[PA-4-2] ポスター:脳血管疾患等 4バーチャルリアリティ視聴が入院患者のストレス低減に与える効果に関する研究
【研究の目的】
入院患者は,入院生活という閉鎖的な環境によりストレスを受けやすく社会復帰に直接的あるいは間接的な影響が及んでいる.入院患者が抱えるストレスや不安は,森林浴,映画鑑賞,アニマルセラピー等で入院環境を一時的に忘れさせることで軽減できることが報告されている.近年,バーチャルリアリティ(Virtual Reality:VR)の技術が医療福祉の分野で新たな可能性を切り開く新しい技術として注目されてきている.VRコンテンツには幅広いジャンルがあるが,入院患者に擬似的に森林や海辺での散策,動物との触れあいなど外出気分を味わうことでストレスを軽減させることが可能であると考えられる.しかし,作業療法の分野においてVRコンテンツ視聴による仮想現実体験が入院患者の心理にどのように影響を与えるのか検証を行った例は無い.そこで本研究では,VRコンテンツ視聴による仮想現実体験が入院患者の心理に与える影響を明らかにし,入院患者のストレス軽減が可能かどうかを検討することを目的とする.
【方法】
VRコンテンツ視聴体験の前後比較試験を実施した.ストレス評価方法は主観的方法である心理検査と客観的方法である唾液アミラーゼ活性の測定を行った.心理検査はProfile of Mood States 2nd Edition(POMS),唾液アミラーゼ活性は二プロ唾液アミラーゼモニターを用いた.対象者は,脳卒中発症から6ヶ月未満,意識レベルJapan Coma Scale1 意識清明,年齢を60歳以上の入院患者26人(平均年齢72歳,男性15人,女性11人)とした.除外基準は言語障害,重度認知症患者,重度高次脳機能障害を有する者とした.方法はヘッドマウントディスプレイOculus Quest2を用いて対象者に3種類(森林,太宰府天満宮,水辺)の定点動画コンテンツを各2分の合計6分間視聴してもらいコンテンツ視聴前後のPOMSと唾液アミラーゼ活性を検査した.統計処理には解析ソフトウェアJSTATを使用し測定値の比較には,Wilcoxonの府号付順位検定を用いて有意水準5%未満を有意差ありとした.
【研究倫理】本研究は帝京大学福岡医療技術学部研究倫理委員会の承認の下に実施された(帝福倫理21-04).
【COI】本研究は帝京大学とサン情報株式会社との共同研究であり,コンテンツ制作はサン情報株式会社によるものである.
【結果】
VRコンテンツの視聴前後で唾液アミラーゼ活性およびPOMSを比較した.POMSの6つの因子の中で3つの因子において有意に減少した.緊張-不安(p=0.017),抑うつ-落ち込み(p=0.02),怒り-敵意(p=0.001).唾液アミラーゼ活性は,VR視聴前後の値において有意に減少した(p=0.0017).四分位範囲は視聴前56(26-83),視聴後は24(9-61)であった.
【考察】
VRコンテンツ視聴では,入院中の脳卒中患者に院内では非現実的な外出である町並みや森林の散策など仮想現実世界を通して擬似的に体験してもらった.POMSの結果は,VRコンテンツの視聴前よりも視聴後の緊張-不安,抑うつ−落ち込み,怒り–敵意などネガティブな思考が有意に減少した.またストレス評価指標である唾液アミラーゼ活性も有意に減少した.本研究の2つの結果よりVRコンテンツによる仮想現実の体験は脳卒中患者の入院生活における心理的ストレスの軽減効果があることが示唆された.
入院患者は,入院生活という閉鎖的な環境によりストレスを受けやすく社会復帰に直接的あるいは間接的な影響が及んでいる.入院患者が抱えるストレスや不安は,森林浴,映画鑑賞,アニマルセラピー等で入院環境を一時的に忘れさせることで軽減できることが報告されている.近年,バーチャルリアリティ(Virtual Reality:VR)の技術が医療福祉の分野で新たな可能性を切り開く新しい技術として注目されてきている.VRコンテンツには幅広いジャンルがあるが,入院患者に擬似的に森林や海辺での散策,動物との触れあいなど外出気分を味わうことでストレスを軽減させることが可能であると考えられる.しかし,作業療法の分野においてVRコンテンツ視聴による仮想現実体験が入院患者の心理にどのように影響を与えるのか検証を行った例は無い.そこで本研究では,VRコンテンツ視聴による仮想現実体験が入院患者の心理に与える影響を明らかにし,入院患者のストレス軽減が可能かどうかを検討することを目的とする.
【方法】
VRコンテンツ視聴体験の前後比較試験を実施した.ストレス評価方法は主観的方法である心理検査と客観的方法である唾液アミラーゼ活性の測定を行った.心理検査はProfile of Mood States 2nd Edition(POMS),唾液アミラーゼ活性は二プロ唾液アミラーゼモニターを用いた.対象者は,脳卒中発症から6ヶ月未満,意識レベルJapan Coma Scale1 意識清明,年齢を60歳以上の入院患者26人(平均年齢72歳,男性15人,女性11人)とした.除外基準は言語障害,重度認知症患者,重度高次脳機能障害を有する者とした.方法はヘッドマウントディスプレイOculus Quest2を用いて対象者に3種類(森林,太宰府天満宮,水辺)の定点動画コンテンツを各2分の合計6分間視聴してもらいコンテンツ視聴前後のPOMSと唾液アミラーゼ活性を検査した.統計処理には解析ソフトウェアJSTATを使用し測定値の比較には,Wilcoxonの府号付順位検定を用いて有意水準5%未満を有意差ありとした.
【研究倫理】本研究は帝京大学福岡医療技術学部研究倫理委員会の承認の下に実施された(帝福倫理21-04).
【COI】本研究は帝京大学とサン情報株式会社との共同研究であり,コンテンツ制作はサン情報株式会社によるものである.
【結果】
VRコンテンツの視聴前後で唾液アミラーゼ活性およびPOMSを比較した.POMSの6つの因子の中で3つの因子において有意に減少した.緊張-不安(p=0.017),抑うつ-落ち込み(p=0.02),怒り-敵意(p=0.001).唾液アミラーゼ活性は,VR視聴前後の値において有意に減少した(p=0.0017).四分位範囲は視聴前56(26-83),視聴後は24(9-61)であった.
【考察】
VRコンテンツ視聴では,入院中の脳卒中患者に院内では非現実的な外出である町並みや森林の散策など仮想現実世界を通して擬似的に体験してもらった.POMSの結果は,VRコンテンツの視聴前よりも視聴後の緊張-不安,抑うつ−落ち込み,怒り–敵意などネガティブな思考が有意に減少した.またストレス評価指標である唾液アミラーゼ活性も有意に減少した.本研究の2つの結果よりVRコンテンツによる仮想現実の体験は脳卒中患者の入院生活における心理的ストレスの軽減効果があることが示唆された.