[PA-8-1] ポスター:脳血管疾患等 8日本の脳卒中者研究において社会参加はどのように測定されてきたか
【背景と目的】
近年,リハビリテーション領域では活動・参加レベルでの支援の充実が叫ばれて久しく,介護保険領域では社会参加支援加算が設けられるなど,その重要性は明らかである.一方,社会参加という言葉は未だ明確に統一された定義がなく(吉田純一ら,2019),測定・支援する方法も十分に定まっていないとの指摘もある(中村奈美ら,2018).そこで,我が国の身体障害領域作業療法において最多の対象疾患である脳血管疾患に焦点化し,脳卒中者の社会参加がどのように測定されているのかを明らかにする為,文献研究を行った.なお,本研究において開示すべきCOIはない.
【方法】
文献検索は医学中央雑誌Web版(以下,医中誌Web)を用い,合計3回行った(最終検索日2022年1月25日).対象は原著論文に限定,会議録は除外し,検索キーワードは「脳卒中」「社会参加」とした.包含基準は①脳卒中者を対象とした実証実験,②本文および要旨に社会参加もしくは参加の記述があり,③社会参加を変数・分析テーマとして扱っている,④日本国内での研究実践とした.除外基準は①脳卒中者以外が対象,②文献研究,③海外での研究実践,④本文が入手不可とした.対象文献の分析は①文献数の単純集計,②各文献を研究報告と事例報告,総論・解説・特集などに分類,③アブストラクトテーブルを作成し上記基準に基づいて論文を選別,④基準に該当した論文の本文チェックを行い,脳卒中者の社会参加を測定している手段を抽出し,結果を考察した.
【結果】
医中誌webの検索では147本の論文が抽出され,そこから包含および除外基準に則って論文を分類した.147本のうち,研究報告は21本(30.0%),事例報告は17本(24.3),特集・解説・総論は32本(45.7%)であった.研究報告のうち観察研究が14本,介入研究が3本,尺度開発研究と質的研究が各2本であった.しかしながら,包含基準③社会参加を変数や分析テーマとして扱っているという基準に該当しない論文も多く,最終的な分析対象は12本となった.この12本で用いられていた社会参加の測定手法は,CIQ,LSAが各1本,他にICF,FAIやILSといったADLやIADL評価尺度,QOL評価尺度や自作の評価用紙などが用いられていた.
【考察】
本結果より,脳卒中者の社会参加に関して多くの特集や解説がなされており,改めてその重要性と注目の度合いを確認することができた.しかし,我が国の脳卒中者研究において用いられてきた社会参加を測定する手法は,CIQやLSAといった地域社会との関係性,生活空間と移動に着目した評価尺度が2件あったものの,大半はADLやIADL,QOLなど類似概念の尺度を代用しているものであった.社会参加には脳卒中者を取り巻く様々な要因が影響を及ぼしており(佐藤隼ら,2008),類似概念の尺度を用いて測定することには大きな課題を含んでいると考える.社会参加という言葉は作業療法キーワード集にも掲載されており,日々の臨床においても日常的に用いている言葉ではないだろうか.しかし,先行研究でも指摘のあるように,その定義や測定手法には曖昧さも含んでいる現状がある.海外で行われたシステマティックレビュー(Adebimpe O.Obembe,2016)でも,リハビリテーションにおける社会参加への視点の重要性が示されている一方,これから更なる研究が必要だと指摘されている.脳卒中者の社会参加を促進する為には,作業療法士などのリハビリテーション職のみでなく,様々な職種や制度,地域資源を活用していくことが重要であることは臨床実践における現状からも明らかであり,今後は我が国における脳卒中者の社会参加の現状と課題をより詳細に捉えていく研究の充実が必要であると考える.
近年,リハビリテーション領域では活動・参加レベルでの支援の充実が叫ばれて久しく,介護保険領域では社会参加支援加算が設けられるなど,その重要性は明らかである.一方,社会参加という言葉は未だ明確に統一された定義がなく(吉田純一ら,2019),測定・支援する方法も十分に定まっていないとの指摘もある(中村奈美ら,2018).そこで,我が国の身体障害領域作業療法において最多の対象疾患である脳血管疾患に焦点化し,脳卒中者の社会参加がどのように測定されているのかを明らかにする為,文献研究を行った.なお,本研究において開示すべきCOIはない.
【方法】
文献検索は医学中央雑誌Web版(以下,医中誌Web)を用い,合計3回行った(最終検索日2022年1月25日).対象は原著論文に限定,会議録は除外し,検索キーワードは「脳卒中」「社会参加」とした.包含基準は①脳卒中者を対象とした実証実験,②本文および要旨に社会参加もしくは参加の記述があり,③社会参加を変数・分析テーマとして扱っている,④日本国内での研究実践とした.除外基準は①脳卒中者以外が対象,②文献研究,③海外での研究実践,④本文が入手不可とした.対象文献の分析は①文献数の単純集計,②各文献を研究報告と事例報告,総論・解説・特集などに分類,③アブストラクトテーブルを作成し上記基準に基づいて論文を選別,④基準に該当した論文の本文チェックを行い,脳卒中者の社会参加を測定している手段を抽出し,結果を考察した.
【結果】
医中誌webの検索では147本の論文が抽出され,そこから包含および除外基準に則って論文を分類した.147本のうち,研究報告は21本(30.0%),事例報告は17本(24.3),特集・解説・総論は32本(45.7%)であった.研究報告のうち観察研究が14本,介入研究が3本,尺度開発研究と質的研究が各2本であった.しかしながら,包含基準③社会参加を変数や分析テーマとして扱っているという基準に該当しない論文も多く,最終的な分析対象は12本となった.この12本で用いられていた社会参加の測定手法は,CIQ,LSAが各1本,他にICF,FAIやILSといったADLやIADL評価尺度,QOL評価尺度や自作の評価用紙などが用いられていた.
【考察】
本結果より,脳卒中者の社会参加に関して多くの特集や解説がなされており,改めてその重要性と注目の度合いを確認することができた.しかし,我が国の脳卒中者研究において用いられてきた社会参加を測定する手法は,CIQやLSAといった地域社会との関係性,生活空間と移動に着目した評価尺度が2件あったものの,大半はADLやIADL,QOLなど類似概念の尺度を代用しているものであった.社会参加には脳卒中者を取り巻く様々な要因が影響を及ぼしており(佐藤隼ら,2008),類似概念の尺度を用いて測定することには大きな課題を含んでいると考える.社会参加という言葉は作業療法キーワード集にも掲載されており,日々の臨床においても日常的に用いている言葉ではないだろうか.しかし,先行研究でも指摘のあるように,その定義や測定手法には曖昧さも含んでいる現状がある.海外で行われたシステマティックレビュー(Adebimpe O.Obembe,2016)でも,リハビリテーションにおける社会参加への視点の重要性が示されている一方,これから更なる研究が必要だと指摘されている.脳卒中者の社会参加を促進する為には,作業療法士などのリハビリテーション職のみでなく,様々な職種や制度,地域資源を活用していくことが重要であることは臨床実践における現状からも明らかであり,今後は我が国における脳卒中者の社会参加の現状と課題をより詳細に捉えていく研究の充実が必要であると考える.