[PA-5-9] ポスター:脳血管疾患等 5重度運動麻痺症例の急性期にミラーセラピー導入で麻痺側手指の使用頻度に影響を与える
【はじめに】
我が国での要介護疾患第2位は脳卒中であり, 活動や参加の再獲得には時間を要するため, 急性期作業療法では発症早期から麻痺側上肢を活動や参加へ促すための介入が必要である. 麻痺側上肢を活動や参加へ促す方法として, ミラーセラピーは物品が比較的安価に入手可能な点や, 意識障害, 著明な高次脳機能障害を呈さなければ, 手指機能向上に対して適応性がある(平上2011). ミラーセラピーの報告は主に, 回復期や慢性期で行われ, 急性期では報告が限られているため, 重度運動麻痺例の急性期にミラーセラピーの導入で, 麻痺側手指が活動や参加へ与える影響について検証が必要であると考える.
【目的】
重度運動麻痺症例の急性期にて, 通常作業療法にミラーセラピーを導入した介入について, 麻痺側手指の使用頻度と動作習熟度の観点から検証する. 本報告は対象者から同意を得た.
【症例】
脳梗塞で入院した80歳代男性. 発症から2病日目に作業療法を開始した. 左上肢に重度運動麻痺を認め, MMSE-改定日本版は24/30点, 著明な高次脳機能障害は認めなかった.
【研究デザイン】
本研究デザインはシングルケースデザインABA法である.
【方法】
介入プロトコルは, ベースラインを測定し, 1) 通常作業療法にミラーセラピーを導入した介入(A期). 2) 通常作業療法(B期)を実施した. A期は通常作業療法を60分, ミラーセラピーを用いた手指機能練習を20分, 週5日実施した. B期は通常作業療法のみを60分, 週5日実施した. 通常作業療法の主な内容は, 上肢機能練習や電気刺激療法, ADL練習を実施した. ミラーボックスは先行研究(Yavuzer G 2008, Dohle C 2009, 平上2012)を参考に作成した. ミラーセラピー導入では, 非麻痺側手指の動きを鏡に映し, 麻痺側手指を可能な限り一致させて動かすように教示した. ミラーボックス内の課題は, 手指総合屈曲/総合伸展を行い, 機能改善に合わせて手関節掌屈/背屈を追加して実施した.
麻痺側手指の使用頻度と動作習熟度の評価に, Motor Activity Log(MAL)のAmount of Use(AOU), Quality of Movement(QOM)を測定し, 麻痺側上肢の主観的な回復指標にGlobal Rating of Change Scale(GRC)を測定し, 上肢運動麻痺の評価に, Fugl-Meyer Assessment(FMA)を各週で測定した.
【結果】
MAL(AOU)は0/5点→0.22/5点(A1期)→0.3/5点(B期)→0.8/5点(A2期)となった.
MAL(QOM)は0/5点→0.22/5点(A1期)→0.5/5点(B期)→1/5点(A2期)となった.
GRCは7/7点→3/7点(A1期)→3/7(B期)→3/7(A2期)となった.
FMAは4/66点→4/66点(A1期)→11/66点(B期)→26/66点(A2期)となった.
【考察】
重度運動麻痺症例の急性期にミラーセラピーを導入し, 麻痺側手指の使用頻度と動作習熟度の改善効果を検証したところ, MALのAOUは, B期からA2期にかけて, 慢性期のMCIDである0.5点(Johanna H 1999)を超える上昇を認めた. ミラーセラピーの導入で, 麻痺側上肢へ注意を向けやすくなることが示唆されている(Dohle C 2009). 本症例もミラーセラピー導入で, 麻痺側手指に注意を向けることが増加し, 病棟内ADLの活動や参加場面にて, 麻痺側手指の使用頻度向上への一助になったと考察する. 報告の限界として, ミラーセラピー導入時は介入時間の拡大に伴い, AOU向上に影響を与えたことが挙げられる. また, 症例が1例であるため, このような現象が他患で得られるか検証が必要である.
我が国での要介護疾患第2位は脳卒中であり, 活動や参加の再獲得には時間を要するため, 急性期作業療法では発症早期から麻痺側上肢を活動や参加へ促すための介入が必要である. 麻痺側上肢を活動や参加へ促す方法として, ミラーセラピーは物品が比較的安価に入手可能な点や, 意識障害, 著明な高次脳機能障害を呈さなければ, 手指機能向上に対して適応性がある(平上2011). ミラーセラピーの報告は主に, 回復期や慢性期で行われ, 急性期では報告が限られているため, 重度運動麻痺例の急性期にミラーセラピーの導入で, 麻痺側手指が活動や参加へ与える影響について検証が必要であると考える.
【目的】
重度運動麻痺症例の急性期にて, 通常作業療法にミラーセラピーを導入した介入について, 麻痺側手指の使用頻度と動作習熟度の観点から検証する. 本報告は対象者から同意を得た.
【症例】
脳梗塞で入院した80歳代男性. 発症から2病日目に作業療法を開始した. 左上肢に重度運動麻痺を認め, MMSE-改定日本版は24/30点, 著明な高次脳機能障害は認めなかった.
【研究デザイン】
本研究デザインはシングルケースデザインABA法である.
【方法】
介入プロトコルは, ベースラインを測定し, 1) 通常作業療法にミラーセラピーを導入した介入(A期). 2) 通常作業療法(B期)を実施した. A期は通常作業療法を60分, ミラーセラピーを用いた手指機能練習を20分, 週5日実施した. B期は通常作業療法のみを60分, 週5日実施した. 通常作業療法の主な内容は, 上肢機能練習や電気刺激療法, ADL練習を実施した. ミラーボックスは先行研究(Yavuzer G 2008, Dohle C 2009, 平上2012)を参考に作成した. ミラーセラピー導入では, 非麻痺側手指の動きを鏡に映し, 麻痺側手指を可能な限り一致させて動かすように教示した. ミラーボックス内の課題は, 手指総合屈曲/総合伸展を行い, 機能改善に合わせて手関節掌屈/背屈を追加して実施した.
麻痺側手指の使用頻度と動作習熟度の評価に, Motor Activity Log(MAL)のAmount of Use(AOU), Quality of Movement(QOM)を測定し, 麻痺側上肢の主観的な回復指標にGlobal Rating of Change Scale(GRC)を測定し, 上肢運動麻痺の評価に, Fugl-Meyer Assessment(FMA)を各週で測定した.
【結果】
MAL(AOU)は0/5点→0.22/5点(A1期)→0.3/5点(B期)→0.8/5点(A2期)となった.
MAL(QOM)は0/5点→0.22/5点(A1期)→0.5/5点(B期)→1/5点(A2期)となった.
GRCは7/7点→3/7点(A1期)→3/7(B期)→3/7(A2期)となった.
FMAは4/66点→4/66点(A1期)→11/66点(B期)→26/66点(A2期)となった.
【考察】
重度運動麻痺症例の急性期にミラーセラピーを導入し, 麻痺側手指の使用頻度と動作習熟度の改善効果を検証したところ, MALのAOUは, B期からA2期にかけて, 慢性期のMCIDである0.5点(Johanna H 1999)を超える上昇を認めた. ミラーセラピーの導入で, 麻痺側上肢へ注意を向けやすくなることが示唆されている(Dohle C 2009). 本症例もミラーセラピー導入で, 麻痺側手指に注意を向けることが増加し, 病棟内ADLの活動や参加場面にて, 麻痺側手指の使用頻度向上への一助になったと考察する. 報告の限界として, ミラーセラピー導入時は介入時間の拡大に伴い, AOU向上に影響を与えたことが挙げられる. また, 症例が1例であるため, このような現象が他患で得られるか検証が必要である.