[PA-11-2] ポスター:脳血管疾患等 11脳卒中者のトイレ動作の自立度に関連する患者の要因はなにか~文献レビュー~
Ⅰ.背景と目的
脳卒中は虚血性心疾患に次ぐ,世界第2位の死亡原因となっており,2019年には約600万人が命を落としている.たとえ一命を取り留めたとしても,患者の多くは障害が残り続け,長期介護を必要とする主な理由となっている.Activities of daily living(以下ADL)の中でも,トイレは頻度の高い動作であり,患者や家族が早期に自立を望むADLの一つである.本邦では,脳卒中者に対して,作業療法士(以下OTR),理学療法士(以下PT),言語聴覚士によるリハビリテーションが行われおり,OTRやPT等からトイレ動作に関する報告が散見される.これらは非常に有用な知見であるが,脳卒中は世界でも一般的な疾患の一つであるため,日本だけでなく海外文献を調査することで,本邦にはない知見が得られる可能性がある.そこで本研究の目的は,海外での脳卒中者のトイレ動作の自立度に関する文献を調査し,自立度に関連する要因の知見を得ることである.
Ⅱ.方法
文献検索はPubMedを使用した.検索語は「"Cerebrovascular Disorders"[MeSH] 」と「toileting」「toilet behavior」「elimination and activities of daily living」をそれぞれand検索した.検索期間は2000年から検索日(2022年1月30日,2月5日)とした.これらのヒットした文献から,アブストラクトに脳血管障害に関するワードとトイレ動作やセルフケアに関するワードが入っているもの,内容がトイレ動作の自立度に関わるものに絞り込んだ.また,タイトルに脳血管障害以外の疾患名があるもの,排便・排尿コントロールに焦点を当てたもの,尺度開発,介入・支援に焦点を当てたものは対象から除外した.
Ⅲ.結果
検索結果は 「 "Cerebrovascular Disorders"[MeSH] 」 と 「 toileting 」 で 78 件 , 「 toiletbehavior」で20件,「elimination and activities of daily living」で29件であった.これらを包含基準に沿って採択し,重複したものを除くと14件となった.報告された国は,日本57%,スウェーデン21%,アメリカ21%であった.筆頭著者の職種は,医師50%,OTR29%,PT14%,看護師7%,研究方法は横断研究43%,症例対照研究36%,コホート研究14%,後ろ向きコホート研究7%であった.自立に関連する変数として「年齢」「認知機能(Revised Hasegawa's dementiascale・Mini-Mental State Examination)」「失行症の有無」「入院時modified Rankin Scale(以下mRS)」「Stroke Impairment Assessment Set垂直性」「Berg Balance Scale(以下BBS)」「Postural Assessment Scale for Stroke」「血圧(くも膜下出血)」などが挙げられた.
Ⅳ.考察
トイレ動作の自立度に関連する報告は日本で多く,近年ではDecision tree analysisを用いて識別因子を明らかにしているものが散見された.日本の報告が多い背景として,諸外国との医療制度やリハ職種の役割の違いなどが考えられる.また,トイレ動作の自立度に関連する変数として,年齢や認知機能,体幹機能,BBSなどのバランス評価の結果,入院時のmRSなどが挙げられた.これは本邦でも報告されている変数であり,本研究で採択した報告が日本のものが多かったことが要因として挙げられる.失行症に関しては,本邦では症例報告がほとんどであるため,トイレ動作との関連に言及する報告は有用な知見である.これらの変数をOTRが適切に用いることで自立度の予測や評価の精度が上がるのではないかと考える.また,今回は排尿・排便コントロールに関する文献は除外しているため,今後はこれらも含めた知見を深めていく必要があると考える.
脳卒中は虚血性心疾患に次ぐ,世界第2位の死亡原因となっており,2019年には約600万人が命を落としている.たとえ一命を取り留めたとしても,患者の多くは障害が残り続け,長期介護を必要とする主な理由となっている.Activities of daily living(以下ADL)の中でも,トイレは頻度の高い動作であり,患者や家族が早期に自立を望むADLの一つである.本邦では,脳卒中者に対して,作業療法士(以下OTR),理学療法士(以下PT),言語聴覚士によるリハビリテーションが行われおり,OTRやPT等からトイレ動作に関する報告が散見される.これらは非常に有用な知見であるが,脳卒中は世界でも一般的な疾患の一つであるため,日本だけでなく海外文献を調査することで,本邦にはない知見が得られる可能性がある.そこで本研究の目的は,海外での脳卒中者のトイレ動作の自立度に関する文献を調査し,自立度に関連する要因の知見を得ることである.
Ⅱ.方法
文献検索はPubMedを使用した.検索語は「"Cerebrovascular Disorders"[MeSH] 」と「toileting」「toilet behavior」「elimination and activities of daily living」をそれぞれand検索した.検索期間は2000年から検索日(2022年1月30日,2月5日)とした.これらのヒットした文献から,アブストラクトに脳血管障害に関するワードとトイレ動作やセルフケアに関するワードが入っているもの,内容がトイレ動作の自立度に関わるものに絞り込んだ.また,タイトルに脳血管障害以外の疾患名があるもの,排便・排尿コントロールに焦点を当てたもの,尺度開発,介入・支援に焦点を当てたものは対象から除外した.
Ⅲ.結果
検索結果は 「 "Cerebrovascular Disorders"[MeSH] 」 と 「 toileting 」 で 78 件 , 「 toiletbehavior」で20件,「elimination and activities of daily living」で29件であった.これらを包含基準に沿って採択し,重複したものを除くと14件となった.報告された国は,日本57%,スウェーデン21%,アメリカ21%であった.筆頭著者の職種は,医師50%,OTR29%,PT14%,看護師7%,研究方法は横断研究43%,症例対照研究36%,コホート研究14%,後ろ向きコホート研究7%であった.自立に関連する変数として「年齢」「認知機能(Revised Hasegawa's dementiascale・Mini-Mental State Examination)」「失行症の有無」「入院時modified Rankin Scale(以下mRS)」「Stroke Impairment Assessment Set垂直性」「Berg Balance Scale(以下BBS)」「Postural Assessment Scale for Stroke」「血圧(くも膜下出血)」などが挙げられた.
Ⅳ.考察
トイレ動作の自立度に関連する報告は日本で多く,近年ではDecision tree analysisを用いて識別因子を明らかにしているものが散見された.日本の報告が多い背景として,諸外国との医療制度やリハ職種の役割の違いなどが考えられる.また,トイレ動作の自立度に関連する変数として,年齢や認知機能,体幹機能,BBSなどのバランス評価の結果,入院時のmRSなどが挙げられた.これは本邦でも報告されている変数であり,本研究で採択した報告が日本のものが多かったことが要因として挙げられる.失行症に関しては,本邦では症例報告がほとんどであるため,トイレ動作との関連に言及する報告は有用な知見である.これらの変数をOTRが適切に用いることで自立度の予測や評価の精度が上がるのではないかと考える.また,今回は排尿・排便コントロールに関する文献は除外しているため,今後はこれらも含めた知見を深めていく必要があると考える.