[PA-3-11] ポスター:脳血管疾患等 3スイッチの導入と操作練習によりコミュニケーションの獲得と余暇活動の参加を支援した事例
【はじめに】今回,脳出血により四肢麻痺,意思伝達が困難となった事例に対し,コミュニケーション手段の獲得と余暇活動の参加を目指した支援の結果,家族との意思疎通やスイッチを用いたiPadの操作が可能になったなどの変化が得られたので報告する.報告にあたり,家族から口頭で同意を得た.
【事例紹介】30歳代後半の男性.出身は香港で日本人の妻と2人暮らし.余暇時間はスポーツ観戦,音楽鑑賞などを行っていた.右前頭葉と頭頂葉の脳出血と診断され,第9病日に気管切開となる.第96病日に当院へ転院した.意識レベルはJCS-3~20,FIMは運動13点・認知6点,日常生活動作は全介助であった.離床時はリクライニング型車椅子に乗車し,1日計30分であった.自発的な意思表示は不可能であったが,右母指の屈伸運動は従命可能であった.両上肢の肩肘手指に著明なROM制限(肘伸展:右-35/左-40,手関節背屈:右-45/左-50)を認め四肢麻痺を呈していた.家族からは意思疎通が図れるようになりたい,声が聞きたいとの希望があった.
【方法】長期目標(3ヶ月)は,(1)機器を使用し家族に意思を伝えられること,(2)iPadでテレビ電話の操作やYouTubeを開くことができること,(3)家族が退院後の生活を想像することができ,妻1人でストレッチや更衣介助・車椅子操作を実践できることとした.短期目標(1ヶ月)は,(1)日中JCS1桁で安定し頸部や上肢の活動量が増加すること,(2)yes/noの表出により家族やNsに意思を伝えられることとした.
プログラムは,(1)抗重力位での活動として端座位の訓練や車椅子での離床機会の提供.(2)右手の把握や瞼の動きによる代償的なコミュニケーションの練習.(3)本人に適合した機器を使用したiPad内のアプリを開く練習やキーボードを打つ練習.(4)妻に上肢ストレッチや更衣,車椅子操作の指導を行った.
【経過】I期:コミュニケーションの拡大(第108病日〜第164病日).右手の把握によりyes/noの表出が可能になる.また目を長くつぶることによりFacetimeを通じて妻の質問に応答し,余暇時間を過ごしている.正確性は低いがナースコールを押すことが可能となったため,Nsと意思伝達しやすいようカードを作成した.自発的にコールを押す回数は少なかったが夜間嘔吐時にコールを押すことがあった.
II期:機器の適合と余暇活動の拡大(第165病日〜第193病日).複数の機器を検討した結果, マジックテープのベルトを指に巻くことで固定が可能なフィンガースイッチ(エスコアール)を選択した.スイッチの位置の変化や振戦による誤操作は見られず,適切なポジションニングによって正確性も向上した.
【結果】意識レベルはJCS-3,FIMは運動13点・認知18点であった.離床時間は1日3時間可能であった.運動機能の著明な変化は見られなかったが,コミュニケーションは右手の把握もしくは目を長くつぶってもらうことでクローズド・クエスチョンに返答可能になり,家族やNsとも日常的な質問に答えることができるようになった.またフィンガースイッチを使用し,iPadで撮影やYouTube視聴,雑誌閲覧,そしてキーボードで妻に向けた1文程度の入力が可能になった.本人が入力した内容を見て,妻が感動して涙を流す様子もあった.
【考察】今回,事例に適した機器を検討し,コミュニケーション手段の獲得に向けた支援を行った.その結果,妻や家族など他者との関わりを取り戻し,日常場面での活動量の増加と余暇活動の参加の幅を広げる一助となったと考える.
【事例紹介】30歳代後半の男性.出身は香港で日本人の妻と2人暮らし.余暇時間はスポーツ観戦,音楽鑑賞などを行っていた.右前頭葉と頭頂葉の脳出血と診断され,第9病日に気管切開となる.第96病日に当院へ転院した.意識レベルはJCS-3~20,FIMは運動13点・認知6点,日常生活動作は全介助であった.離床時はリクライニング型車椅子に乗車し,1日計30分であった.自発的な意思表示は不可能であったが,右母指の屈伸運動は従命可能であった.両上肢の肩肘手指に著明なROM制限(肘伸展:右-35/左-40,手関節背屈:右-45/左-50)を認め四肢麻痺を呈していた.家族からは意思疎通が図れるようになりたい,声が聞きたいとの希望があった.
【方法】長期目標(3ヶ月)は,(1)機器を使用し家族に意思を伝えられること,(2)iPadでテレビ電話の操作やYouTubeを開くことができること,(3)家族が退院後の生活を想像することができ,妻1人でストレッチや更衣介助・車椅子操作を実践できることとした.短期目標(1ヶ月)は,(1)日中JCS1桁で安定し頸部や上肢の活動量が増加すること,(2)yes/noの表出により家族やNsに意思を伝えられることとした.
プログラムは,(1)抗重力位での活動として端座位の訓練や車椅子での離床機会の提供.(2)右手の把握や瞼の動きによる代償的なコミュニケーションの練習.(3)本人に適合した機器を使用したiPad内のアプリを開く練習やキーボードを打つ練習.(4)妻に上肢ストレッチや更衣,車椅子操作の指導を行った.
【経過】I期:コミュニケーションの拡大(第108病日〜第164病日).右手の把握によりyes/noの表出が可能になる.また目を長くつぶることによりFacetimeを通じて妻の質問に応答し,余暇時間を過ごしている.正確性は低いがナースコールを押すことが可能となったため,Nsと意思伝達しやすいようカードを作成した.自発的にコールを押す回数は少なかったが夜間嘔吐時にコールを押すことがあった.
II期:機器の適合と余暇活動の拡大(第165病日〜第193病日).複数の機器を検討した結果, マジックテープのベルトを指に巻くことで固定が可能なフィンガースイッチ(エスコアール)を選択した.スイッチの位置の変化や振戦による誤操作は見られず,適切なポジションニングによって正確性も向上した.
【結果】意識レベルはJCS-3,FIMは運動13点・認知18点であった.離床時間は1日3時間可能であった.運動機能の著明な変化は見られなかったが,コミュニケーションは右手の把握もしくは目を長くつぶってもらうことでクローズド・クエスチョンに返答可能になり,家族やNsとも日常的な質問に答えることができるようになった.またフィンガースイッチを使用し,iPadで撮影やYouTube視聴,雑誌閲覧,そしてキーボードで妻に向けた1文程度の入力が可能になった.本人が入力した内容を見て,妻が感動して涙を流す様子もあった.
【考察】今回,事例に適した機器を検討し,コミュニケーション手段の獲得に向けた支援を行った.その結果,妻や家族など他者との関わりを取り戻し,日常場面での活動量の増加と余暇活動の参加の幅を広げる一助となったと考える.