第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-5] ポスター:脳血管疾患等 5

2022年9月16日(金) 16:00 〜 17:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PA-5-2] ポスター:脳血管疾患等 5尿道カテーテル抜去後の排泄に対する活動向上訓練の効果

酒井 智也1増田 景太1寺田 結1池田 桃香1 (1湖山リハビリテーション病院リハビリテーション科)

【序論】 
 令和2年の医療保険改定により排尿自立支援加算の回復期リハビリテーション病棟での算定が可能となり,その要件である排尿ケアチームに専任の作業療法士(以下OT)または理学療法士(以下PT)の配置が課せられた.当院でも2021年度より排尿自立支援チームに回復期病棟配属のOTが参加することとなり本格的な関わりが開始した.回復期病棟では急性期病棟から尿道カテーテル(以下カテーテル)の持ち込みが多く,リハビリテーション(以下リハ)スタッフには抜去後のトイレ動作など排尿方法のアプローチの提案が求められる.当回復期ではOTやPTが実生活場面でトイレ動作訓練を実施している.今回,カテーテルを抜去した患者に対し,当日からトイレ動作訓練が実施され,動作の自立度向上のみでなくトイレ環境の認識向上や尿意再獲得にも効果がみられたため以下に報告する.
【対象】
 2021年8月~2022年1月脳血管疾患による当院入院時,カテーテル適応でその後抜去した患者10名.うち認知機能障害あり9名(7名はMMSE不可).なお,本研究は個人が特定できないよう配慮し,当院倫理委員会の承認を得ている.
【方法】
 カテーテル適応者に対し抜去前もしくは当日からOT,PTによりトイレ動作訓練を実施し,FIM,MMSEに加え,排泄ケアガイドブック における排泄行為過程よりトイレ,便器の認識と尿意を評価した.尿意に関しては「尿意の訴え」自立度基準 を用いて変化を確認した.
【結果】
 対象期間内にカテーテル抜去の割合は全留置者の60%であった.全員に対して抜去日からリハスタッフが実生活で使用するトイレでの排泄が促せた.さらに看護師や介護士に対してトイレへの移乗方法や座位介助をデモンストレーションし,病棟での排泄誘導実施につなげていた.抜去時FIM平均30.8点MMSE平均5.0点に対し最終評価時FIM平均48.4点MMSE平均9.4点.トイレ動作は抜去時9名が全介助であり,うち8名には2名以上の介助者を要していた.最終評価時は2名が自立,3名が部分介助となった.また全介助のままであった5名は介助者1名で実施できるようになった.「尿意訴え」自立度は4名が尿意完全自立,2名が日中自立,3名は尿意出現,1名は訴えなしであった.トイレ環境は全員が認識できるようになった.
【考察】
 脳血管疾患患者でカテーテル適応者は障害が重度で全身状態の管理が難しいケースが多い.長期間の留置で尿意が消失する場合もあり,抜去後も認知機能障害や高次脳機能障害が重度であると尿意の再獲得が難しい.今回,排尿ケアチームにOTが参加することで,カテーテル抜去時期をリハスタッフに周知しやすくなり,抜去前からトイレ動作訓練が実施出来た.それによりトイレ動作の自立度向上だけでなく尿意の再獲得にも効果がみられた.     
 認知機能や高次脳機能の障害では模擬練習等の動作訓練は汎化されにくく,実生活で使用するトイレでの動作訓練が環境や尿意の認識を引き出しやすい.これは参加の拡大に向けて活動の向上だけでなく,認知機能の賦活にも効果的だと考える.排泄という1日で回数が多い活動に対しては他職種協業が不可欠であり,重度の運動麻痺や認知機能障害,高次脳機能障害の患者に対する介助方法を実生活場面でリハスタッフから他職種に伝達できる意義も大きい.また大きな改善が見込めない場合にも,日常生活への認識の向上を促し,活動が本人の意思により行われることは重要である.今後も活動向上訓練の重要性をOTとして発信していきたい.