[PA-6-1] ポスター:脳血管疾患等 6急性期脳卒中患者に対し,体幹を固定した修正CI療法を行った一事例
【序論】急性期脳卒中患者に対し,促通反復療法(以下RFE)やCI療法のコンセプトである課題指向型訓練(以下TOT)を実施したところ,一定の成果を得た.しかし,麻痺手使用時の体幹の代償動作が残存し,動作速度及び巧緻性の低下,さらには実生活での麻痺手の不使用を認めていた.本発表では症例に対し,体幹を固定した修正CI療法を行った結果を以下に報告する.尚,本報告は症例に同意を得ている.
【事例紹介】60代男性.利き手は右手.X年Y月右上下肢に脱力を認め,翌日当院受診.左被殻から放線冠にかけてBAD型のラクナ梗塞を認め入院.2病日目に片麻痺の増悪あり.同日OT,PT,STが開始となった.社会背景は父親と2人暮らし.病前のADLは家事全般や車の運転を含め自立されていた.
【初期評価】2病日目,JCSⅠ-1.コミュニケーションは可能.認知,高次脳機能障害は認めず.BRS上肢Ⅳ-手指Ⅲ-下肢Ⅳ.筋緊張はModified Ashworth Scale肘屈筋群0,手関節屈筋群0.Fugl MeyerAssessment(以下FMA)肩肘前腕23点,手関節2点,手指3点,協調性速度0点,総計28/66点.握力右12.7kg,左46.9kg.感覚機能は正常.基本動作は端座位まで自立,起立から歩行までは部分介助.食事は左手でスプーンを使用し,排泄は部分介助を要した.症例からは利き手での箸や書字の再獲得希望が聞かれた.
【介入計画・経過】介入初期は上肢機能向上,ADL拡大を目標に1回20〜40分,週6日間,電気刺激を併用しながら,RFEや箸や書字の再獲得に向けたTOT,歩行やトイレ動作練習を中心に実施した.31病日には歩行での院内ADLが自立となり,上肢機能においてもFMA総計59/66点,握力右21.9kgと機能面に向上を認めた.しかし上肢機能検査(以下STEF)は左100点,右57点に留まり,前方リーチでは肩関節外転,肘関節屈曲,前腕回内位でSTEF盤に被さるように体幹屈曲が著明となり,動作速度や巧緻性に低下を認めた.また症例より「右手を速く動かせない,生活場面でも無意識に左手を使ってしまう」と訴えが聞かれ,Motor Activity Log(以下MAL)では,Amount Of Use(以下AOU)1.55,Quality Of Movement(以下QOM)2.23と使用頻度及び使用感の低下を認めた.そのため38病日より介入時間を40〜60分とし,本人同意のもと,体幹を固定した修正CI療法を2週間行った.内容としてはOT介入時のみ非麻痺手をタオルで拘束し,shaping実施時には体幹を椅子に紐で固定した上で,肩甲骨のプロトラクションや肘関節の伸展を促しながらペグ等の課題を実施した.Transfer Package(以下TP)では,ADOC-Hより麻痺手での箸の使用や髭剃り等,使用場面を設定し,適宜Task Practiceで使用感を確認しながら毎日簡単な日記をつけてもらった.また,自主訓練では書字練習を行ってもらった.
【結果】52病日,FMA総計66/66点,握力右25.7kg,STEF右87点と体幹の代償は軽減し,動作速度及び巧緻性に向上を認めた.また使用頻度や使用感においてもAOU2.73,QOM2.91と向上を認め,箸操作や書字においても実生活において可能となった.その後56病日に回復期病院へ転院となった.
【考察】本症例では,麻痺手使用時の体幹の代償が,麻痺手の動作速度や巧緻性の低下に繋がり,麻痺手の使用感低下が使用頻度の低下に繋がっていると考えた.Bangら(2018)は急性期脳卒中患者において体幹を固定した修正CI療法は,修正CI療法単独よりも,麻痺手の機能や使用頻度が改善したことを報告している.本介入においても非麻痺手をタオルで拘束し,麻痺手を強制使用する場面を作り,体幹を固定しながらTOTやTPを行った.結果,上肢機能が改善し,麻痺手の使用感が向上したことで使用頻度向上に繋がったと考える.
【事例紹介】60代男性.利き手は右手.X年Y月右上下肢に脱力を認め,翌日当院受診.左被殻から放線冠にかけてBAD型のラクナ梗塞を認め入院.2病日目に片麻痺の増悪あり.同日OT,PT,STが開始となった.社会背景は父親と2人暮らし.病前のADLは家事全般や車の運転を含め自立されていた.
【初期評価】2病日目,JCSⅠ-1.コミュニケーションは可能.認知,高次脳機能障害は認めず.BRS上肢Ⅳ-手指Ⅲ-下肢Ⅳ.筋緊張はModified Ashworth Scale肘屈筋群0,手関節屈筋群0.Fugl MeyerAssessment(以下FMA)肩肘前腕23点,手関節2点,手指3点,協調性速度0点,総計28/66点.握力右12.7kg,左46.9kg.感覚機能は正常.基本動作は端座位まで自立,起立から歩行までは部分介助.食事は左手でスプーンを使用し,排泄は部分介助を要した.症例からは利き手での箸や書字の再獲得希望が聞かれた.
【介入計画・経過】介入初期は上肢機能向上,ADL拡大を目標に1回20〜40分,週6日間,電気刺激を併用しながら,RFEや箸や書字の再獲得に向けたTOT,歩行やトイレ動作練習を中心に実施した.31病日には歩行での院内ADLが自立となり,上肢機能においてもFMA総計59/66点,握力右21.9kgと機能面に向上を認めた.しかし上肢機能検査(以下STEF)は左100点,右57点に留まり,前方リーチでは肩関節外転,肘関節屈曲,前腕回内位でSTEF盤に被さるように体幹屈曲が著明となり,動作速度や巧緻性に低下を認めた.また症例より「右手を速く動かせない,生活場面でも無意識に左手を使ってしまう」と訴えが聞かれ,Motor Activity Log(以下MAL)では,Amount Of Use(以下AOU)1.55,Quality Of Movement(以下QOM)2.23と使用頻度及び使用感の低下を認めた.そのため38病日より介入時間を40〜60分とし,本人同意のもと,体幹を固定した修正CI療法を2週間行った.内容としてはOT介入時のみ非麻痺手をタオルで拘束し,shaping実施時には体幹を椅子に紐で固定した上で,肩甲骨のプロトラクションや肘関節の伸展を促しながらペグ等の課題を実施した.Transfer Package(以下TP)では,ADOC-Hより麻痺手での箸の使用や髭剃り等,使用場面を設定し,適宜Task Practiceで使用感を確認しながら毎日簡単な日記をつけてもらった.また,自主訓練では書字練習を行ってもらった.
【結果】52病日,FMA総計66/66点,握力右25.7kg,STEF右87点と体幹の代償は軽減し,動作速度及び巧緻性に向上を認めた.また使用頻度や使用感においてもAOU2.73,QOM2.91と向上を認め,箸操作や書字においても実生活において可能となった.その後56病日に回復期病院へ転院となった.
【考察】本症例では,麻痺手使用時の体幹の代償が,麻痺手の動作速度や巧緻性の低下に繋がり,麻痺手の使用感低下が使用頻度の低下に繋がっていると考えた.Bangら(2018)は急性期脳卒中患者において体幹を固定した修正CI療法は,修正CI療法単独よりも,麻痺手の機能や使用頻度が改善したことを報告している.本介入においても非麻痺手をタオルで拘束し,麻痺手を強制使用する場面を作り,体幹を固定しながらTOTやTPを行った.結果,上肢機能が改善し,麻痺手の使用感が向上したことで使用頻度向上に繋がったと考える.