第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-4] ポスター:脳血管疾患等 4

2022年9月16日(金) 15:00 〜 16:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PA-4-7] ポスター:脳血管疾患等 4作業療法における上肢用ロボット運用方法探索のための文献研究

石塚 雄之助1岩崎 純平1中村 哲也1吉永 亮太1山田 孝2,3 (1医療法人社団玉栄会 東京天使病院,2社)日本人間作業モデル研究所,3東京保健医療専門職大学)

【はじめに】 2020年の診療報酬改定では,「運動量増加機器加算」が新設され.脳卒中治療ガイドライン2021では上肢機能障害に対するロボット(以下,上肢用ロボット)を用いた上肢機能訓練が推奨度Bと明記された.そのような中で,当院でも上肢用ロボットを導入することとなった.そこで日本国内の脳血管障害入院患者に対する上肢用ロボット運用方法探索のために文献研究を行った.
【方法】 1.検索方法:システマティックレビューおよびメタアナリシスのための優先的報告事項のフローチャート(卓興鋼,2011)に準拠し,医学中央雑誌Web版(以下,医中誌Webとする)を用いて2022年1月20日22時18分に文献検索を行った.データベースで取得できない文献はハンドサーチを用いた.検索キーワードは平均経験年数10年の作業療法士4名で協議し「ロボット」,「作業療法」,「上肢」とした.採択基準を①入院中の脳血管障害患者に対する報告,②運動量増加機器加算対象機器で能動型上肢用他動運動訓練装置を使用した報告とし,地方紙,紀要,会議録は対象から除外した.2.分析方法:分析方法は,他領域で用いられている先行研究(上城憲司,2016,山田孝,2020)を踏襲した.採択された文献を平均経験年数10年の作業療法士4名で確認し,各報告で使用されていた上肢用ロボットの製品名,機器設定,アウトカム,上肢用ロボット運用時間を要約したアブストラクトテーブルを作成し内容を整理した.機器設定については,製品の設定について記載があった先行研究(内山侑紀,2020,上野真,2020)を参考に内容を整理した.
【結果】 医中誌Webでの検索の結果,181件の論文が抽出された.地方誌10件,紀要7件,会議録111件を除外した結果,53件が選択された.さらに,運用方法等の記載が不明確であった39件を不適格と判断し除いた結果,9件が最終分析対象となった(堀翔平,2020,2021,庵本直矢,2018,2020,木村佳奈,2020,高橋佑弥,2020,埴岡大輝,2020,石垣賢和,2019,松嶌ありさ,2019).この9件について,内容を整理しアブストラクトテーブルを作成した.上肢用ロボットの製品名はReoGo-Jが8件,CoCoroeAR2が1件であった.機器設定は,ReoGo-Jを使用した8事例では,軌道アシストモード5件,自動運動モード5件,初動時負荷モード1件,不明1件であった.CoCoroeAR2の1事例では,2個のスイッチの高さは同一とし,免荷量は対象者が楽にリーチングできる程度に設定されていた.アウトカムはFMA9件,MAL(AOU)8件,MAL(QOM)7件,STEF3件,ARAT,FIM共に2件,BRS,ROM,MAS,JCS,COPM各1件であった.その内,CoCoroeAR2では,FMA,MAL(AOU),MAL(QOM)が使用されていた.上肢用ロボット運用時間はReoGo-J が20分と30分の報告が各1件,40分の報告が5件(内1件は30~40分),不明が1件となった.CoCoroeAR2では,リーチング訓練1分15秒と休憩1分30秒を6setで合計16分30秒となっていた.
【考察】 2022年2月現在,7機の製品が能動型上肢用他動運動訓練装置として運動量増加機器加算対象機器の認証機器となっているが,本研究で最終分析対象となった製品はReoGo-JとCoCoroeAR2の2機のみであった.これら2機については一定の運用がなされているが,その理由は先行研究(Kayoko Takahashi,2016,竹林崇,2017,庵本直矢,2018,Yumeko Amano,2020)によって有用性が示されているためであると考えられる.なお,その他の製品の運用については不明確であり,今後は検索条件を拡大し再検索を行うこと,製品ごとに知見を集積すること,成果の評価を考慮することの必要性が示唆された.