[PA-2-7] ポスター:脳血管疾患等 2ADOCを用いて主婦としての役割の再獲得に繋がった事例~語りから引き出す重要な作業~
【はじめに】作業選択意思決定支援ソフト(Air for Decision-making in Occupation Choice:ADOC)は対象者にとって意味のある作業を抽出し,作業療法士との目標共有を図る為のアプリケ―ションシステムである(上地,2018).今回,脳出血発症により,主婦としての役割の再開に対して消極的であった事例を担当した.本事例に対し,ADOCを用いた面接を実施したところ,事例の語りから家族の為に調理をするという作業の意味を共有することに繋がり,主婦としての役割の再獲得に至った為報告する.なお,本報告に際して,本人及び家族に同意を得ている.
【事例紹介】60歳代女性.夫,長女夫婦,孫4人の8人暮らし.病前は仕事や家事,孫の送迎の役割を担っていた.右視床出血を発症にて,中等度の左片麻痺や感覚障害,軽度の注意障害を認めていた.入院時FIM運動項目41点,認知項目28点で,日常生活活動(以下ADL)は全般的に介助を要した.また,左上肢はADL上での参加が認められなかった.
【経過】
前期(入院~2か月):初回面接では「身の回りのことができるようになりたい」と希望が聞かれた為,ADL練習を中心に介入した.リハ以外にも左上肢の自己練習を提供し,積極的に実施していた.ADLは入浴以外自立となり,ADL上での両手の使用が可能となった.そこで,主婦としての役割の再獲得に向け,調理訓練の提案をすると「家族にやってもらう」「危ないからやらないでって言うと思う」など消極的な発言が聞かれた.
中期(2~4か月):目標の共有を図る為にADOCを使用し,事例の人生観と現状の思いを語ってもらった. 事例の語りから「料理は好きだったから,毎日家族8人分作っていた」「夫には毎日弁当も作っていた」「誕生日には好きなものを作って,みんなで話しているのが楽しかった」など料理を通して家族との繋がりを大切にしており,家族との交流と炊事の重要度が高いことが分かった.しかし,「色々やりたいけど家族に迷惑をかけたくない」「家族は『大丈夫だよ』って言ってくれてるけど,できることはやってあげたい」など,やりたくてもやれないという葛藤が生じていた.そこで,その語りから家族の一員である為に役割として料理を作り,家族に喜んでもらうこと,そして一家の大黒柱として仕事をする夫の為にお弁当を作ることを目標として共有し,同意を得た.まずは簡単な調理から段階づけて実施し,難易度を調整した.調理動作に慣れてきたところでお弁当作りを行った.回数を重ねることで,メニューやレイアウトを自発的に考えるようになった.家族とはスマートフォンを通して写真を送り,料理を共有する機会を作った.さらに,作った料理をアルバムにまとめ,病院内でも他者から見てもらえるような工夫を行った.家族や他者から賞賛され自信をつけていた.
後期(4~6か月):「他の家事もやってみよう」「友達の家に行くことがあるから正座の練習がしたい」など,意欲的な発言が聞かれるようになった.しかし,左大腿骨頸部骨折を受傷し,急性期病院に転院となった.再入院後も調理を継続したいという意欲は持続していたが,ADLの制限を受けていた為,ADL練習を中心に介入を要した.また,他患との交流にも積極的になり,以前は興味を示さなかった創作活動にも意欲的に取り組むようになった.
【結果】FIM運動項目85点,認知項目34点,ADLは入浴以外自立し,自宅退院となった.退院4か月後,調理だけでなく,洗濯や掃除も継続しており,主婦としての役割を担っている.
【考察】ADOCを用い,事例からの語りを引き出したことで潜在化していた思いを引き出すことに繋がり,重要な作業への動機づけが高まった.作業の意味を共有し,介入を行うことで意欲や自己肯定感が向上し,自己選択の幅が広がり,活動範囲の拡大に繋がった.
【事例紹介】60歳代女性.夫,長女夫婦,孫4人の8人暮らし.病前は仕事や家事,孫の送迎の役割を担っていた.右視床出血を発症にて,中等度の左片麻痺や感覚障害,軽度の注意障害を認めていた.入院時FIM運動項目41点,認知項目28点で,日常生活活動(以下ADL)は全般的に介助を要した.また,左上肢はADL上での参加が認められなかった.
【経過】
前期(入院~2か月):初回面接では「身の回りのことができるようになりたい」と希望が聞かれた為,ADL練習を中心に介入した.リハ以外にも左上肢の自己練習を提供し,積極的に実施していた.ADLは入浴以外自立となり,ADL上での両手の使用が可能となった.そこで,主婦としての役割の再獲得に向け,調理訓練の提案をすると「家族にやってもらう」「危ないからやらないでって言うと思う」など消極的な発言が聞かれた.
中期(2~4か月):目標の共有を図る為にADOCを使用し,事例の人生観と現状の思いを語ってもらった. 事例の語りから「料理は好きだったから,毎日家族8人分作っていた」「夫には毎日弁当も作っていた」「誕生日には好きなものを作って,みんなで話しているのが楽しかった」など料理を通して家族との繋がりを大切にしており,家族との交流と炊事の重要度が高いことが分かった.しかし,「色々やりたいけど家族に迷惑をかけたくない」「家族は『大丈夫だよ』って言ってくれてるけど,できることはやってあげたい」など,やりたくてもやれないという葛藤が生じていた.そこで,その語りから家族の一員である為に役割として料理を作り,家族に喜んでもらうこと,そして一家の大黒柱として仕事をする夫の為にお弁当を作ることを目標として共有し,同意を得た.まずは簡単な調理から段階づけて実施し,難易度を調整した.調理動作に慣れてきたところでお弁当作りを行った.回数を重ねることで,メニューやレイアウトを自発的に考えるようになった.家族とはスマートフォンを通して写真を送り,料理を共有する機会を作った.さらに,作った料理をアルバムにまとめ,病院内でも他者から見てもらえるような工夫を行った.家族や他者から賞賛され自信をつけていた.
後期(4~6か月):「他の家事もやってみよう」「友達の家に行くことがあるから正座の練習がしたい」など,意欲的な発言が聞かれるようになった.しかし,左大腿骨頸部骨折を受傷し,急性期病院に転院となった.再入院後も調理を継続したいという意欲は持続していたが,ADLの制限を受けていた為,ADL練習を中心に介入を要した.また,他患との交流にも積極的になり,以前は興味を示さなかった創作活動にも意欲的に取り組むようになった.
【結果】FIM運動項目85点,認知項目34点,ADLは入浴以外自立し,自宅退院となった.退院4か月後,調理だけでなく,洗濯や掃除も継続しており,主婦としての役割を担っている.
【考察】ADOCを用い,事例からの語りを引き出したことで潜在化していた思いを引き出すことに繋がり,重要な作業への動機づけが高まった.作業の意味を共有し,介入を行うことで意欲や自己肯定感が向上し,自己選択の幅が広がり,活動範囲の拡大に繋がった.