[PA-6-9] ポスター:脳血管疾患等 6脳卒中発症早期から作業に焦点を当てた実践の経験~ 2 症例のケースシリーズ~
【はじめに】日本作業療法士協会は2018 年に作業療法の定義を改定し,作業療法は作業に焦点を当てた実践であることが明確となった.しかし作業に焦点を当てた実践については様々な障壁があることが報告されている(梅崎敦子ら,2008.林映見ら,2019).特に急性期脳卒中患者は症状が多様であることや身体機能の向上が優先されること等から,すべての対象者にトップダウン・アプローチである作業に焦点を当てた実践を行うことが理想的とは言えず,適応か否か考える必要がある.急性期においてどのような対象者に対して作業に焦点を当てた実践が実施可能かは検討されていない.今回,急性期脳卒中患者に対し,発症早期から作業に焦点を当てた実践を行った症例について後方視的に検討した.
【目的と意義】本報告の目的は,急性期脳卒中患者において作業に焦点を当てた実践が実施可能であった症例の特徴を分析することである.症例の特徴を理解することで,作業に焦点を当てた実施が可能か否かを判断する一助となる.
【方法】対象は過去に筆者が担当した急性期脳卒中患者のうち,(1):発症早期に作業ニードの聞き取りを実施,(2):(1)で挙がった作業の観察評価を実施,(3):(1)で挙がった作業が改善することを目的とした介入を実施した者とした.2症例が抽出され,症例Aは50歳代前半の男性,右利き,診断名は右脳梗塞(右内包~放線冠),症例Bは70歳代前半の男性,右利き,診断名は右脳梗塞(中心前回,中心後回)であった.なお対象者には本報告の目的や個人情報の保護,倫理的配慮等について説明を行い,書面にて同意を得ている.
【結果】症例A,Bともにコミュニケーションは良好で,HDS-Rはそれぞれ29/30 点と25/30 点,Barthel Indexは両者とも100 点であった.初期評価と再評価の変化を以下に示す.症例A:Fugl Meyer Assessmentの上肢項目(FMA)は左66→66 点,STEFは左95→100 点,COPMは「パソコンのタイピング」が遂行度5→10 点,満足度6→10 点であった.症例B: FMAは左56→65 点,STEFは左76→82点,COPMは「両手で食事をとる」が遂行度6→8点,満足度7→9 点,「前開きシャツのボタンの留め外しがスムーズにできる」が遂行度5→8 点,満足度6→9 点,AMPSは運動技能が1.7→2.5 logits,プロセス技能が1.7→1.9 logitsであった.
【考察】今回,脳卒中発症早期から作業に焦点を当てた実践を行った2症例の特徴について検討した.臨床上意味のある最小重要差(MCID)についてCOPMの遂行度は2.20 点,満足度は2.06 点とされている(Ohno K,et al, 2021).2症例のCOPMについてはMCIDを下回る項目もあったことから,急性期における作業に焦点を当てた実践の効果は限定的であった可能性がある.2症例に共通する条件として発症早期からコミュニケーションが良好である事,認知機能が保たれている事,麻痺が軽度である事,ADLが自立していた事があった.作業に焦点を当てた実践を行うには,発症早期から面接ができる状態にあり,麻痺が軽度で自身の作業ニードを認識していることが重要であると考える.今回は2症例のみの検討であったため,今後は事例数を重ねていき急性期における作業に焦点を当てた実践の効果や適応を明らかにしていく必要がある.
【目的と意義】本報告の目的は,急性期脳卒中患者において作業に焦点を当てた実践が実施可能であった症例の特徴を分析することである.症例の特徴を理解することで,作業に焦点を当てた実施が可能か否かを判断する一助となる.
【方法】対象は過去に筆者が担当した急性期脳卒中患者のうち,(1):発症早期に作業ニードの聞き取りを実施,(2):(1)で挙がった作業の観察評価を実施,(3):(1)で挙がった作業が改善することを目的とした介入を実施した者とした.2症例が抽出され,症例Aは50歳代前半の男性,右利き,診断名は右脳梗塞(右内包~放線冠),症例Bは70歳代前半の男性,右利き,診断名は右脳梗塞(中心前回,中心後回)であった.なお対象者には本報告の目的や個人情報の保護,倫理的配慮等について説明を行い,書面にて同意を得ている.
【結果】症例A,Bともにコミュニケーションは良好で,HDS-Rはそれぞれ29/30 点と25/30 点,Barthel Indexは両者とも100 点であった.初期評価と再評価の変化を以下に示す.症例A:Fugl Meyer Assessmentの上肢項目(FMA)は左66→66 点,STEFは左95→100 点,COPMは「パソコンのタイピング」が遂行度5→10 点,満足度6→10 点であった.症例B: FMAは左56→65 点,STEFは左76→82点,COPMは「両手で食事をとる」が遂行度6→8点,満足度7→9 点,「前開きシャツのボタンの留め外しがスムーズにできる」が遂行度5→8 点,満足度6→9 点,AMPSは運動技能が1.7→2.5 logits,プロセス技能が1.7→1.9 logitsであった.
【考察】今回,脳卒中発症早期から作業に焦点を当てた実践を行った2症例の特徴について検討した.臨床上意味のある最小重要差(MCID)についてCOPMの遂行度は2.20 点,満足度は2.06 点とされている(Ohno K,et al, 2021).2症例のCOPMについてはMCIDを下回る項目もあったことから,急性期における作業に焦点を当てた実践の効果は限定的であった可能性がある.2症例に共通する条件として発症早期からコミュニケーションが良好である事,認知機能が保たれている事,麻痺が軽度である事,ADLが自立していた事があった.作業に焦点を当てた実践を行うには,発症早期から面接ができる状態にあり,麻痺が軽度で自身の作業ニードを認識していることが重要であると考える.今回は2症例のみの検討であったため,今後は事例数を重ねていき急性期における作業に焦点を当てた実践の効果や適応を明らかにしていく必要がある.