第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-1] ポスター:脳血管疾患等 1

2022年9月16日(金) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PA-1-3] ポスター:脳血管疾患等 1北海道内の病院・施設における上肢機能評価に用いられるバッテリーの使用に関するアンケート調査

齊藤 秀和1横山 和樹1太田 久晶1 (1札幌医科大学保健医療学部 作業療法学科)

【はじめに】
 脳血管疾患に付随する麻痺により,上肢機能に障害が起こりうる.このような障害に対する治療介入に際して,作業療法士は適切に現状を把握する評価が必要であり,その結果が効率的な治療プログラム選定につながると考える.しかし,多数の上肢機能評価バッテリー(以下,バッテリー)が存在する中で,治療者がどのように検査を選択し,得られた結果を利用しているのかは不明である.そこで本研究では,バッテリーに関するアンケート調査を実施し,得られた結果から,バッテリーの使用・不使用に至る理由,バッテリーをどのように利用・応用しているのか,現状に加えて必要性を感じる項目について調査し,その実態を解明することを目的とした.
【方法】
 日本作業療法士協会(以下,協会)の会員が所属する北海道内の施設のうち,「医療関連」と分類され,「居宅サービス」,「精神科病院」,「認知症疾患医療センター」,「通所介護」のいずれか,またはそれらのみの区分を除く施設を郵送先とした.対象は作業療法関連部門の責任者とし,バッテリーの使用理由や活用方法について,自由記載による回答を求めた.返送された回答から,対象疾患に脳機能障害を含み,バッテリーに関する選択がなされた施設を分析対象とした.得られた回答は,Berelson Bの内容分析(舟島,2007)を参考にコーディングを行った.自由記載内容は記録単位に分割,同一または類似する記録単位を同一記録単位として集約し,記録単位数の合計に対する割合を求めた.以下,同一記録単位を〈 〉で示す.本研究は所属機関の倫理委員会の承認を受け,実施した(承認番号:2-1-30).
【結果】
 アンケートの回答を得た施設から,75施設を分析対象とした.バッテリーの使用に至る理由として,〈簡便・実施が容易〉が14.9%と最も多く,次いで〈バッテリー・物品の保有〉が14.2%報告された.一方,不使用に至る理由としては,〈バッテリー・物品の未保有・不足〉が24.5%と最多の同一記録単位であり,〈知識・技術不足〉も18.2%と多くの同一記録単位で報告された.また,バッテリーの利用・応用については,〈効果判定〉に使用している同一記録単位が,全体の31.3%を占めていた.加えて,〈患者への状態説明〉が17.2%,〈他職種との情報提供・共有〉が10.4%報告され,上位3つの合計は全回答の半数以上を占めていた.必要性を感じる評価項目については,〈ADL上の実動作〉が27.3%と最も多かった.
【考察】
 バッテリーの使用・不使用に至る理由として,〈バッテリー・物品の保有〉,〈バッテリー・物品の未保有・不足〉の影響が大きい事が明らかとなった.バッテリー・物品は,部門開設時に購入している事が多いため,新たに導入する場合は購入が最小限で済むようなバッテリーが好ましいと考えられる.また〈簡便・実施が容易〉である事も使用理由として重視されていた.臨床において,評価にかけられる時間は限られており,効率性を重視してバッテリーが選択されていることが示唆された.バッテリーの利用・応用について,経時的にデータを取得することで介入効果を検証することが可能であるため,〈効果判定〉や〈他職種との情報提供・共有〉に有用であったと考える.加えて,具体的な数値的変化を示すことが出来るため,〈患者への状態説明〉として使用する施設が多かったと考えられる.今後,本研究で認められた問題点に対して,新たなバッテリーの開発や知識・技術の提供を通して,継続的に検討していく必要があると考える.