[PA-1-8] ポスター:脳血管疾患等 1回復期脳卒中患者に対する具体的な目標設定による他職種連携の取り組み
混合研究法
・はじめに 回復期リハビリテーション病棟では,対象者の心身機能及びADLの改善に向けて,入院中の余暇時間の活動量をいかに高めるかといった他職種連携が期待されている(小串健志2019)が,職種毎の関心や価値観の違いから連携に齟齬が生じやすい事が報告されている(後藤紀史2021).
・報告の目的 今回,5W1Hを活用し設定した対象者の具体的な目標をチームカンファレンスで他職種と共有した結果,継続的な他職種連携と対象者の心身機能及びADLの改善に至った経過について報告する.尚,発表に際し症例から同意を得た.
・症例紹介 70歳代,右利きの男性.診断名は右橋内腹側の橋梗塞.保存的加療を行い,発症より40病日後に当院回復期病棟に転院.生活歴は独居でADLは自立しており,日課は自宅マンション下層のスーパーまで徒歩で買い物に行く事であった.
・転院時(40病日)OT評価 意識はクリア.コミュニケーションに問題はなく,高次脳機能面はMMSE:29/30点(減点項目:計算問題).身体機能面はBrunnstrom Stage(以下,Br.Stage)上肢Ⅲ手指Ⅲ下肢Ⅲ,Fugl-Meyer assessment(以下,FMA)上肢運動項目:28/66点,下肢運動項目:14/36点,感覚は表在深部ともに上下肢に中等度鈍麻,基本動作・ADLは座位保持を除く動作全般に介助を要した.主訴は「左手足が動かない」であったが,今後の目標については「歩けたらいいけど・・・」と具体的な目標の表出はなく,現状についても「困っている事は特にない」といった発言が聞かれた.
・各職種の介入目標の確認 理学療法士(以下,PT)は,「本人から歩きたいという希望があるから,経過をみて病棟での歩行訓練を検討してほしい」と歩行に関心をもっていたが,看護師(以下,Nrs)は「私たちが病棟で何か訓練をするのはいいけど,今寝てばかりなのに何ができるの?」と症例の能力を把握しきれておらず,安全性や疲労を懸念していた.
・OT介入方針 OT介入方針は,職種間で支援の方針が統一できるよう症例の目標を具体化すること,目標即した訓練をNrsに提示し病棟での活動量を拡大することとした.具体的には(i)5W1Hにて目標を設定し他職種と共有する,(ii)介入で効果の得られた訓練をPTと共有し,その一部を病棟訓練としてNrsに実施してもらうよう依頼した.
・病棟での訓練の経過 40病日~:初回はPaper版ADOCを活用し,排泄の自立を目標とし,その後面接の中で目標を「看護師に頼るのは申し訳ないから,トイレで,1人で,手すりを使って,下衣操作が出来ること」に修正し,自室で手すりを使用した立位訓練をNrsと実施した.70病日~:目標を「毎日着替えがしたいから,朝起きたら,1人で,ベッドに座って,着替えが出来る事」とし,起床後や入浴後の更衣訓練をNrsとOTが中心に行った.150病日~退院時:目標を「スーパーに買い物に行きたいから,1日1㎞を,1人で,杖と装具を使って,歩けるようになる」とし,病棟での歩行訓練や屋外歩行をNrsとPTが中心に行った.
・結果 退院時評価では,Br.Stage上肢Ⅴ手指Ⅴ下肢Ⅴ,FMA上肢運動項目:61/66点,下肢運動項目:25/36点に改善し,ADL・IADLは修正自立~自立で自宅退院となり,スーパーへの買い物も可能となった.
・考察 回復期リハビリテーション病棟で働くOTの8割以上が,他職種や対象者など様々な関係者と連携の際に意見や価値観の違いが生じ,その3割近くは効果的な対処ができず支援の質の低下に繋がることが懸念されている(河野崇2013).今回,具体的な目標を他職種間で共有し協業的に介入したことが病棟での活動性の増加と対象者の自立度の向上に繋がったと推察される.
・報告の目的 今回,5W1Hを活用し設定した対象者の具体的な目標をチームカンファレンスで他職種と共有した結果,継続的な他職種連携と対象者の心身機能及びADLの改善に至った経過について報告する.尚,発表に際し症例から同意を得た.
・症例紹介 70歳代,右利きの男性.診断名は右橋内腹側の橋梗塞.保存的加療を行い,発症より40病日後に当院回復期病棟に転院.生活歴は独居でADLは自立しており,日課は自宅マンション下層のスーパーまで徒歩で買い物に行く事であった.
・転院時(40病日)OT評価 意識はクリア.コミュニケーションに問題はなく,高次脳機能面はMMSE:29/30点(減点項目:計算問題).身体機能面はBrunnstrom Stage(以下,Br.Stage)上肢Ⅲ手指Ⅲ下肢Ⅲ,Fugl-Meyer assessment(以下,FMA)上肢運動項目:28/66点,下肢運動項目:14/36点,感覚は表在深部ともに上下肢に中等度鈍麻,基本動作・ADLは座位保持を除く動作全般に介助を要した.主訴は「左手足が動かない」であったが,今後の目標については「歩けたらいいけど・・・」と具体的な目標の表出はなく,現状についても「困っている事は特にない」といった発言が聞かれた.
・各職種の介入目標の確認 理学療法士(以下,PT)は,「本人から歩きたいという希望があるから,経過をみて病棟での歩行訓練を検討してほしい」と歩行に関心をもっていたが,看護師(以下,Nrs)は「私たちが病棟で何か訓練をするのはいいけど,今寝てばかりなのに何ができるの?」と症例の能力を把握しきれておらず,安全性や疲労を懸念していた.
・OT介入方針 OT介入方針は,職種間で支援の方針が統一できるよう症例の目標を具体化すること,目標即した訓練をNrsに提示し病棟での活動量を拡大することとした.具体的には(i)5W1Hにて目標を設定し他職種と共有する,(ii)介入で効果の得られた訓練をPTと共有し,その一部を病棟訓練としてNrsに実施してもらうよう依頼した.
・病棟での訓練の経過 40病日~:初回はPaper版ADOCを活用し,排泄の自立を目標とし,その後面接の中で目標を「看護師に頼るのは申し訳ないから,トイレで,1人で,手すりを使って,下衣操作が出来ること」に修正し,自室で手すりを使用した立位訓練をNrsと実施した.70病日~:目標を「毎日着替えがしたいから,朝起きたら,1人で,ベッドに座って,着替えが出来る事」とし,起床後や入浴後の更衣訓練をNrsとOTが中心に行った.150病日~退院時:目標を「スーパーに買い物に行きたいから,1日1㎞を,1人で,杖と装具を使って,歩けるようになる」とし,病棟での歩行訓練や屋外歩行をNrsとPTが中心に行った.
・結果 退院時評価では,Br.Stage上肢Ⅴ手指Ⅴ下肢Ⅴ,FMA上肢運動項目:61/66点,下肢運動項目:25/36点に改善し,ADL・IADLは修正自立~自立で自宅退院となり,スーパーへの買い物も可能となった.
・考察 回復期リハビリテーション病棟で働くOTの8割以上が,他職種や対象者など様々な関係者と連携の際に意見や価値観の違いが生じ,その3割近くは効果的な対処ができず支援の質の低下に繋がることが懸念されている(河野崇2013).今回,具体的な目標を他職種間で共有し協業的に介入したことが病棟での活動性の増加と対象者の自立度の向上に繋がったと推察される.