第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-5] ポスター:脳血管疾患等 5

2022年9月16日(金) 16:00 〜 17:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PA-5-5] ポスター:脳血管疾患等 5脳卒中・片麻痺患者に対する自転車を用いたアプローチに関する文献レビュー

関川 陽平1駒崎 かんな1國重 雅史1 (1文京学院大学保健医療技術学部作業療法学科)

【はじめに】
 リハビリテーション分野では,脳卒中患者を対象に自転車を模したエルゴメーターと呼ばれる機器を用いた運動療法が行われ,心肺機能の向上や,下肢筋力の向上に寄与するとして,各施設に設置されている.特に,脳卒中・片麻痺患者は,麻痺のために移動や活動が制限されやすい.自転車の利用目的は,本来移動手段やサイクリングといった活動である.個人の活動範囲の拡大や趣味活動の充実を図る1つの方法で,身体機能だけなく,個人の生活の質に関与していることが報告されている(L. Leyland et al.,2019).
 自転車を用いたアプローチが脳卒中・片麻痺患者の身体機能面の向上には繋がるが,活動や参加,精神機能への効果に関した視点での検討は十分には行われていない可能性がある.そこで本研究では,文献レビューを通して脳卒中・片麻痺患者における自転車を用いたアプローチに関する研究動向について把握することとした.
【方法】
 文献検索は,PubMedを用いて2021年2月8日に実施した.検索語は,『「stroke」or「hemiplegia」』and『「bicycle」or「bike」』とした.検索対象期間は,過去5年の原著とし,重複しているもの,対象者が脳卒中でないものは除外した.文献を精読し,自転車を用いたアプローチについて分類した.
【結果】
 検索の結果,17件を研究対象として選定した.自転車を用いたアプローチの分類として身体機能向上である「下肢・歩行・心肺・バランス機能の向上」に効果があるとした報告が11件,「トレーニングプラン」の有効性を検討した報告が2件,自転車の実走や,運動の分析など「その他」が4件であった.すべての報告の中で自転車を実走に用いている報告が1件あった.
【考察】
 脳卒中・片麻痺患者の自転車を用いたアプローチとして,下肢・歩行・心肺・バランス機能の向上など主に身体機能向上に役立てられていることが分かった.また,エルゴメーターでの神経筋電気刺激装置の併用や心拍数管理によるインターバルトレーニングによって,効率的な身体機能向上が得られることが分かった.一方で,精神機能や活動レベルといった報告は見当たらないものの,片麻痺患者の電動自転車の自走について報告し,活動レベルの向上を示唆する報告があった.
 報告の多くは,自転車はエルゴメーターなど固定された機器を用いており,実走によって,ある効果が得られる報告は見当たらなかった.固定の自転車を用いていた理由として,神経筋電気刺激装置や電気的アシストの使用,筋電データを採取するためと推察される.
 電動アシスト自転車に関しては,ペダリングをアシストすることにより脳卒中・片麻痺患者の実走に適している可能性が報告されており,電動アシスト自転車を用いることで脳卒中・片麻痺患者の移動方法の獲得や活動レベルの向上に寄与する可能性が見いだされた.
 脳卒中・片麻痺患者の自転車実走の研究報告が少ないことが分かったが,理由として,操作面でのハンドリングや運動面のペダリングに困難さがあることが事故や怪我のリスクを高め,導入について敬遠されている可能性が考えられる.
 今後,自転車実走による活動レベルの変化や精神面の変化についての報告が期待される.