[PA-3-12] ポスター:脳血管疾患等 3車いすを使用している患者の新たなトイレ動作尺度の構造的妥当性の検討
【はじめに】
我が国では,高齢者人口は増加傾向にあり,加齢に関連した疾患が激増することが予測されている.また,様々な疾患の発症により日常生活活動(以下,ADL)の能力が低下する高齢者が増加すると見込まれている(厚生労働省,2018).ADLの中でも特に,トイレ動作は自立できないことで,Quality of Life(Dhamoonら,2010),精神衛生および社会参加の低下(Feldeら,2012)を引き起こす.また,トイレ動作の自立は,病院からの在宅復帰や在院日数にも影響を与えている(Kushnerら,2018).Functional Independence MeasureやBarthel Indexでは,トイレ動作に関連する項目は少なく反応性が低い(Takedaら,2019)という指摘がある.トイレ動作に特化し動作ごとに評価できる評価法は,Kawanabeらのトイレ動作評価,Toileting Performance Assessment Test,Toileting Tasks Assessment Form の3つがある.しかし,評点段階が少ないことやトイレ動作項目が網羅されていないことなど課題があった(東,2020).そこで,我々はトイレ動作を22の動作に分類し,6段階でそれぞれの動作を評点するトイレ動作尺度(Toileting Behavior Evaluation:TBE)を作成し,古典的テスト理論に基づき信頼性と妥当性を検証した(東ら,2021).本研究の目的は,現代テスト理論に基づきRasch分析でTBEの構造的妥当性を検討することである.
【方法】
対象は,2020年4月から2021年3月の間に,急性期あるいは回復期リハビリテーション病院(3施設)に入院し車椅子を使用しトイレに行っている患者で,作業療法が処方された128名(平均年齢76.9歳±10.6,男性58名,女性70名,脳血管疾患93名,整形外科疾患27名,廃用症候群8名)であった.手続きは,作業療法士が対象者のトイレ動作を観察し,TBEを用いて評価した.分析は,WINSTEPS(Version 4.00)を用いてRasch分析を行った.分析に先立ち,以下の項目を削除した.
(1)一部の施設の特徴によって評価できなかった2項目(「電気をつける」,「汚物を流す」)(2)一部の対象者の身体状況により評価できなかった2項目(「フットプレートを上げる」「フットプレートに足を乗せる」).その結果,分析対象項目は22項目から18項目となった.18項目の評点段階分析と項目の一次元性の検討を実施した.評点段階分析は,TBEの6段階で対象者を適切に分類できているかを検討するもので,各評点段階のoutfitのMnSqが2.0以内かつ各評点段階の間隔が1.0logit以上を基準とした.一次元性の検討は各項目の難易度が一次元上に並ぶかを検討し,各項目のinfitのMnSqが1.7以上かつstandardized zが2以上を基準とした.その後,主成分分析を実施し,Rasch factorで説明できる変数の割合が 50%以上かつRasch factorで説明できない第一変数の割合 が15%以下を一次元性の基準とした.なお,本研究は所属機関の研究倫理委員会からの承認を得た後に,対象者の同意を得て実施した.また,本研究の一部はJSPS科研費20K19076の助成を受けて実施した.
【結果】
評点段階分析および一次元性の検討ともに,上記の基準を満たしていた.評点段階分析では,6段階で対象者を適切に分類できることが明らかになった.一次元性の検討では,すべての項目で一次元性が確認できた.なお,最も難易度の高い項目は「下衣を上げる」で,最も難易度の低い項目は「便座で座位を保持する」であった.
【考察】
TBEの構造的妥当性が認められ,定量的効果判定指標として使用可能と考えられる.また,項目難易度が細かく示されたことで,支援をする優先順位などを検討する際の一助になると考えられる.
我が国では,高齢者人口は増加傾向にあり,加齢に関連した疾患が激増することが予測されている.また,様々な疾患の発症により日常生活活動(以下,ADL)の能力が低下する高齢者が増加すると見込まれている(厚生労働省,2018).ADLの中でも特に,トイレ動作は自立できないことで,Quality of Life(Dhamoonら,2010),精神衛生および社会参加の低下(Feldeら,2012)を引き起こす.また,トイレ動作の自立は,病院からの在宅復帰や在院日数にも影響を与えている(Kushnerら,2018).Functional Independence MeasureやBarthel Indexでは,トイレ動作に関連する項目は少なく反応性が低い(Takedaら,2019)という指摘がある.トイレ動作に特化し動作ごとに評価できる評価法は,Kawanabeらのトイレ動作評価,Toileting Performance Assessment Test,Toileting Tasks Assessment Form の3つがある.しかし,評点段階が少ないことやトイレ動作項目が網羅されていないことなど課題があった(東,2020).そこで,我々はトイレ動作を22の動作に分類し,6段階でそれぞれの動作を評点するトイレ動作尺度(Toileting Behavior Evaluation:TBE)を作成し,古典的テスト理論に基づき信頼性と妥当性を検証した(東ら,2021).本研究の目的は,現代テスト理論に基づきRasch分析でTBEの構造的妥当性を検討することである.
【方法】
対象は,2020年4月から2021年3月の間に,急性期あるいは回復期リハビリテーション病院(3施設)に入院し車椅子を使用しトイレに行っている患者で,作業療法が処方された128名(平均年齢76.9歳±10.6,男性58名,女性70名,脳血管疾患93名,整形外科疾患27名,廃用症候群8名)であった.手続きは,作業療法士が対象者のトイレ動作を観察し,TBEを用いて評価した.分析は,WINSTEPS(Version 4.00)を用いてRasch分析を行った.分析に先立ち,以下の項目を削除した.
(1)一部の施設の特徴によって評価できなかった2項目(「電気をつける」,「汚物を流す」)(2)一部の対象者の身体状況により評価できなかった2項目(「フットプレートを上げる」「フットプレートに足を乗せる」).その結果,分析対象項目は22項目から18項目となった.18項目の評点段階分析と項目の一次元性の検討を実施した.評点段階分析は,TBEの6段階で対象者を適切に分類できているかを検討するもので,各評点段階のoutfitのMnSqが2.0以内かつ各評点段階の間隔が1.0logit以上を基準とした.一次元性の検討は各項目の難易度が一次元上に並ぶかを検討し,各項目のinfitのMnSqが1.7以上かつstandardized zが2以上を基準とした.その後,主成分分析を実施し,Rasch factorで説明できる変数の割合が 50%以上かつRasch factorで説明できない第一変数の割合 が15%以下を一次元性の基準とした.なお,本研究は所属機関の研究倫理委員会からの承認を得た後に,対象者の同意を得て実施した.また,本研究の一部はJSPS科研費20K19076の助成を受けて実施した.
【結果】
評点段階分析および一次元性の検討ともに,上記の基準を満たしていた.評点段階分析では,6段階で対象者を適切に分類できることが明らかになった.一次元性の検討では,すべての項目で一次元性が確認できた.なお,最も難易度の高い項目は「下衣を上げる」で,最も難易度の低い項目は「便座で座位を保持する」であった.
【考察】
TBEの構造的妥当性が認められ,定量的効果判定指標として使用可能と考えられる.また,項目難易度が細かく示されたことで,支援をする優先順位などを検討する際の一助になると考えられる.