[PA-1-10] ポスター:脳血管疾患等 1障害受容が目標設定につながった一例~失語症患者の障害受容へのリハビリテーション~
【はじめに】
協働的な作業療法実践の具体的な手段の一つとして目標設定が重視されている.しかし急性期作業療法では意識障害やせん妄によってクライエントの意思決定が困難な場合が多い.(石川ら)今回左被殻出血を発症し重度失語症を呈した症例を担当した.残存機能を活かしながら病気の知識や予後予測を共有することで障害受容を促し目標設定の一助となった経験をしたので報告する.なお,発表にあたり本人の同意を得て,個人情報を特定されないよう配慮した.
【症例紹介】
50代男性,妻と2人暮らし.仕事中に構音障害,右片麻痺を認め救急搬送,左被殻出血の診断となった.
【初期介入】
意識レベルはJCSⅡ-10.右片麻痺重度,感覚脱失,皮質下失語重度,注意障害が認められた.覚醒改善のため離床訓練から開始した.覚醒の向上に伴い発話量は増えていったが錯語や新造語が多く,聞き手が復唱し内容を確認する必要があった.発症1週間後,暗い表情が目立つようになった.発話量が減少しリハビリにも受動的となった.看護師がポータブルトイレでの排泄を提案するも拒否があった.「どうしてこうなったのか,この先どうしていけばいいのか全く分からない」「受け入れるのには時間がかかります」との発言があり障害受容に至っていない印象を受けた.
【関わり方の考察と経過】
症例は障害受容が十分でないため意欲が低下していると考えた.原因として失語症・注意障害により複雑な話は理解困難,疑問点を質問できない,説明を集中して聞くことができないことが考えられた.症例は「読む」「聞く」機能は比較的残存していた.そのため障害受容を促すため,病気の知識や予後予測を紙に書いて説明することとした.説明には簡単な単語を使用し,図を用いることで文字が極力少なくなるように工夫した.説明後,図を指さしながら対象者からいくつかの質問があり,不明点を明確にすることができた.また,発症直後であり将来のイメージがつかず不安であることも原因として考えられた.予後予測に関しては麻痺の回復段階を図説,対象者の現在のレベルも明示した.どのレベルにあっても工夫次第で家庭・職場復帰をする人が大勢いることを説明した.退院後の生活で必要となるであろう心身機能や環境も箇条書きで書きだした.それに向け今後のリハビリではどのようなことを行うのかを説明した.よりイメージできるように写真を見せながら具体例を交えた.意識障害によりぼんやり感も残存していたため,説明した紙はいつでも見返すことができるよう病室のテーブルに配置した.また訓練プログラムごとに目的や意識するポイントを具体的に教示した.
その翌日から「右手が動くイメージをしながら取り組んでいます」「少しでも麻痺が次のレベルに近づくようにがんばります」と主体的にリハビリに取り組む様子がみられた.病棟でのポータブルトイレでの排泄の拒否もなくなった.
【考察】
発症初期に目標設定が困難であっても,クライエント自身が能力を正しく認識し,生活の見通しが立つとともに目標設定が可能となることが報告されている.(石川ら)急性期は意識障害の改善に伴い心身機能障害に直面する.障害受容の不十分さから心理的に不安定となり様々な反応をみせる.今回症例のそれらの変化に気づき,残存機能を活かしながら麻痺のレベルや病気の知識を共有したことで能力の正しい認識を促すことができた.また今後の生活を説明することで見通しを立てることができた.これらによって障害受容につながり目標設定が可能となったと考える.
協働的な作業療法実践の具体的な手段の一つとして目標設定が重視されている.しかし急性期作業療法では意識障害やせん妄によってクライエントの意思決定が困難な場合が多い.(石川ら)今回左被殻出血を発症し重度失語症を呈した症例を担当した.残存機能を活かしながら病気の知識や予後予測を共有することで障害受容を促し目標設定の一助となった経験をしたので報告する.なお,発表にあたり本人の同意を得て,個人情報を特定されないよう配慮した.
【症例紹介】
50代男性,妻と2人暮らし.仕事中に構音障害,右片麻痺を認め救急搬送,左被殻出血の診断となった.
【初期介入】
意識レベルはJCSⅡ-10.右片麻痺重度,感覚脱失,皮質下失語重度,注意障害が認められた.覚醒改善のため離床訓練から開始した.覚醒の向上に伴い発話量は増えていったが錯語や新造語が多く,聞き手が復唱し内容を確認する必要があった.発症1週間後,暗い表情が目立つようになった.発話量が減少しリハビリにも受動的となった.看護師がポータブルトイレでの排泄を提案するも拒否があった.「どうしてこうなったのか,この先どうしていけばいいのか全く分からない」「受け入れるのには時間がかかります」との発言があり障害受容に至っていない印象を受けた.
【関わり方の考察と経過】
症例は障害受容が十分でないため意欲が低下していると考えた.原因として失語症・注意障害により複雑な話は理解困難,疑問点を質問できない,説明を集中して聞くことができないことが考えられた.症例は「読む」「聞く」機能は比較的残存していた.そのため障害受容を促すため,病気の知識や予後予測を紙に書いて説明することとした.説明には簡単な単語を使用し,図を用いることで文字が極力少なくなるように工夫した.説明後,図を指さしながら対象者からいくつかの質問があり,不明点を明確にすることができた.また,発症直後であり将来のイメージがつかず不安であることも原因として考えられた.予後予測に関しては麻痺の回復段階を図説,対象者の現在のレベルも明示した.どのレベルにあっても工夫次第で家庭・職場復帰をする人が大勢いることを説明した.退院後の生活で必要となるであろう心身機能や環境も箇条書きで書きだした.それに向け今後のリハビリではどのようなことを行うのかを説明した.よりイメージできるように写真を見せながら具体例を交えた.意識障害によりぼんやり感も残存していたため,説明した紙はいつでも見返すことができるよう病室のテーブルに配置した.また訓練プログラムごとに目的や意識するポイントを具体的に教示した.
その翌日から「右手が動くイメージをしながら取り組んでいます」「少しでも麻痺が次のレベルに近づくようにがんばります」と主体的にリハビリに取り組む様子がみられた.病棟でのポータブルトイレでの排泄の拒否もなくなった.
【考察】
発症初期に目標設定が困難であっても,クライエント自身が能力を正しく認識し,生活の見通しが立つとともに目標設定が可能となることが報告されている.(石川ら)急性期は意識障害の改善に伴い心身機能障害に直面する.障害受容の不十分さから心理的に不安定となり様々な反応をみせる.今回症例のそれらの変化に気づき,残存機能を活かしながら麻痺のレベルや病気の知識を共有したことで能力の正しい認識を促すことができた.また今後の生活を説明することで見通しを立てることができた.これらによって障害受容につながり目標設定が可能となったと考える.