[PA-3-3] ポスター:脳血管疾患等 3脳卒中後亜急性期よりmCI療法を実施しADL及びIADLの再獲得を目指した一例
【はじめに】脳卒中後の上肢麻痺に対するエビデンスとして,Constraint-induced movement therapy(以下,CI療法)がある.CI療法ではTransfer Package(以下,TP)と呼ばれる行動戦略を用い,獲得した機能を実生活に活かすことを目的としている.また近年CI療法と比較し短時間で治療するmodified CI therapy(以下,mCI療法)が散見される.今回mCI療法を用いて実生活での麻痺手の使用を促し,ADL,IADLの再獲得を目指した一例について以下に報告する.
【症例紹介】脳梗塞により左片麻痺を呈した40代女性,利き手は右手で,病前ADL,IADLは自立していた.OTは4病日より介入した.発表に際し,本人には口頭と文書にて説明し同意を得た.
【方法】訓練時間はOTを1時間,shapingやtask practiceを中心とした自主練習を1時間,計約2時間とした.TPでは自主練習,目標設定を本人と相談し決定した.また左手の使用状況を紙面に記載し毎日振り返りを行った.自主練習は約10項目設定し,機能に合わせて失敗体験のないように難易度を変更した.
【mCI療法開始時評価(16病日)】JCSは0,Brsは左上肢Ⅳ,手指Ⅲ,Fugl-Meyer-Assessmentの上肢項目(以下,FMA-U)は34点,著しい高次脳機能障害は認めなかった.基本動作は自立,ADLはBIが65点,Motor Activity Log(以下,MAL)はAmount of Use(以下,AOU)が0.9点,Quality of Movement(以下,QOM)は0.8点であった.目標は➀両手でボタン操作を行う(以下,➀),➁左手で食器を把持,移動する(以下,➁),➂両手でズボンの操作を行う(以下,➂)のADLの3項目とし,IADLは➃料理時に左手で物を押さえる(以下,➃),➄洗濯物を干す(以下,➄)の2項目を設定した.
【経過】17病日より➀,➁,➂は,難易度調整を行い繰り返し実施した.徐々に他のADLについても「これもやってみたい」と発言があり,目標以外のADLも繰り返し行い積極的に左手を使用していた.35病日には➀はボタンをつまむことは困難であったが,補助的にボタンホールの周囲を押さえることは可能であった.➁は左手で食器を掴めたが,食器を保持することが出来なかった.➂は左手でズボンを下ろすも時間を要し,右手で下ろしていた.またIADLの目標に対し意欲的な発言も聞かれ,41病日より➃,➄を実施した.➃,➄ともに一連の動作は可能で,「家でも出来そう」と自宅退院に向けて前向きな発言があるが,課題も認めた.47病日にはADLで積極的に左手を使用し,➀,➁,➂ともに拙劣さは残存するも動作の遂行が可能となった.
【mCI療法終了時評価(48~49病日)】Brsは上肢Ⅴ,手指Ⅴ,FMA-Uは53点,BIは85点,MALはAOUが3.6点,QOMは3.3点へ向上した.
【考察】mCI療法終了時にはFMA-Uは19点,AOUは2.7点,QOMは2.5点向上した.臨床上意味のある最小変化量(Minimal Clinically Important Difference;MCID)において,AryaらはFMAは9~10点,van der Lee らはAOUは0.5点,Lang らはQOMは1.0~1.1点と報告しており,上肢機能において臨床上優位な改善を認めた.高橋は,「行動変容を促すためのアプローチにおいてはポジティブな報酬期待が必要であり,そのためには作業活動に目的や意味をもたせることが重要である.」と報告している.mCI療法開始時には本人と目標を設定した.機能改善に合わせて失敗体験にならないように難易度調整をし,繰り返し行うことで成功体験となり積極的な左手の使用に至ったと思われる.さらにADLの成功体験が自己効力感の向上へ繋がり,報酬期待であるIADLへの意欲的な発言へ変化したと思われる.以上よりmCI療法を用いた介入がADL,IADLにおける積極的な左手の使用に繋がり,行動変容に至った可能性が示唆された.
【症例紹介】脳梗塞により左片麻痺を呈した40代女性,利き手は右手で,病前ADL,IADLは自立していた.OTは4病日より介入した.発表に際し,本人には口頭と文書にて説明し同意を得た.
【方法】訓練時間はOTを1時間,shapingやtask practiceを中心とした自主練習を1時間,計約2時間とした.TPでは自主練習,目標設定を本人と相談し決定した.また左手の使用状況を紙面に記載し毎日振り返りを行った.自主練習は約10項目設定し,機能に合わせて失敗体験のないように難易度を変更した.
【mCI療法開始時評価(16病日)】JCSは0,Brsは左上肢Ⅳ,手指Ⅲ,Fugl-Meyer-Assessmentの上肢項目(以下,FMA-U)は34点,著しい高次脳機能障害は認めなかった.基本動作は自立,ADLはBIが65点,Motor Activity Log(以下,MAL)はAmount of Use(以下,AOU)が0.9点,Quality of Movement(以下,QOM)は0.8点であった.目標は➀両手でボタン操作を行う(以下,➀),➁左手で食器を把持,移動する(以下,➁),➂両手でズボンの操作を行う(以下,➂)のADLの3項目とし,IADLは➃料理時に左手で物を押さえる(以下,➃),➄洗濯物を干す(以下,➄)の2項目を設定した.
【経過】17病日より➀,➁,➂は,難易度調整を行い繰り返し実施した.徐々に他のADLについても「これもやってみたい」と発言があり,目標以外のADLも繰り返し行い積極的に左手を使用していた.35病日には➀はボタンをつまむことは困難であったが,補助的にボタンホールの周囲を押さえることは可能であった.➁は左手で食器を掴めたが,食器を保持することが出来なかった.➂は左手でズボンを下ろすも時間を要し,右手で下ろしていた.またIADLの目標に対し意欲的な発言も聞かれ,41病日より➃,➄を実施した.➃,➄ともに一連の動作は可能で,「家でも出来そう」と自宅退院に向けて前向きな発言があるが,課題も認めた.47病日にはADLで積極的に左手を使用し,➀,➁,➂ともに拙劣さは残存するも動作の遂行が可能となった.
【mCI療法終了時評価(48~49病日)】Brsは上肢Ⅴ,手指Ⅴ,FMA-Uは53点,BIは85点,MALはAOUが3.6点,QOMは3.3点へ向上した.
【考察】mCI療法終了時にはFMA-Uは19点,AOUは2.7点,QOMは2.5点向上した.臨床上意味のある最小変化量(Minimal Clinically Important Difference;MCID)において,AryaらはFMAは9~10点,van der Lee らはAOUは0.5点,Lang らはQOMは1.0~1.1点と報告しており,上肢機能において臨床上優位な改善を認めた.高橋は,「行動変容を促すためのアプローチにおいてはポジティブな報酬期待が必要であり,そのためには作業活動に目的や意味をもたせることが重要である.」と報告している.mCI療法開始時には本人と目標を設定した.機能改善に合わせて失敗体験にならないように難易度調整をし,繰り返し行うことで成功体験となり積極的な左手の使用に至ったと思われる.さらにADLの成功体験が自己効力感の向上へ繋がり,報酬期待であるIADLへの意欲的な発言へ変化したと思われる.以上よりmCI療法を用いた介入がADL,IADLにおける積極的な左手の使用に繋がり,行動変容に至った可能性が示唆された.