第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-4] ポスター:脳血管疾患等 4

2022年9月16日(金) 15:00 〜 16:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PA-4-4] ポスター:脳血管疾患等 4当院における上肢用ロボット型運動訓練装置ReoGo-Jの運用~自主訓練に向けての試み~

西垣 美紅1原田 あゆ美1山本 未来1竹内 勇登1廣瀬 一成1 (1社会福祉法人こうほうえん 錦海リハビリテーション病院リハビリテーション技術部)

【はじめに】
近年では脳卒中片麻痺患者の上肢機能の改善に対しロボットを使用した上肢機能訓練が推奨されている1).当院では2020年5月からReoGo-Jを導入.導入後,当院入院中に使用した患者のうち,ReoGo-Jを自主訓練として利用できた対象者(以下,自立群)と訓練時間内に付き添いが必要であった対象者(以下,非自立群)を比較すると自立群の方が上肢の機能的評価の改善が優位であった.そこで上肢機能改善を目的に自主訓練への移行を推進するために必要な要素を後方視的に調査し,考察した.尚,本研究は当院倫理委員の承認を得ている.
【研究対象・方法】
当院のReoGo-J使用条件を満たし,2020年5月から2021年10月までの期間におけるReoGo-Jの利用人数は31名であった.ただし失語症を有する患者および研究に使用するデータが不十分であった患者は研究対象から除外し,計23名を対象とした.
自立群は15名,非自立群は8名.研究対象者のFugl-Meyer-Assessment上肢項目(以下FMA),FIM-motor(以下FIM-m),FIM-Cognitive(以下FIM-c)の入院時と退院時の評価結果を用いて調査を行った.
【当院での自主訓練への移行条件】
専用椅子上での座位バランスが独力で安定している,ReoGo-J訓練時間内の注意が持続できる,訓練画面の理解ができておりリモコン操作が独力で行える,ReoGo-J実施時に痛みが生じないこと
【研究結果】
FMAの入院時と退院時の得点の差が自立群は平均19.8点,非自立群は8.7点であった.入院時FIM-mは自立群の平均が56.9点,非自立群の平均が43.3点であり入院当初から自立群の方が運動機能面の自立度が高かった.入院時FIM-cは自立群の平均が32.4点,非自立群の平均が28.8点であり,入院当初から自立群の方が認知機能面の自立度が高かった.
【考察】
石垣らは,ロボット療法のシステマティックレビューにて上肢機能を改善させる要因は高強度の訓練であることを述べている2).自立群は通常訓練以外にも自主訓練としてReoGo-Jを実施し,上肢機能訓練の運動量や運動強度を担保できたことで上肢機能の改善に伴い,FMAの点数も改善したと考えられる,また入院時のFIM-mとFIM-cともに自立群の方がスコアが高い結果となった.ReoGo-Jを自主訓練へと移行する条件として,移動や移乗などの動作が自立していることと,機械を操作するために必要な認知機能が入院時より保たれていることが重要であると考えられた.今回の結果より,移動面は非自立だが認知機能は保たれている患者に対して,移動面は介助者が付き添いフォローすることで今後ReoGo-Jを自主訓練に移行できる対象者が増える可能性が示唆された.
【展望】
当院では,看護師や介護士が自主訓練の支援としてリハビリ時間外での病棟訓練を導入している.その内容の中にReoGo-Jを病棟訓練として取り入れることで,これまで自主訓練として活用が困難であった患者へも対象の幅を拡大することが可能と考える.そのため病棟との連携を図りReoGo-Jを病棟訓練で導入し自主訓練へ繋げていけるケースを増やしていきたい.
【参考文献】
1)日本脳卒中学会脳卒中合同ガイドライン委員会:脳卒中治療ガイドライン2021.協和企画,2021. 2)回復期の脳卒中患者における上肢用ロボット型運動訓練装置ReoGO-Jの有用性の検討~傾向スコアマッチングを利用した探索的比較研究~:石垣賢和ら,作業療法38, 575-584