解析をChaSen,分析はKHCoder3を用いた.なお,本報告は当院リハ科の承認を得ている.
【結果】選択式の回答では「良かった点」が「ある」は,若手Th 100%,中堅Th83%,熟練Th70%であり,「困った点」が「ある」は,若手Th53% で中堅Thと熟練Th共に75%であった.自由記載項目では「良かった点」について10個のカテゴリーに分類された.若手Thでは「業務内容,書類の記載方法の指導」が多く,有意な差がみられた.(χ2=7.639,p<0.05)そして,若手Th,中堅Th,熟練Thともに良かった指導法として「見学や直接的な指導」「具体的なリハ内容の指導」があげられた.また,3群ともに教育は「後輩や自分自身の成長や勉強になる」と多く抽出された.「困った点」については11個のカテゴリーに分類された.「指導内容が人による違い」が若手Thで多く抽出され,有意な差がみられた.(χ2=7.812,p<0.05)そして,熟練Thと中堅Thからは,後輩に対して「説明の方法・助言する範囲が困る」「指導後の報告や変化がない」「意欲の低下や視点・興味の違いにより伝わらない」が多くあげられた.
【考察】選択式の回答より,当院リハ科Thの大半は教育の重要性を感じていたものの,「困った点」が「ある」も多く,教育の難しさも示された.それを改善させるためにも,教育システムの確立が不可欠だと考えられた.特に「困った点」にあげられたカテゴリーにおいては,クリニカルラダーを運用し,リハ科Th全員で周知し,それに沿った指導を行うことが必要であると考えられる.また,若手Thは,はじめに業務の流れを把握することが重要であると考えており,段階的に専門性を高めることが必要である.そのためには,「良かった点」であげられた指導方法を多く取り入れることが大切であり,現在,臨床実習指導で行われている,クリニカル・クラークシップの方法を当院リハ科Thの教育で取り入れることが,最善の方法であると考えられる.今後,リハ科全体の教育システムを確立していき,「教育される側」と「教育する側」の相互の成長が図れる環境づくりを行っていき,また,作業療法部門のより詳細な教育方法も検討していきたいと考える.