[PA-2-6] ポスター:脳血管疾患等 2集中的な課題指向型練習によってADLが自立した頚部脊髄硬膜動静脈瘻の事例
【はじめに】
脊髄硬膜動静脈瘻(AVF)は,100万人あたり5-10人とされる脊髄血管奇形の一種であり胸腰部に好発する.今回,頚部AVFにて重度上肢麻痺を呈したが,集中的な課題指向型練習(TOA)によって日常生活動作(ADL)が自立した事例を報告する.なお今回の報告についてヘルシンキ宣言に基づき事例に説明し書面で同意を得た.
【事例紹介・初回評価】
20歳代前半の男性である.入院2か月前より右上肢の痺れと巧緻運動障害が出現した.その1か月後に左上肢にも同様の症状が出現したため近医を受診した.MRIにてC2-7レベルの脊髄に異常血管を認め,精査・治療のために当院に入院した(0病日).3病日に麻痺が増悪したため緊急でコイル塞栓術が施行され,4病日より作業療法が開始された.徒手筋力検査(MMT,右/左)は,三角筋2/2,上腕二頭筋2/2,上腕三頭筋2/2,手関節背屈筋群2/2,手関節背屈筋群2/2,下肢粗大筋力2/3であった.特に右上肢は代償運動が顕著であり,より重度の麻痺を呈していた.10秒テストおよび簡易上肢機能検査(STEF)は実施困難であった.基本動作・ADLはFunctional Independence Measure(FIM)の運動項目13点,認知項目34点であり基本動作とADLは重度に障害されていた.
【介入・経過】
初回介入時に希望が強かった食事動作と更衣動作の自立を目標とし,上肢機能練習とADL練習を実施した.介入時間は1日2回,合計約2時間程度とした.また病室でも頻回に自主練習を行えるようにペグボード等の道具を貸し出した.病棟におけるADLの様子を看護師と共有し,実際の生活場面に近い環境下で動作を練習した.練習の内容として,食事動作練習(左上肢にて自助具箸を使用)と更衣動作練習を行った.左上肢での自助具箸の操作獲得時,上衣の袖通しや下衣の裾通しおよび臀部までの引き上げ動作獲得時には,看護師と相談し自力で行える工程は介助しないよう依頼した.随意性向上にともない,23病日より右上肢での自助具箸の操作練習を開始した(28病日には実際の食事でも使用できるようになった).63病日に回復期病院へ転院となった.
【最終評価(右/左)】
MMTは,三角筋3/4,上腕二頭筋3/4,上腕三頭筋3/3,手関節背屈筋群3/4,手関節背屈筋群3/4,下肢粗大筋力4/4であり改善を認めた.握力は9/22kg,finger escape signは0/0,10秒テストは14/17回,そしてSTEFは77/87点であり上肢機能の改善を認めた.FIMは運動項目85点,認知項目35点であり基本動作・ADLともに改善を認めた.特に事例が強く希望した食事動作は右上肢にて自助具箸を使用する事で自立し,更衣動作は上衣・下衣操作ともに自立した.
【考察】
AVFの疫学的予後について,大谷啓太ら(2021)は罹患期間が長期に渡る者や高齢者では改善率が劣ると報告している.事例は罹患期間が短く,かつ若年であり,ある程度の機能改善を期待した.小渕浩平ら(2019)は急性期患者に対する積極的なTOAの有効性について報告しており,鳥沢伸大ら(2019)は早期から自助具等の使用を含めたADL練習を行うことで,活動性向上や機能改善に繋がると報告している.本人と看護師に対して頻回に動作方法や介助方法について情報共有を行い,病棟生活では自助具を用いてADLで上肢の使用頻度を増やすように介入を工夫した.機能改善を予測し早期からの集中的なTOAを行う事で,本事例のADLが自立したと考える.
脊髄硬膜動静脈瘻(AVF)は,100万人あたり5-10人とされる脊髄血管奇形の一種であり胸腰部に好発する.今回,頚部AVFにて重度上肢麻痺を呈したが,集中的な課題指向型練習(TOA)によって日常生活動作(ADL)が自立した事例を報告する.なお今回の報告についてヘルシンキ宣言に基づき事例に説明し書面で同意を得た.
【事例紹介・初回評価】
20歳代前半の男性である.入院2か月前より右上肢の痺れと巧緻運動障害が出現した.その1か月後に左上肢にも同様の症状が出現したため近医を受診した.MRIにてC2-7レベルの脊髄に異常血管を認め,精査・治療のために当院に入院した(0病日).3病日に麻痺が増悪したため緊急でコイル塞栓術が施行され,4病日より作業療法が開始された.徒手筋力検査(MMT,右/左)は,三角筋2/2,上腕二頭筋2/2,上腕三頭筋2/2,手関節背屈筋群2/2,手関節背屈筋群2/2,下肢粗大筋力2/3であった.特に右上肢は代償運動が顕著であり,より重度の麻痺を呈していた.10秒テストおよび簡易上肢機能検査(STEF)は実施困難であった.基本動作・ADLはFunctional Independence Measure(FIM)の運動項目13点,認知項目34点であり基本動作とADLは重度に障害されていた.
【介入・経過】
初回介入時に希望が強かった食事動作と更衣動作の自立を目標とし,上肢機能練習とADL練習を実施した.介入時間は1日2回,合計約2時間程度とした.また病室でも頻回に自主練習を行えるようにペグボード等の道具を貸し出した.病棟におけるADLの様子を看護師と共有し,実際の生活場面に近い環境下で動作を練習した.練習の内容として,食事動作練習(左上肢にて自助具箸を使用)と更衣動作練習を行った.左上肢での自助具箸の操作獲得時,上衣の袖通しや下衣の裾通しおよび臀部までの引き上げ動作獲得時には,看護師と相談し自力で行える工程は介助しないよう依頼した.随意性向上にともない,23病日より右上肢での自助具箸の操作練習を開始した(28病日には実際の食事でも使用できるようになった).63病日に回復期病院へ転院となった.
【最終評価(右/左)】
MMTは,三角筋3/4,上腕二頭筋3/4,上腕三頭筋3/3,手関節背屈筋群3/4,手関節背屈筋群3/4,下肢粗大筋力4/4であり改善を認めた.握力は9/22kg,finger escape signは0/0,10秒テストは14/17回,そしてSTEFは77/87点であり上肢機能の改善を認めた.FIMは運動項目85点,認知項目35点であり基本動作・ADLともに改善を認めた.特に事例が強く希望した食事動作は右上肢にて自助具箸を使用する事で自立し,更衣動作は上衣・下衣操作ともに自立した.
【考察】
AVFの疫学的予後について,大谷啓太ら(2021)は罹患期間が長期に渡る者や高齢者では改善率が劣ると報告している.事例は罹患期間が短く,かつ若年であり,ある程度の機能改善を期待した.小渕浩平ら(2019)は急性期患者に対する積極的なTOAの有効性について報告しており,鳥沢伸大ら(2019)は早期から自助具等の使用を含めたADL練習を行うことで,活動性向上や機能改善に繋がると報告している.本人と看護師に対して頻回に動作方法や介助方法について情報共有を行い,病棟生活では自助具を用いてADLで上肢の使用頻度を増やすように介入を工夫した.機能改善を予測し早期からの集中的なTOAを行う事で,本事例のADLが自立したと考える.