[PA-4-6] ポスター:脳血管疾患等 4ReoGo®-Jを用いたLimb Activationによって左半側空間無視に対する即時効果を認めた脳梗塞の一例
【序論】脳卒中治療ガイドライン2021では,半側空間無視(以下,USN)へのリハビリテーション治療として視覚探索訓練,プリズム眼鏡などの有効性が報告されている.しかしこれら各治療法の優位性に関するコンセンサスは得られていない.今回,アテローム血栓性脳梗塞を発症し,重度の左USNと左片麻痺を呈した症例を担当する機会を得た.麻痺側上肢の使用によるUSNへのアプローチであるLimb Activation(以下,LA)を参考に,通常訓練に加えReoGo®-J(以下,RG)訓練を追加した結果,線分二等分試験の即時効果や食事・整容動作の介助量軽減等,新規の知見を得た為報告する.発表に際し,家族からの同意,院内の倫理委員会承認を得た.開示すべきCOIはない.
【症例】アテローム血栓性脳梗塞の診断を受けた80代女性.起床時に左片麻痺出現し第17病日当院回復期病棟へ転院.病前生活は独居でADL自立.
初期評価ではJCS:Ⅰ-2,BRS:左Ⅱ-Ⅱ-Ⅱ,FMA:左 2/66点,線分二等分試験(対座法・30㎝メジャー使用):探索困難,CBS:26/30点,MMSE:14/30点,FIM:23/126点(運動/認知:14/9点)上記状態であった.ADL状況は,重度左USNにより常時頸部右回旋し正中の追視も困難であった.また重度左片麻痺の影響で全般で重介助が必要であったため,座位で実施可能な食事・整容動作に着目し,正中位での食事・整容動作が自身で可能となる事を目標とし介入を開始した.
【方法】座位保持が安定し覚醒が維持できるようになった第42病日からRG訓練を開始した.通常治療に10分のRG訓練を追加し第71病日まで実施した.RG訓練前後には即時効果の評価として線分二等分試験を使用した.
【経過・結果(42病日~71病日)】
介入開始時には線分二等分試験探索困難であったがRG訓練5回目には実施前4cm右偏移,実施後正中(0cm)と即時的に正中探索が可能となった.中等度の無視は残存しているが,声掛けによる頸部左回旋,麻痺手探索が可能となり訓練中の注意持続性も改善を認めた.食事動作では右側からの刺激を遮断することと,食器をワンプレートに変更を行い,正中位の探索・自己摂取が可能となった.症例が病前大切にしていた整容動作も,鏡を注視し正中位での動作が可能となった.
最終評価では,JCS:Ⅰ-2,BRS:左Ⅱ-Ⅱ-Ⅱ,FMA:左 2/66点,線分二等分試験:0.3cm右偏移(最終の3回平均値),CBS:20/30点,MMSE:14/30点,FIM:34/126点(運動/認知20/14点),上記状態となった.随意性には変化がなかったが,左USNの一部改善により食事・整容動作の介助量が軽減した.
【考察】本症例は重度左USNや重度左片麻痺を呈しており,ADL全般が重介助となっていた.特に,症例が病前より大切にしてきた整容や化粧にも介助を要する状態であった.そこで正中位での整容動作の再獲得を目標とした.上肢に麻痺を呈した対象者においては,USNの改善と同時に麻痺の改善も目標としたLAが作業療法の手法の中では親和性が高いと考えられており,亜急性期および生活期において,USNの軽減に効果が示されている(Robertson I et al.1994).このことから通常訓練に加えRGを併用し,積極的な麻痺側上肢の使用を行うことで,麻痺側から入力された体性感覚刺激により空間的な注意が促進されたと考える.RGは重度から中等度の上肢運動麻痺治療に用いるが,本症例のような重度左USNを合併した症例へのLAとしての活用も可能であると考えられた.また,10分のRG訓練の即時効果後に通常訓練へ移行することは,無視側の空間が認識しやすい状態でのADL訓練が行えたとのではないかと考えた.
【結語】本介入では従来のLAと比較したRG訓練の優位性は検証できていない為,今後の症例蓄積が必要である.
【症例】アテローム血栓性脳梗塞の診断を受けた80代女性.起床時に左片麻痺出現し第17病日当院回復期病棟へ転院.病前生活は独居でADL自立.
初期評価ではJCS:Ⅰ-2,BRS:左Ⅱ-Ⅱ-Ⅱ,FMA:左 2/66点,線分二等分試験(対座法・30㎝メジャー使用):探索困難,CBS:26/30点,MMSE:14/30点,FIM:23/126点(運動/認知:14/9点)上記状態であった.ADL状況は,重度左USNにより常時頸部右回旋し正中の追視も困難であった.また重度左片麻痺の影響で全般で重介助が必要であったため,座位で実施可能な食事・整容動作に着目し,正中位での食事・整容動作が自身で可能となる事を目標とし介入を開始した.
【方法】座位保持が安定し覚醒が維持できるようになった第42病日からRG訓練を開始した.通常治療に10分のRG訓練を追加し第71病日まで実施した.RG訓練前後には即時効果の評価として線分二等分試験を使用した.
【経過・結果(42病日~71病日)】
介入開始時には線分二等分試験探索困難であったがRG訓練5回目には実施前4cm右偏移,実施後正中(0cm)と即時的に正中探索が可能となった.中等度の無視は残存しているが,声掛けによる頸部左回旋,麻痺手探索が可能となり訓練中の注意持続性も改善を認めた.食事動作では右側からの刺激を遮断することと,食器をワンプレートに変更を行い,正中位の探索・自己摂取が可能となった.症例が病前大切にしていた整容動作も,鏡を注視し正中位での動作が可能となった.
最終評価では,JCS:Ⅰ-2,BRS:左Ⅱ-Ⅱ-Ⅱ,FMA:左 2/66点,線分二等分試験:0.3cm右偏移(最終の3回平均値),CBS:20/30点,MMSE:14/30点,FIM:34/126点(運動/認知20/14点),上記状態となった.随意性には変化がなかったが,左USNの一部改善により食事・整容動作の介助量が軽減した.
【考察】本症例は重度左USNや重度左片麻痺を呈しており,ADL全般が重介助となっていた.特に,症例が病前より大切にしてきた整容や化粧にも介助を要する状態であった.そこで正中位での整容動作の再獲得を目標とした.上肢に麻痺を呈した対象者においては,USNの改善と同時に麻痺の改善も目標としたLAが作業療法の手法の中では親和性が高いと考えられており,亜急性期および生活期において,USNの軽減に効果が示されている(Robertson I et al.1994).このことから通常訓練に加えRGを併用し,積極的な麻痺側上肢の使用を行うことで,麻痺側から入力された体性感覚刺激により空間的な注意が促進されたと考える.RGは重度から中等度の上肢運動麻痺治療に用いるが,本症例のような重度左USNを合併した症例へのLAとしての活用も可能であると考えられた.また,10分のRG訓練の即時効果後に通常訓練へ移行することは,無視側の空間が認識しやすい状態でのADL訓練が行えたとのではないかと考えた.
【結語】本介入では従来のLAと比較したRG訓練の優位性は検証できていない為,今後の症例蓄積が必要である.