[PA-11-8] ポスター:脳血管疾患等 11脳卒中高齢者の椅子座位上の仙骨座り姿勢が上肢機能に与える影響
【はじめに】車椅子上での上肢機能評価に関する研究や不良座位姿勢による上肢機能への影響を検討した文献の多くは健常者が対象であり,障害高齢者の研究は少ない.廣瀬らの研究では,車椅子よりも椅子の方が身体の安定性が増し,上肢機能の作業速度が高まることを示した.しかし, 疾患による差異や環境設定の統制について不明確な点が多く,現在までに座位姿勢が上肢機能に与える影響は定かではない.
【目的】本研究はシーティングの対象疾患として多かった脳卒中高齢者の仙骨座り姿勢が上肢機能に与える要因を抽出することとした.
【方法】研究に同意が得られた慢性期脳卒中高齢者を対象とした.選定条件は,脳卒中発症日から180日経過した者,実験実施時に影響を受ける高次脳機能障害がないこと,腰痛・褥瘡がないこととした.基本情報として,年齢,性別,疾患名,障害高齢者の日常生活自立度, 認知症高齢者の日常生活自立度を聴取した.また改訂長谷川式簡易知能評価スケール,脳卒中機能障害評価法を測定した.実験は,対象者に椅子座位で上体を直立させた「基本座位姿勢」と基本座位姿勢から坐骨を前方へ10cm滑らせた「仙骨座り姿勢」の2姿勢の開始姿勢をとらせ,簡易上肢機能検査(以下,Simple Test for Evaluating HandFunction, STEF)を実施した.各姿勢でSTEFの下位検査10項目の各所要時間,合計所要時間,検査遂行時の難易度に対する主観についてVisual Analogue Scaleを用いて測定した.また,STEF実施時の矢状面の姿勢,上肢操作の動画を観察し,座圧測定から座圧が高い部位を確認した.本研究は,首都大学東京荒川キャンパス研究倫理委員会の承認を得て実施された(承認番号:19020).なお,申請すべき利益相反はない.
【結果】15名から協力の同意が得られたが,分析対象は選定条件を基に3名を除外した12名であった.性別は男性11名,女性1名,平均年齢は75.6±6.9歳であった.STEF下位検査の各所要時間,合計所要時間は,「基本座位姿勢」と比較して「仙骨座り姿勢」で増加した.検定結果は, STEF下位検査項目のうち大球,大直方,金円板と合計所要時間が「基本座位姿勢」に比べ「仙骨座り姿勢」で有意に増加し,得点は有意に低い値を示した.また,検査遂行時の主観評価は「基本座位姿勢」に比べ「仙骨座り姿勢」において有意に高く,「仙骨座り姿勢」の方がより困難であると認識していた.座圧は「仙骨座り姿勢」にて尾骨部の圧が感知され,姿勢の観察からは努力的な体幹の前屈,回旋動作が確認された.
【考察】STEFの合計所要時間は「基本座位姿勢」に比べて,「仙骨座り姿勢」において有意に増大し,得点は有意に低下したことから,「仙骨座り姿勢」は脳卒中高齢者の上肢機能を制限することが示唆された.STEF下位検査では,上肢の粗大運動と前方および側方へのリーチ動作が必要な下位検査項目の所要時間が「仙骨座り姿勢」において有意に増加した.内山の研究では,座位でのリーチ動作に体幹機能は不可欠な要素であると述べているが,田中らの研究では,脳卒中片麻痺患者の体幹筋力は,健常者と比較して低下していると報告されている.また,太田らの研究では,健常者は物を取る際に上肢の運動でリーチを行うが,脳卒中片麻痺患者は上肢の運動と同時に体幹の動きが伴うと述べている.本研究においても同様の事象が観察されたため,対象者の体幹機能の低下が座位でのリーチ動作に影響を与えたと考える.なお,観察により「仙骨座り姿勢」では,全対象者が背もたれから背を離して動作を行っていたため,検査遂行時の主観的な困難さが増大したと考えられた.また,座圧は仙骨座り姿勢で座骨に加えて尾骨部の圧も高い値を示しており,不快感が主観的な困難さに影響した可能性も考えられた.
【目的】本研究はシーティングの対象疾患として多かった脳卒中高齢者の仙骨座り姿勢が上肢機能に与える要因を抽出することとした.
【方法】研究に同意が得られた慢性期脳卒中高齢者を対象とした.選定条件は,脳卒中発症日から180日経過した者,実験実施時に影響を受ける高次脳機能障害がないこと,腰痛・褥瘡がないこととした.基本情報として,年齢,性別,疾患名,障害高齢者の日常生活自立度, 認知症高齢者の日常生活自立度を聴取した.また改訂長谷川式簡易知能評価スケール,脳卒中機能障害評価法を測定した.実験は,対象者に椅子座位で上体を直立させた「基本座位姿勢」と基本座位姿勢から坐骨を前方へ10cm滑らせた「仙骨座り姿勢」の2姿勢の開始姿勢をとらせ,簡易上肢機能検査(以下,Simple Test for Evaluating HandFunction, STEF)を実施した.各姿勢でSTEFの下位検査10項目の各所要時間,合計所要時間,検査遂行時の難易度に対する主観についてVisual Analogue Scaleを用いて測定した.また,STEF実施時の矢状面の姿勢,上肢操作の動画を観察し,座圧測定から座圧が高い部位を確認した.本研究は,首都大学東京荒川キャンパス研究倫理委員会の承認を得て実施された(承認番号:19020).なお,申請すべき利益相反はない.
【結果】15名から協力の同意が得られたが,分析対象は選定条件を基に3名を除外した12名であった.性別は男性11名,女性1名,平均年齢は75.6±6.9歳であった.STEF下位検査の各所要時間,合計所要時間は,「基本座位姿勢」と比較して「仙骨座り姿勢」で増加した.検定結果は, STEF下位検査項目のうち大球,大直方,金円板と合計所要時間が「基本座位姿勢」に比べ「仙骨座り姿勢」で有意に増加し,得点は有意に低い値を示した.また,検査遂行時の主観評価は「基本座位姿勢」に比べ「仙骨座り姿勢」において有意に高く,「仙骨座り姿勢」の方がより困難であると認識していた.座圧は「仙骨座り姿勢」にて尾骨部の圧が感知され,姿勢の観察からは努力的な体幹の前屈,回旋動作が確認された.
【考察】STEFの合計所要時間は「基本座位姿勢」に比べて,「仙骨座り姿勢」において有意に増大し,得点は有意に低下したことから,「仙骨座り姿勢」は脳卒中高齢者の上肢機能を制限することが示唆された.STEF下位検査では,上肢の粗大運動と前方および側方へのリーチ動作が必要な下位検査項目の所要時間が「仙骨座り姿勢」において有意に増加した.内山の研究では,座位でのリーチ動作に体幹機能は不可欠な要素であると述べているが,田中らの研究では,脳卒中片麻痺患者の体幹筋力は,健常者と比較して低下していると報告されている.また,太田らの研究では,健常者は物を取る際に上肢の運動でリーチを行うが,脳卒中片麻痺患者は上肢の運動と同時に体幹の動きが伴うと述べている.本研究においても同様の事象が観察されたため,対象者の体幹機能の低下が座位でのリーチ動作に影響を与えたと考える.なお,観察により「仙骨座り姿勢」では,全対象者が背もたれから背を離して動作を行っていたため,検査遂行時の主観的な困難さが増大したと考えられた.また,座圧は仙骨座り姿勢で座骨に加えて尾骨部の圧も高い値を示しており,不快感が主観的な困難さに影響した可能性も考えられた.