[PA-6-6] ポスター:脳血管疾患等 6能力と自己認識に乖離があるクライアントに対し意図的関係モデルの治療的モードを用い関わった事例
【はじめに】今回,機能改善はみられていたが,生活場面にて汎化が出来ていないことから“できない”“改善されていない”と否定的な感情を抱えていたクライアント(以下CL)に対し,“できる”を認識するために意図的関係モデル(以下IRM)を用い関わった.本報告の目的は,作業の難易度に合わせて6つの治療的モードを使い分けることが有効かを示唆することである.尚,今回の報告に際しご本人より同意は得ている.
【事例紹介】A氏60歳代女性.病前は,アパートの2階にて独居生活をしていたが,X年Y-1月に自宅で転倒し,左大腿骨頸部骨折にて観血的骨接合術を施行.術後,右脳幹梗塞を発症し,左不全麻痺が出現し,リハ目的で当院にX年Y月に当院入院.病前より,慢性腎臓病のため週3回人工透析で通院を要していた.
【作業療法評価】Br.stage(左)上肢Ⅳ 手指Ⅲ 下肢Ⅲ,MAL(AOU/QOM):0.5/0.5点で日常生活では左手の使用はほとんどない.面接では,「早く家に帰りたい」「一人でトイレへ行きたい」と意志が強くリハには積極的であった.日を追うごとに機能改善はみられたが,小さな変化への気づきが乏しく「全然良くならない」と否定的な発言も聞かれたため,CLのやりたい課題に対して治療的モードを使い分け関わることにした.
【介入】CLにとって難易度が高い課題ではあるが,一人でトイレへ行くことを目標に,車椅子への移乗・車椅子自走・トイレ動作の自立を段階的に獲得することを目指した.介入当初は「全然上手く漕げない」「歩く練習をたくさんしたい」と焦りの発言も聞かれたため,『共感』を用いながら関係性の構築を図った.『協業』を用い意識的に話し合う機会を何度も設け,段階的に行う必要性や手順,リスク管理等を『指示』と『問題解決』で関わったところ,OTRのフィードバックに対して,受け入れる様子がみられた.次第に「今日は少しぶつかっちゃったけど速くなったでしょ!」と前向きな発言が聞かれるようになった.また,CLにとって難易度の高い課題に取り組み,ショートステップでできることを認識したことで,自ら日常生活の中でできる作業に気づくことができるようになった.
【結果】Br.stage(左)上肢Ⅴ 手指Ⅴ 下肢Ⅳ,MAL(AOU/QOM):1.8/2.0点で病衣の紐を結ぶ・おしぼりの袋を開けるなど自ら出来る作業を見つけ,日常生活上で左手を使う場面が増えた.CLの希望であった“一人でトイレへ行く”ことも達成までに2ヶ月要したが,車椅子自走で可能となった.歩行練習も進んでいたため,「杖で食堂まで歩きたい」と次のステップへの希望も聞かれるようになった.
【考察】IRMは,『擁護』『協業』『共感』『励まし』『指示』『問題解決』という6つの治療的モードを提示しており,作業療法での出来事や対人関係の出来事が雰囲気の転換を求めることもある.今回,能力と自己認識に乖離があるCLに対し,本人がやりたい作業に焦点を当て関わった.難易度の高い作業ではあったが,『共感』を用いCLとの関係性構築を図りつつ,工程に分けスモールステップで目標を立て何度も話し合いをしながら,『協業』『指示』『問題解決』を用い関わったことが本事例には有効であった.また,難易度の高い作業を経験したことで,難易度の低い作業への汎化もスムーズに行えたと考える.今回の結果より,難易度の低い作業はできることに対する気づきを与えること,難易度の高い作業は協業しながら相互に問題解決するプロセスが,介入効果を高めることが示唆された.
【事例紹介】A氏60歳代女性.病前は,アパートの2階にて独居生活をしていたが,X年Y-1月に自宅で転倒し,左大腿骨頸部骨折にて観血的骨接合術を施行.術後,右脳幹梗塞を発症し,左不全麻痺が出現し,リハ目的で当院にX年Y月に当院入院.病前より,慢性腎臓病のため週3回人工透析で通院を要していた.
【作業療法評価】Br.stage(左)上肢Ⅳ 手指Ⅲ 下肢Ⅲ,MAL(AOU/QOM):0.5/0.5点で日常生活では左手の使用はほとんどない.面接では,「早く家に帰りたい」「一人でトイレへ行きたい」と意志が強くリハには積極的であった.日を追うごとに機能改善はみられたが,小さな変化への気づきが乏しく「全然良くならない」と否定的な発言も聞かれたため,CLのやりたい課題に対して治療的モードを使い分け関わることにした.
【介入】CLにとって難易度が高い課題ではあるが,一人でトイレへ行くことを目標に,車椅子への移乗・車椅子自走・トイレ動作の自立を段階的に獲得することを目指した.介入当初は「全然上手く漕げない」「歩く練習をたくさんしたい」と焦りの発言も聞かれたため,『共感』を用いながら関係性の構築を図った.『協業』を用い意識的に話し合う機会を何度も設け,段階的に行う必要性や手順,リスク管理等を『指示』と『問題解決』で関わったところ,OTRのフィードバックに対して,受け入れる様子がみられた.次第に「今日は少しぶつかっちゃったけど速くなったでしょ!」と前向きな発言が聞かれるようになった.また,CLにとって難易度の高い課題に取り組み,ショートステップでできることを認識したことで,自ら日常生活の中でできる作業に気づくことができるようになった.
【結果】Br.stage(左)上肢Ⅴ 手指Ⅴ 下肢Ⅳ,MAL(AOU/QOM):1.8/2.0点で病衣の紐を結ぶ・おしぼりの袋を開けるなど自ら出来る作業を見つけ,日常生活上で左手を使う場面が増えた.CLの希望であった“一人でトイレへ行く”ことも達成までに2ヶ月要したが,車椅子自走で可能となった.歩行練習も進んでいたため,「杖で食堂まで歩きたい」と次のステップへの希望も聞かれるようになった.
【考察】IRMは,『擁護』『協業』『共感』『励まし』『指示』『問題解決』という6つの治療的モードを提示しており,作業療法での出来事や対人関係の出来事が雰囲気の転換を求めることもある.今回,能力と自己認識に乖離があるCLに対し,本人がやりたい作業に焦点を当て関わった.難易度の高い作業ではあったが,『共感』を用いCLとの関係性構築を図りつつ,工程に分けスモールステップで目標を立て何度も話し合いをしながら,『協業』『指示』『問題解決』を用い関わったことが本事例には有効であった.また,難易度の高い作業を経験したことで,難易度の低い作業への汎化もスムーズに行えたと考える.今回の結果より,難易度の低い作業はできることに対する気づきを与えること,難易度の高い作業は協業しながら相互に問題解決するプロセスが,介入効果を高めることが示唆された.