[PA-10-3] ポスター:脳血管疾患等 10くも膜下出血後の脳梗塞により多様な症状を認め食事動作獲得に難渋した症例
【はじめに】くも膜下出血後の脳血管攣縮による脳梗塞の発症率は20~30%とされる.今回,くも膜下出血後に脳血管攣縮による多発脳梗塞のため四肢麻痺と多様な高次脳機能障害を認めたが,上肢機能の向上や環境設定により食事摂取が可能となった症例について報告する.本発表に際し,症例者に書面と口頭で説明し,同意を得た.
【症例紹介】20代男性.職業は自衛隊員.現病歴は訓練のランニング中に意識消失で転倒した.くも膜下出血と診断されるも四肢麻痺なく意思疎通も図れた.発症8日後,疎通不良のためMRIで脳梗塞を認めエリル動注療法を施行するも脳血管攣縮の増悪が続き,両側前大脳動脈領域,両側頭頂葉,右側頭葉に脳梗塞を生じた.発症6~7ヶ月後に覚醒レベル,身体機能の改善がみられたが脱抑制や暴言があり精神科コンサルトとなった.発症9ヶ月後にリハビリ目的で当院に入院となった.
【初期評価】身体機能はBrunnstrom Recovery Stage(以下,BRS)上肢(右/左)Ⅳ/Ⅴ,手指(右/左)Ⅳ/Ⅴ,下肢(右/左)Ⅱ/Ⅰであった.利き手は右手であった.関節可動域は右手関節背屈-15°であった.簡易上肢機能検査(以下,STEF)は右0点,左82点であった.Motor Activity Log(以下,MAL)では右上肢に関してAmount of Use(以下,AOU)0.16,Quality of Movement(以下,QOM)0.16であった.認知機能はHDS-Rが13点で,中等度~軽度非流暢性失語症の状況であった.スクリーニング評価では両上肢運動性の失行および左右失認がみられた.観察評価では左上肢優位に動作性急,粗雑でありpacing障害や,症例自身が難しいと感じると歯ぎしりや口調が強くなる等の焦燥感がみられた.食事は左手でのピンセット箸の持ち方が一貫せず介助を要し,摂取の際に動作性急で何度も取りこぼし「イライラする」とつぶやいていた.右手では取りこぼしが多く「できません」と答え諦めていた.症例のhopeは右手で食事をしたいであった.
【治療経過】作業療法では右上肢・手指機能訓練を行い誤りなし学習,できたことに対して正のフィードバックを行い右上肢,手指の認識の向上を促すように介入した.訓練中に自己教示法を取り入れると,症例は「ゆっくりする」と返答でき一時的にpacing障害が軽減し,繰り返し動作訓練を経て指示なく右手での動作回数が増えた.食事では『箸ぞうくん』を使用し食形態を一口大にした.味噌汁などの食形態は左手でお皿を持ち右手で具材をつまむことが可能となった.スプーンの反復操作は取りこぼすため声かけが必要であった.主食はつまめない状況が続き,おにぎり状に変更し食事動作見守りとなった.
【結果】身体機能ではBRSは右上肢Ⅴ,右手指Ⅴとなった.関節可動域は右手関節背屈40°であった. STEFは 右34点,左84点であった.MALでは右上肢に関してAOU1.33,QOM1.41と右上肢の使用頻度,動作の質ともに改善がみられた.認知機能では失行症状は変化しなかった.HDS-Rは20点であった.観察評価では左上肢優位に動作性急,粗雑でありpacing障害がみられたが,動作性急を一時的に抑えることができた.食事は右手で『箸ぞうくん』を使用し食形態を一口大にする,エプロンをする等の環境設定により一人で食事を行うことができた.
【考察】症例は脱抑制,pacing障害により,食事時の取りこぼしや,できないと焦燥感により更に動作性急になり食事動作に介助が必要であった.作業療法では誤りなし学習と正のフィードバック,pacing障害に対して自己教示法を繰り返し行うことで右上肢機能の向上と使用に対する認識が向上し,環境設定を行えば症例の希望である右手で食事を行うことができたと考える.
【症例紹介】20代男性.職業は自衛隊員.現病歴は訓練のランニング中に意識消失で転倒した.くも膜下出血と診断されるも四肢麻痺なく意思疎通も図れた.発症8日後,疎通不良のためMRIで脳梗塞を認めエリル動注療法を施行するも脳血管攣縮の増悪が続き,両側前大脳動脈領域,両側頭頂葉,右側頭葉に脳梗塞を生じた.発症6~7ヶ月後に覚醒レベル,身体機能の改善がみられたが脱抑制や暴言があり精神科コンサルトとなった.発症9ヶ月後にリハビリ目的で当院に入院となった.
【初期評価】身体機能はBrunnstrom Recovery Stage(以下,BRS)上肢(右/左)Ⅳ/Ⅴ,手指(右/左)Ⅳ/Ⅴ,下肢(右/左)Ⅱ/Ⅰであった.利き手は右手であった.関節可動域は右手関節背屈-15°であった.簡易上肢機能検査(以下,STEF)は右0点,左82点であった.Motor Activity Log(以下,MAL)では右上肢に関してAmount of Use(以下,AOU)0.16,Quality of Movement(以下,QOM)0.16であった.認知機能はHDS-Rが13点で,中等度~軽度非流暢性失語症の状況であった.スクリーニング評価では両上肢運動性の失行および左右失認がみられた.観察評価では左上肢優位に動作性急,粗雑でありpacing障害や,症例自身が難しいと感じると歯ぎしりや口調が強くなる等の焦燥感がみられた.食事は左手でのピンセット箸の持ち方が一貫せず介助を要し,摂取の際に動作性急で何度も取りこぼし「イライラする」とつぶやいていた.右手では取りこぼしが多く「できません」と答え諦めていた.症例のhopeは右手で食事をしたいであった.
【治療経過】作業療法では右上肢・手指機能訓練を行い誤りなし学習,できたことに対して正のフィードバックを行い右上肢,手指の認識の向上を促すように介入した.訓練中に自己教示法を取り入れると,症例は「ゆっくりする」と返答でき一時的にpacing障害が軽減し,繰り返し動作訓練を経て指示なく右手での動作回数が増えた.食事では『箸ぞうくん』を使用し食形態を一口大にした.味噌汁などの食形態は左手でお皿を持ち右手で具材をつまむことが可能となった.スプーンの反復操作は取りこぼすため声かけが必要であった.主食はつまめない状況が続き,おにぎり状に変更し食事動作見守りとなった.
【結果】身体機能ではBRSは右上肢Ⅴ,右手指Ⅴとなった.関節可動域は右手関節背屈40°であった. STEFは 右34点,左84点であった.MALでは右上肢に関してAOU1.33,QOM1.41と右上肢の使用頻度,動作の質ともに改善がみられた.認知機能では失行症状は変化しなかった.HDS-Rは20点であった.観察評価では左上肢優位に動作性急,粗雑でありpacing障害がみられたが,動作性急を一時的に抑えることができた.食事は右手で『箸ぞうくん』を使用し食形態を一口大にする,エプロンをする等の環境設定により一人で食事を行うことができた.
【考察】症例は脱抑制,pacing障害により,食事時の取りこぼしや,できないと焦燥感により更に動作性急になり食事動作に介助が必要であった.作業療法では誤りなし学習と正のフィードバック,pacing障害に対して自己教示法を繰り返し行うことで右上肢機能の向上と使用に対する認識が向上し,環境設定を行えば症例の希望である右手で食事を行うことができたと考える.