第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-5] ポスター:脳血管疾患等 5

2022年9月16日(金) 16:00 〜 17:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PA-5-7] ポスター:脳血管疾患等 5急性期脳卒中患者に対する積極的作業療法が効果的な患者特性の検証

長山 洋史1山川 栞2友利 幸之介3池田 公平1新美 彩花4,5 (1神奈川県立保健福祉大学作業療法学専攻,2衣笠病院リハビリテーション科,3東京工科大学作業療法学専攻,4横浜市立大学附属病院リハビリテーション部,5神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科)

【序論】
 急性期の脳卒中患者に対するリハビリテーション(以下,リハ)は,早期介入や介入時間が多い方がADL能力の改善につながったとの報告がある(Yagi M et al.,2017).我々は,急性期からの積極的な作業療法(以下,OT)により,ADLの向上や自宅復帰率の向上につながるのではないかと仮説を立て検証し,限定的ではあるが効果を認めている(長山ら,2021).しかしながら,どのような患者に対して効果的であるかについては依然不明瞭である(Tong Y et al.,2019).したがって,本研究の目的は,積極的なOTが効果的な患者特性についてサブグループ解析として交互作用を確認し検証することとした.
【方法】
 本研究のデザインは,後方視的コホート研究とした.解析対象者は,脳卒中患者10270名であった.(日本リハビリテーション・データベース協議会より提供). 適合基準としては,脳卒中の初発患者で,発症前Rankin Scaleが0または1,発症前居住が自宅などとした. 本研究における積極的OT介入群とは,総介入時間/在院日数において,PT<OTを積極的OT介入群(Active OT群:以下AOT群)とし,PT>OTを非積極的OT介入群(Non-Active Occupational Therapy群:以下Non-AOT群)とした.解析方法は,まず,欠損値についてアウトカムを含む14変数を用いて(年齢,機能的自立度評価法(Functional Independence Measure:以下,FIMなど)多重代入法による20のデータセット作成した.次に,20のデータセットそれぞれにおいて,アウトカムと割付に影響を与える19変数にて,ロジスティック回帰分析にてPropensity score(PS)を算出した.その後,それぞれのデータセットにおいて傾向スコア逆確率で重みつけ(Inverse Probability Treatment Weighting:以下, IPTW)しRubin’s ruleにて,20セットのデータセットそれぞれで効果を推定し統合した(Rubin DB et.al.1991).患者特性の確認として,入院時のFIMの変化量について,それぞれの変数を従属変数とした重回帰分析にて交互作用を検討した.サブグループとしては,性別,年齢,意識レベル,National Institutes of Health Stroke Scale (以下,NIHSS)のスコア,FIMスコア,失語症の重症度,半側無視の重症度などとした.なお,本研究は神奈川県立保健福祉大学の倫理審査委員会の承認を得て実施されている(20-34-005).
【結果】
 本研究の最終的な解析対象者は3501名であった.IPTW後,ベースラインの値はほぼ同等であり,両群とも均等な集団であることが確認できた.交互作用としては,性別,年齢では認められなかった.意識レベル, NIHSSのスコア,FIMスコア,失語症の重症度,半側無視の重症度で交互作用が認められ,概ね軽度よりも重症であったほうがFIMの変化量が大きい結果であった(P<0.05).
【結論】
 急性期脳卒中患者に対する積極的作業療法が効果的な患者特性を探索するためサブグループにて交互作用を検討した.その結果,入院時に,意識レベルが低い患者,ADLの介護度が高い患者,失語症や半側無視の重症な患者に積極的作業療法が効果的であることが示唆された.今後は,単一の項目だけでなく,全体像から積極的な作業療法が効果的な患者特性の検討などが必要である.なお,本報告の内容・結論は協議会の見解ではなく,発表者の見解である.