[PA-10-4] ポスター:脳血管疾患等 10歯科医への復職を目指した運動失調を呈する右片麻痺患者の治療経験
【はじめに】今回,左視床出血から右片麻痺と運動失調を呈した歯科医への復職を目指す事例を担当した.入院早期より復職を見据え,歯科治療という特殊な技能の再獲得のため,実地訓練から訓練の再構築を行った.その結果,当院退院後に歯科医への復職に至った事例であり,以下に報告する.尚,発表に際し症例に内容を説明し同意を得た.
【症例紹介】本事例は50歳代男性.診断名は左視床出血,障害名は右片麻痺と運動失調.既往歴に高血圧症あり.X年Y月Z日,仕事中に右片麻痺を発症して左視床出血と診断.Z+25病日目に当院回復期リハ病棟に入院.病前は家族4人暮らしで中学生と高校生の娘様が2人いる.歯科医として夫婦でクリニックを個人経営されていた.入院時から本人,家族は歯科医への復職を強く望んでいた.
【作業療法評価】入院時はBr.stage上肢Ⅴ,手指Ⅴ,下肢Ⅴ.Fugl-Meyer Assessment(以下上肢FMA)上肢項目61/66点(振戦と測定異常にて減点).感覚は深部感覚軽度鈍麻.ModifiedAshworth scale(以下MAS)全て0.Scale for the assessment and rating of ataxia(以下SARA)総合10/40点,指追い試験右2点,指―鼻試験右3点,手の回内外運動右1点.SimpleTest for Evaluating Hand Function(以下STEF)(Rt/Lt)75/100点.Jikei AssessmentScale for Motor Impairment Daily Living(以下JASMID)使用頻度100/100点・動作の質70/100点と主に歯ブラシ,書字,箸に上肢全体の疲労感を認めた.日常生活動作(以下ADL)は移動で車椅子を使用し,入浴のみ軽介助であった.
【基本方針】入院時から家族共に歯科医への復職を強く望む一方,右上肢機能の低下から復職に対する不安も感じていた.その為,作業療法では歯科治療という特殊な技能獲得に向け,実地訓練を行った中で,身体機能向上に合わせ上肢機能訓練の再構築から難易度調整を行っていくこととした.
【介入】介入前期:理学療法士と協力の元,筋力訓練を主体に行ったことで,基礎的な筋力増強が得られ移動は歩行自立し,ADL自立となった.介入中期:実地訓練から歯科の作業分析を行い,歯科技工では道具を使用して空中操作練習を実施した.歯科治療では口腔内を覗き込む安定した姿勢での両手動作練習を実施した.技工と治療共に運動失調は認められ,「手が震えて定まらない」との訴えも聞かれた.介入後期:技工と治療共に作業を変更して作業速度,正確性を要求し復職を意識した訓練を複数回実施した.徐々に難易度を調整することで,歯科技能を想像できるようになっていった.その後は友人歯科医同席の元,当院歯科の道具を使用し歯石取りを実施,復職可能であると評価を得た.
【結果】Z+116日にて改善がみられたのは上肢FMA65/66点,SARA指追い試験右1点,指-鼻試験右1点,手の回内外運動右0点.STEF右100点,左100点,JASMID使用頻度100/100,動作の質91/100. FIM運動項目90/91点,認知項目35/35点,ADLは独歩自立となり,日常生活動作能力,復職に必要な能力を獲得してZ+117日退院に至った.退院当初は患者数が少なかったが,現在は3/4程度まで患者数が回復されたとのことだった.
【考察】本事例は年齢が若く,運動機能と高次脳機能が保たれていたが,歯科の実地訓練を行っていく中で復職への不安も聞かれていた.そこで,実地訓練の作業分析から段階的に訓練の再構築を行い,難易度調整をしたことで課題が明確になり成功体験が積み重ねられ,復職への意欲を維持出来たことが大きいと考える.更に入院早期から復職に対する積極的な支援が事例にとって不安感の軽減,意欲の賦活に繋がったことも歯科医への復職に至ったと考える.
【症例紹介】本事例は50歳代男性.診断名は左視床出血,障害名は右片麻痺と運動失調.既往歴に高血圧症あり.X年Y月Z日,仕事中に右片麻痺を発症して左視床出血と診断.Z+25病日目に当院回復期リハ病棟に入院.病前は家族4人暮らしで中学生と高校生の娘様が2人いる.歯科医として夫婦でクリニックを個人経営されていた.入院時から本人,家族は歯科医への復職を強く望んでいた.
【作業療法評価】入院時はBr.stage上肢Ⅴ,手指Ⅴ,下肢Ⅴ.Fugl-Meyer Assessment(以下上肢FMA)上肢項目61/66点(振戦と測定異常にて減点).感覚は深部感覚軽度鈍麻.ModifiedAshworth scale(以下MAS)全て0.Scale for the assessment and rating of ataxia(以下SARA)総合10/40点,指追い試験右2点,指―鼻試験右3点,手の回内外運動右1点.SimpleTest for Evaluating Hand Function(以下STEF)(Rt/Lt)75/100点.Jikei AssessmentScale for Motor Impairment Daily Living(以下JASMID)使用頻度100/100点・動作の質70/100点と主に歯ブラシ,書字,箸に上肢全体の疲労感を認めた.日常生活動作(以下ADL)は移動で車椅子を使用し,入浴のみ軽介助であった.
【基本方針】入院時から家族共に歯科医への復職を強く望む一方,右上肢機能の低下から復職に対する不安も感じていた.その為,作業療法では歯科治療という特殊な技能獲得に向け,実地訓練を行った中で,身体機能向上に合わせ上肢機能訓練の再構築から難易度調整を行っていくこととした.
【介入】介入前期:理学療法士と協力の元,筋力訓練を主体に行ったことで,基礎的な筋力増強が得られ移動は歩行自立し,ADL自立となった.介入中期:実地訓練から歯科の作業分析を行い,歯科技工では道具を使用して空中操作練習を実施した.歯科治療では口腔内を覗き込む安定した姿勢での両手動作練習を実施した.技工と治療共に運動失調は認められ,「手が震えて定まらない」との訴えも聞かれた.介入後期:技工と治療共に作業を変更して作業速度,正確性を要求し復職を意識した訓練を複数回実施した.徐々に難易度を調整することで,歯科技能を想像できるようになっていった.その後は友人歯科医同席の元,当院歯科の道具を使用し歯石取りを実施,復職可能であると評価を得た.
【結果】Z+116日にて改善がみられたのは上肢FMA65/66点,SARA指追い試験右1点,指-鼻試験右1点,手の回内外運動右0点.STEF右100点,左100点,JASMID使用頻度100/100,動作の質91/100. FIM運動項目90/91点,認知項目35/35点,ADLは独歩自立となり,日常生活動作能力,復職に必要な能力を獲得してZ+117日退院に至った.退院当初は患者数が少なかったが,現在は3/4程度まで患者数が回復されたとのことだった.
【考察】本事例は年齢が若く,運動機能と高次脳機能が保たれていたが,歯科の実地訓練を行っていく中で復職への不安も聞かれていた.そこで,実地訓練の作業分析から段階的に訓練の再構築を行い,難易度調整をしたことで課題が明確になり成功体験が積み重ねられ,復職への意欲を維持出来たことが大きいと考える.更に入院早期から復職に対する積極的な支援が事例にとって不安感の軽減,意欲の賦活に繋がったことも歯科医への復職に至ったと考える.