第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-2] ポスター:脳血管疾患等 2

2022年9月16日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PA-2-8] ポスター:脳血管疾患等 2目標設定が脳卒中急性期患者の日常生活活動に与える影響

田邊 芽衣1青木 江里奈1木本 茉佑1 (1沼田脳神経外科循環器科病院リハビリテーション部門)

【はじめに】
 目標設定はリハビリテーションにおいて重要なプロセスの一つと考えられている(Levack WM et al., 2015).しかしながら,時間的な制約が多い脳卒中急性期において,クライエントとの目標設定の意義は十分に検討されていない.本研究の目的は,作業療法士と急性期脳卒中患者が目標を共有する機会が日常生活活動(Activities of Daily Living; ADL)の改善に影響するかどうか調査することである.
【方法】
 後ろ向きコホート研究を実施した.対象者は令和3年8月1日~12月31日に脳卒中治療のために入院し,作業療法が処方された患者とした.目標設定ツールは(Aid for Decision-making in Occupation Choice; ADOC)を使用し,1週間以内にADOCを実施した患者をADOC実施群とし,同時期にADOCを実施しなかった患者を対照群とした.高次脳機能障害や意識障害により評価が実施困難な患者,自宅以外で生活していた患者は除外した.年齢,性別,診断名,既往歴,家族構成,機能的自立度評価法(Functional Independence Measure; FIM),在院日数を診療録等から調査した.統計解析は,傾向スコアマッチングを用いて,ベースラインの年齢,運動FIM,認知FIMを調整した後,分割プロットデザインによる分散分析を用い,ADOC実施,介入前後の2条件を分析した.有意水準は5%未満とした.本研究は研究実施施設の倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
 ADOC実施群12名,ADOC未実施群7名のデータを収集した.傾向スコアマッチング後,ADOC実施群7名(67.1±14.6歳,男性2名,女性5名,脳梗塞4名,脳出血1名,くも膜下出血1名,けいれん重積発作1名,在院日数20.9±7.5日),ADOC未実施群7名(68.1±15.8歳,男性6名,女性1名,脳梗塞3名,脳出血2名,内頚動脈狭窄症1名,椎骨動脈乖離1名,在院日数23.3±5.3日)を分析した.ADOC実施群の目標の内訳はADL 40%,手段的日常生活活動54%,その他6%であった.介入前後のFIMに主効果を認め,両群ともに向上した(ADOC実施群:66.6±20.8点から117.3±6.3点,ADOC非実施群:66.6±17.3点から110.0±14.6点).一方,群間には主効果はなく,交互作用も認められなかった.
【考察】
 目標設定の機会の有無にかかわらず,両群ともにFIMが向上した.本研究の対象者は脳卒中急性期患者であり,ADL改善は治療方針に組み込まれているので,目標設定の機会がADL改善に与える影響は少ないことが考えられる.急性期脳卒中における目標設定の意義を明らかにするためにはADL以外のアウトカムを検討する必要があることが示唆された.