[PA-10-8] ポスター:脳血管疾患等 10脳卒中後の片麻痺患者が作業に麻痺手を使用するに至った心理的要因の検討
【序論】今回,Constraint-induced movement therapy(以下CI療法)を基盤にTransfer package(以下TP)を実践した結果, 麻痺側上肢使用に行動変容が得られた脳卒中症例を経験した.筆者が散見した限り,行動変容に至る対象者の心理変化の報告は少ない.そのため,対象者へ行動変容に至るまでの経緯について面接を実施し, Grounded Theory Approach(以下 GTA)の手法を用いて単症例で分析し,心理的変化の因子について検討した.なお,当院倫理委員会の承認を受け,対象者へ書面にて同意を得た.
【対象・経過】70歳代女性.夫と二人暮らしで,家事全般を担っていた. 右視床出血により左片麻痺と感覚障害を呈し,X+25病日後に当院回復期病棟へ入棟された. 主訴はトイレでの排泄自立,調理の再開であった.X+30病日よりShaping課題および歯磨き粉の添付,タオル絞り,ズボンの引き上げを課題に課題指向型練習を進めた.60病日目より病棟でTPを進め,X+90病日後自立された.X+90病日以降食器洗い,洗濯物畳みを開始し,X+144病日に実用的な遂行能力となり退院され,食器洗いと簡単な調理が再開できた.
【方法】麻痺手を生活で使用しようと思ったきっかけについて半構成的面接を行った. GTAに基づき,症例の語りからTranscriptを作成し,複数人で内容をコード化し,カテゴリーに分類した.その後,経時的変化およびコード間の関連についてカテゴリー関連図を作成し分析した.
【結果】カテゴリー化した結果「心境」「行動」「将来の展望」の3つに分類された.以下に各項目の経時的変化および身体機能変化をまとめた.
〈第一期(X+25病日):悲観的な心境と行動が目立った時期〉
FIM62点(運動40,認知22),FMA40/66,MAL-AOU0.6,QOM2.6.
①心境:「孤独感」「閉鎖的な心情」「閉鎖的な行動」「家族への申し訳なさ」「悲観的な麻痺手の認識」がみられた. ②行動:家族を含め他者との会話を避け,自室に閉じこもり,食事が摂れないなど閉鎖的であったと語った. ③将来の展望:自宅退院のあきらめなど「将来への絶望感」「見通しの不安」がみられた.
〈第二期(X+60病日):家族や他者からの励ましを受けた時期〉
FIM106点(運動71,認知35),FMA55/66 MAL-AOU1.8,QOM2
①心境:「家族への感謝」「他者への感謝」「将来への前向きな意思決定」がみられた.②行動:食事を意識的に摂り, リハビリで練習した麻痺手で行う作業を日常生活に取り入れるなど「前向きな行動」がみられた.③将来の展望:自宅退院に希望が見え始めたと語られた.
〈第三期(X+90病日):行動の変化が現れた時期〉FIM111点(運動76,認知35),FMA57/66,MAL-AOU2.6,QOM2.6
①心境:「他者の行動への関心」「知人の経験への関心」「前向きな身体認識」など行動や身体に対し前向きさがみられた.②行動:OTの助言や他者の行動を参考に「麻痺手を使う取り組み」がみられた.③将来の展望:麻痺手を使った作業を退院後も継続する必要性や退院後に麻痺手を使い再開したい作業について「前向きな将来の展望」がみられた.
【考察】第一期では将来の展望や心境が悲観的であったが,第二期に家族や他者から励まされた時期より麻痺手使用に前向きな行動計画を立てており,同時期にFMA,MALの改善が得られている. このことから,家族・他者の励ましが行動変容に至る心理的変化の因子であったと示唆された. Morrisらによると,行動変容は行動を振り返ること,そして対象者が自ら問題解決を行うことが必要と報告している. 症例は,TPの構成要素のうちセルフモニタリングを促進され,明確な目標意識と作業における麻痺手使用の意識が高まり,日常生活における麻痺手使用を促進させたと考えられた.
【対象・経過】70歳代女性.夫と二人暮らしで,家事全般を担っていた. 右視床出血により左片麻痺と感覚障害を呈し,X+25病日後に当院回復期病棟へ入棟された. 主訴はトイレでの排泄自立,調理の再開であった.X+30病日よりShaping課題および歯磨き粉の添付,タオル絞り,ズボンの引き上げを課題に課題指向型練習を進めた.60病日目より病棟でTPを進め,X+90病日後自立された.X+90病日以降食器洗い,洗濯物畳みを開始し,X+144病日に実用的な遂行能力となり退院され,食器洗いと簡単な調理が再開できた.
【方法】麻痺手を生活で使用しようと思ったきっかけについて半構成的面接を行った. GTAに基づき,症例の語りからTranscriptを作成し,複数人で内容をコード化し,カテゴリーに分類した.その後,経時的変化およびコード間の関連についてカテゴリー関連図を作成し分析した.
【結果】カテゴリー化した結果「心境」「行動」「将来の展望」の3つに分類された.以下に各項目の経時的変化および身体機能変化をまとめた.
〈第一期(X+25病日):悲観的な心境と行動が目立った時期〉
FIM62点(運動40,認知22),FMA40/66,MAL-AOU0.6,QOM2.6.
①心境:「孤独感」「閉鎖的な心情」「閉鎖的な行動」「家族への申し訳なさ」「悲観的な麻痺手の認識」がみられた. ②行動:家族を含め他者との会話を避け,自室に閉じこもり,食事が摂れないなど閉鎖的であったと語った. ③将来の展望:自宅退院のあきらめなど「将来への絶望感」「見通しの不安」がみられた.
〈第二期(X+60病日):家族や他者からの励ましを受けた時期〉
FIM106点(運動71,認知35),FMA55/66 MAL-AOU1.8,QOM2
①心境:「家族への感謝」「他者への感謝」「将来への前向きな意思決定」がみられた.②行動:食事を意識的に摂り, リハビリで練習した麻痺手で行う作業を日常生活に取り入れるなど「前向きな行動」がみられた.③将来の展望:自宅退院に希望が見え始めたと語られた.
〈第三期(X+90病日):行動の変化が現れた時期〉FIM111点(運動76,認知35),FMA57/66,MAL-AOU2.6,QOM2.6
①心境:「他者の行動への関心」「知人の経験への関心」「前向きな身体認識」など行動や身体に対し前向きさがみられた.②行動:OTの助言や他者の行動を参考に「麻痺手を使う取り組み」がみられた.③将来の展望:麻痺手を使った作業を退院後も継続する必要性や退院後に麻痺手を使い再開したい作業について「前向きな将来の展望」がみられた.
【考察】第一期では将来の展望や心境が悲観的であったが,第二期に家族や他者から励まされた時期より麻痺手使用に前向きな行動計画を立てており,同時期にFMA,MALの改善が得られている. このことから,家族・他者の励ましが行動変容に至る心理的変化の因子であったと示唆された. Morrisらによると,行動変容は行動を振り返ること,そして対象者が自ら問題解決を行うことが必要と報告している. 症例は,TPの構成要素のうちセルフモニタリングを促進され,明確な目標意識と作業における麻痺手使用の意識が高まり,日常生活における麻痺手使用を促進させたと考えられた.