[PA-5-4] ポスター:脳血管疾患等 5回復期リハ病棟退院後の調理動作に影響する要因の検討(第2報)
【はじめに】当院作業療法部門では,在宅に退院した患者やその家族を対象として「退院後の生活に関するアンケート調査」(以下,退院後アンケート)を実施し,第55回日本作業療法士学会で調理動作に影響する要因についての第一報を報告した.今回さらに,脳卒中後片麻痺患者で利き手に障害がある対象者の調理動作に焦点を当て,今後の作業療法介入で必要な視点について検討したため報告する.
【対象と方法】本研究は2016年6月~2019年6月までに当院回復期リハ病棟から在宅復帰し,且つ当院入院中に調理練習を実施した患者のうち,調理を再開した利き手に障害がある患者41名のアンケート結果(選択式,自由記載式)を分析対象とした.得られたアンケートから退院後に調理を行っている頻度,使用している道具,困りごとなどについての傾向を確認した.また,対象者の上肢の麻痺の回復段階(Brunnstrom stage,以下,BRS),簡易上肢機能検査(simple test for evaluating hand function,以下,STEF),握力に関する情報をカルテより抽出し,調理の頻度との相関係数を求めて関連性を検討した.なお,本調査は,当院の倫理委員会での承認を受け,アンケートの回答をもって同意を得た.
【結果】上肢BRSはⅢ1名,Ⅳ6名,Ⅴ5名,Ⅵ29名であった.手指BRSはⅢ2名,Ⅳ1名,Ⅴ8名,Ⅵ30名であった.麻痺側のSTEFの平均値は81.2±26.1点,麻痺側握力の平均値は16.4±9.0㎏であった.調理の頻度は毎日が23名(56%),週4~6回が9名(22%),週2~3回が6名(15%),週1回が3名(7%)であった.調理の頻度とBRS,STEF,握力間で相関は見られなかった.使用している道具に関しては,病前と同じものを使用している人がほとんどであった.困りごとに関しては,15名から「包丁操作が難しい」「箸が使いづらい」「フライパンが持てない」等の意見が聞かれた.
【考察】第一報では,利き手の障害の有無や特性による,調理動作への影響について検討を行い,頻度や実施内容への明らかな影響はみられなかった.本研究はさらに,BRSや握力,STEFの結果をもとに,利き手の障害の特性の調理動作への影響を分析した.本研究の結果では,当院退院後に調理を再開した人の中で半数以上が,特別な調理機器を使用せず毎日調理を行っていることが分かった.しかし,調理の頻度とBRS,STEF,握力間で相関関係が認められなかったため,退院後の調理の再開や頻度は,上肢の機能障害よりも患者の意思や必要性,家庭内での役割,環境等による影響が大きいという,第一報の結果を支持する内容となっていた.以上のことから,回復期リハ病棟では患者の役割や必要性,環境を考慮した上で調理練習を行う必要性が示唆された.今回の対象者はBRSⅣ以上が9割となっており,比較的機能障害が軽度であったため,調理の頻度が高いことも考えられた.しかし,約40%の人から,包丁や箸の操作が難しいなどの困難さの訴えが聞かれていたため,それらの意見も踏まえた練習を行っていくことが必要であると考えられた.また,今後は上肢機能が重度に障害されている患者の片手や両手での調理についても検討していきたい.
【対象と方法】本研究は2016年6月~2019年6月までに当院回復期リハ病棟から在宅復帰し,且つ当院入院中に調理練習を実施した患者のうち,調理を再開した利き手に障害がある患者41名のアンケート結果(選択式,自由記載式)を分析対象とした.得られたアンケートから退院後に調理を行っている頻度,使用している道具,困りごとなどについての傾向を確認した.また,対象者の上肢の麻痺の回復段階(Brunnstrom stage,以下,BRS),簡易上肢機能検査(simple test for evaluating hand function,以下,STEF),握力に関する情報をカルテより抽出し,調理の頻度との相関係数を求めて関連性を検討した.なお,本調査は,当院の倫理委員会での承認を受け,アンケートの回答をもって同意を得た.
【結果】上肢BRSはⅢ1名,Ⅳ6名,Ⅴ5名,Ⅵ29名であった.手指BRSはⅢ2名,Ⅳ1名,Ⅴ8名,Ⅵ30名であった.麻痺側のSTEFの平均値は81.2±26.1点,麻痺側握力の平均値は16.4±9.0㎏であった.調理の頻度は毎日が23名(56%),週4~6回が9名(22%),週2~3回が6名(15%),週1回が3名(7%)であった.調理の頻度とBRS,STEF,握力間で相関は見られなかった.使用している道具に関しては,病前と同じものを使用している人がほとんどであった.困りごとに関しては,15名から「包丁操作が難しい」「箸が使いづらい」「フライパンが持てない」等の意見が聞かれた.
【考察】第一報では,利き手の障害の有無や特性による,調理動作への影響について検討を行い,頻度や実施内容への明らかな影響はみられなかった.本研究はさらに,BRSや握力,STEFの結果をもとに,利き手の障害の特性の調理動作への影響を分析した.本研究の結果では,当院退院後に調理を再開した人の中で半数以上が,特別な調理機器を使用せず毎日調理を行っていることが分かった.しかし,調理の頻度とBRS,STEF,握力間で相関関係が認められなかったため,退院後の調理の再開や頻度は,上肢の機能障害よりも患者の意思や必要性,家庭内での役割,環境等による影響が大きいという,第一報の結果を支持する内容となっていた.以上のことから,回復期リハ病棟では患者の役割や必要性,環境を考慮した上で調理練習を行う必要性が示唆された.今回の対象者はBRSⅣ以上が9割となっており,比較的機能障害が軽度であったため,調理の頻度が高いことも考えられた.しかし,約40%の人から,包丁や箸の操作が難しいなどの困難さの訴えが聞かれていたため,それらの意見も踏まえた練習を行っていくことが必要であると考えられた.また,今後は上肢機能が重度に障害されている患者の片手や両手での調理についても検討していきたい.