[PA-3-9] ポスター:脳血管疾患等 3くも膜下出血を呈した患者に対する集中治療室からの作業療法介入の一事例~ ADOC による目標共有を主とした関わり~
【はじめに】脳卒中ガイドライン2021において,急性期リハビリテーションでは十分なリスク管理のもとに総機材・立位等,積極的なリハビリテーションを,できるだけ早期から行うことが勧められている.しかしながら,くも膜下出血(以下,SAH)は,術後に脳槽や腰椎ドレーン挿入による安静度の制限,遅発性脳血管攣縮の予防を中心に行われるため,この時期のリハビリテーション内容は制限されることが多い.本症例においても,手術や治療により意識障害は早期に改善し,麻痺等の後遺症も軽度であったが,腰椎ドレーン留置や遅発性脳血管攣縮予防のため,2週間ICUでの在院を強いられていた.そこで,作業選択意思決定支援ソフト(以下,ADOC)を用いてOTの目標共有を行うことで,退院後に希望としていた趣味の再開や仕事復帰という目標達成に至ったためその経過について報告する.尚,本報告に際し本人より同意を得ている.
【症例紹介】60歳代,女性,病前は夫と二人暮らしにてADLは自立し,職業は当院にて介護ヘルパーをしていた.診断名:右椎骨脳底動脈解離性動脈瘤破裂によるSAH.現病歴:X年Y月Z日深夜,左大腿部痛あり,症状継続のため当院を受診.頭部CTにてSAHを認め入院となる.Z+1日にコイル塞栓術を施行.その後,鎮静下にてICUに入室.Z+2日バイタルサイン安定に伴い人工呼吸器抜管し,PT・OT・STが開始となる.初回OT評価(Z+2日):意識レベルはJCS;Ⅰ-1,GCS;E4V5M6,せん妄症状はなし.身体機能として著明な運動麻痺・感覚障害は認めず,寝返りやベッド上での食事・整容動作は自立していた.Needとして「70歳まで働きたい」と発言が聞かれていた.
【介入と経過】ICUでのリハビリ(Z+2日〜Z+14日):腰椎ドレーン挿入中は安静度がベッド上のため,関節可動域訓練や筋力訓練,ベッド上で食事や整容動作が行えるように環境調整を実施.腰椎ドレーン抜去後,安静度が車いすまで変更となったため,車いす乗車訓練やポータブルトイレを使用したトイレ動作訓練を実施.加えて,Z+14日ADOCにて目標共有を実施.仕事復帰に関連して,「屋外移動」,「入浴」,「化粧」,そして趣味活動である「園芸」が項目として挙げられ,今後のOTの目標として,職場復帰・趣味活動の再開に向けた介入を行うことを共有した.
一般病棟でのリハビリ(Z+15日〜Z+32日):一般病棟に移動後に安静度は制限がなくなり,早期に歩行が自立となったため,坂道歩行や荷物運び・掃除動作・しゃがみ動作等の応用動作を中心に実施した.また,OTから主治医や看護師に向けてOT中に血圧変動が無い点や動作能力・耐久性として復職が可能である点の共有を行った.
【結果】Z+33日にADL・IADLともに自立,自宅退院となりOTの介入は終了した.退院前には職場の上長より復職の許可が出ており,主治医からも動脈解離の経過を追って判断することが説明された.半年経過した後も動脈瘤の悪化を認めず,半日勤務から復職を果たした.園芸活動は退院後早期に再開を果たした.
【考察】本症例は意識障害や運動麻痺等の後遺症は軽度であったが,SAHに対する治療や合併症予防により安静を強いられた状態であったが,ADOCによる目標共有を行うことで,その後目標達成に向けてOTを行うことができた.急性期患者の内訳としては,急性期病院から約半数が自宅退院すること,JCSⅠ桁の軽症者が挙げられている.一方,脳血管障害患者の作業療法実践内容はADLが中心で,在宅生活への介入の有効性を検討した報告は少ないとされている.そのため,急性期であっても退院後の生活を見据えた目標共有や介入を行うことが必要であると考えられた.
【症例紹介】60歳代,女性,病前は夫と二人暮らしにてADLは自立し,職業は当院にて介護ヘルパーをしていた.診断名:右椎骨脳底動脈解離性動脈瘤破裂によるSAH.現病歴:X年Y月Z日深夜,左大腿部痛あり,症状継続のため当院を受診.頭部CTにてSAHを認め入院となる.Z+1日にコイル塞栓術を施行.その後,鎮静下にてICUに入室.Z+2日バイタルサイン安定に伴い人工呼吸器抜管し,PT・OT・STが開始となる.初回OT評価(Z+2日):意識レベルはJCS;Ⅰ-1,GCS;E4V5M6,せん妄症状はなし.身体機能として著明な運動麻痺・感覚障害は認めず,寝返りやベッド上での食事・整容動作は自立していた.Needとして「70歳まで働きたい」と発言が聞かれていた.
【介入と経過】ICUでのリハビリ(Z+2日〜Z+14日):腰椎ドレーン挿入中は安静度がベッド上のため,関節可動域訓練や筋力訓練,ベッド上で食事や整容動作が行えるように環境調整を実施.腰椎ドレーン抜去後,安静度が車いすまで変更となったため,車いす乗車訓練やポータブルトイレを使用したトイレ動作訓練を実施.加えて,Z+14日ADOCにて目標共有を実施.仕事復帰に関連して,「屋外移動」,「入浴」,「化粧」,そして趣味活動である「園芸」が項目として挙げられ,今後のOTの目標として,職場復帰・趣味活動の再開に向けた介入を行うことを共有した.
一般病棟でのリハビリ(Z+15日〜Z+32日):一般病棟に移動後に安静度は制限がなくなり,早期に歩行が自立となったため,坂道歩行や荷物運び・掃除動作・しゃがみ動作等の応用動作を中心に実施した.また,OTから主治医や看護師に向けてOT中に血圧変動が無い点や動作能力・耐久性として復職が可能である点の共有を行った.
【結果】Z+33日にADL・IADLともに自立,自宅退院となりOTの介入は終了した.退院前には職場の上長より復職の許可が出ており,主治医からも動脈解離の経過を追って判断することが説明された.半年経過した後も動脈瘤の悪化を認めず,半日勤務から復職を果たした.園芸活動は退院後早期に再開を果たした.
【考察】本症例は意識障害や運動麻痺等の後遺症は軽度であったが,SAHに対する治療や合併症予防により安静を強いられた状態であったが,ADOCによる目標共有を行うことで,その後目標達成に向けてOTを行うことができた.急性期患者の内訳としては,急性期病院から約半数が自宅退院すること,JCSⅠ桁の軽症者が挙げられている.一方,脳血管障害患者の作業療法実践内容はADLが中心で,在宅生活への介入の有効性を検討した報告は少ないとされている.そのため,急性期であっても退院後の生活を見据えた目標共有や介入を行うことが必要であると考えられた.