[PA-10-11] ポスター:脳血管疾患等 10女性の脳卒中者がファッションショーへの参加をきっかけに活動を広げていく心理プロセス~複線径路等至性モデル(TEM)による分析~
【序論】脳血管疾患は半身麻痺や高次脳機能障害などの後遺症が残ることが多く,役割の創出,社会参加の実現といったリハビリテーションの展開が求められている(厚生労働省,2017).臨床場面では,特に女性は装具の使用によりハイヒールが履けない,髪が結べないなど,後遺症が原因でお洒落を諦めてしまう事例が多く,作業療法において着目すべき点であると考えた.近年,脳卒中者対象のイベントでファッションショーが開催され,参加者に様々な行動の変化がみられた.そこで,女性の脳卒中者がファッションショーへの参加をきっかけにどのように心理・行動が変化したのかを明らかにすることで,障害を持ちながらも能動的に社会生活を広げるための示唆を得ることを目的とし,質的研究を用いて分析を行った.本演題発表に関して開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【方法】
本研究は,複線径路等至性モデル(Trajectory Equifinality Model; TEM)を用いた.対象は,前述のファッションショーに出演した女性の脳卒中者で,意識障害や認知機能の低下がなく,自身の言葉で語ることができる4名とし,各 3回の面接を実施した.本研究は大学倫理審査の承認を受けており,対象者には口頭と書面にて説明し同意を得ている.
【結果】
4名の対象者はお洒落を楽しむ生活をしていたが,脳卒中の発症によりお洒落どころではない生活となり,周囲の健常者からの視線に対し,引け目や疎外感,羞恥心といった感情を抱いていた.前向きな障害者との出会いにより希望を持つこととなり,ここが分岐点として抽出された.その後,身近な人に相談しながらも自ら意志決定をし,第一の等至点であるファッションショーへの応募を決意していた.本番に向けたウォーキングレッスンや衣装の買い物が始まると,他の参加者との関係性の中で様々な気付きを得ることができ,悩みや考えを共感し合うことで「これでいいんだ」と認められ,なかには良い意味で「開き直る」「吹っ切れる」経験をした者もいた.本番当日の控え室では,ヘアメイクと衣装でいつもと違う自分に驚き,ランウェイを歩いた瞬間には「大切な人に観てもらえて嬉しい」「同じ病気で悩んでいる人がいたら勇気をもってもらいたい」という思いがあったことが語られた.ファッションショー終了後には,お洒落の楽しみ方が変わり,他の参加者や家族と共に新たなやりたいことに挑戦するなかで,何でも話せる存在ができ,一人じゃないと思えるようになっていた.最終的には,障害があるからこそ得られた経験を活かし,悩んでいる人のために活動を実践していることが語られ,“自身の課題に向き合いながら障害を活かした活動を広げていく”という,第二の等至点に至った.
【考察】
女性の脳卒中者4名に対しTEMによる分析を行った.対象者のプロセスから,ロールモデルとなる前向きな障害者に出会うことがファッションショーへの応募という一歩を踏み出すきっかけとなり,共感し合える仲間と出会えたことがその後の行動の変化に繋がったと考えられる.本番当日には,ヘアメイクによって日常の自分と特別な自分とが切り替わり(大坊,2002),大勢の観客に観てもらうことで観客効果が生じ(Hamilton, &Lind, 2016),誰かのためになりたいという思いが高まったのではないかと推測される.さらには,仲間や家族と共に挑戦するなかで,お互いに何を考え何を意図しているのかを理解しようとすることで結びつきが得られ(Blumer, 1991),一人じゃないと思うことができ,周囲の健常者からの視線が抑圧的に働かなくなった可能性が考えられる.これらの経験が促進的に働き,今度は自分が悩んでいる人に影響を与える側の存在になりたと思うようになったことが示唆された.
【方法】
本研究は,複線径路等至性モデル(Trajectory Equifinality Model; TEM)を用いた.対象は,前述のファッションショーに出演した女性の脳卒中者で,意識障害や認知機能の低下がなく,自身の言葉で語ることができる4名とし,各 3回の面接を実施した.本研究は大学倫理審査の承認を受けており,対象者には口頭と書面にて説明し同意を得ている.
【結果】
4名の対象者はお洒落を楽しむ生活をしていたが,脳卒中の発症によりお洒落どころではない生活となり,周囲の健常者からの視線に対し,引け目や疎外感,羞恥心といった感情を抱いていた.前向きな障害者との出会いにより希望を持つこととなり,ここが分岐点として抽出された.その後,身近な人に相談しながらも自ら意志決定をし,第一の等至点であるファッションショーへの応募を決意していた.本番に向けたウォーキングレッスンや衣装の買い物が始まると,他の参加者との関係性の中で様々な気付きを得ることができ,悩みや考えを共感し合うことで「これでいいんだ」と認められ,なかには良い意味で「開き直る」「吹っ切れる」経験をした者もいた.本番当日の控え室では,ヘアメイクと衣装でいつもと違う自分に驚き,ランウェイを歩いた瞬間には「大切な人に観てもらえて嬉しい」「同じ病気で悩んでいる人がいたら勇気をもってもらいたい」という思いがあったことが語られた.ファッションショー終了後には,お洒落の楽しみ方が変わり,他の参加者や家族と共に新たなやりたいことに挑戦するなかで,何でも話せる存在ができ,一人じゃないと思えるようになっていた.最終的には,障害があるからこそ得られた経験を活かし,悩んでいる人のために活動を実践していることが語られ,“自身の課題に向き合いながら障害を活かした活動を広げていく”という,第二の等至点に至った.
【考察】
女性の脳卒中者4名に対しTEMによる分析を行った.対象者のプロセスから,ロールモデルとなる前向きな障害者に出会うことがファッションショーへの応募という一歩を踏み出すきっかけとなり,共感し合える仲間と出会えたことがその後の行動の変化に繋がったと考えられる.本番当日には,ヘアメイクによって日常の自分と特別な自分とが切り替わり(大坊,2002),大勢の観客に観てもらうことで観客効果が生じ(Hamilton, &Lind, 2016),誰かのためになりたいという思いが高まったのではないかと推測される.さらには,仲間や家族と共に挑戦するなかで,お互いに何を考え何を意図しているのかを理解しようとすることで結びつきが得られ(Blumer, 1991),一人じゃないと思うことができ,周囲の健常者からの視線が抑圧的に働かなくなった可能性が考えられる.これらの経験が促進的に働き,今度は自分が悩んでいる人に影響を与える側の存在になりたと思うようになったことが示唆された.