[PA-8-10] ポスター:脳血管疾患等 8回復期リハビリテーション病棟における多職種連携が脳卒中患者の日常生活活動に及ぼす影響
【序論】回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)での集中的かつ多職種連携によるケアの提供は,脳卒中患者の長期予後,Activities of Daily Living(以下ADL)などの臨床アウトカムに好影響を及ぼすことが報告されている.しかし,多職種連携に関する先行研究において,連携を評価する尺度の開発・使用や,患者の状態など交絡因子の調整が課題とされている.そこで,我々は尺度による多職種連携の状態の数値化と,傾向スコアによる交絡因子の調整により,回復期病棟での多職種連携が脳卒中患者のADLに及ぼす影響を検証できると仮説を立てた.
【目的】本研究の目的は,回復期病棟における多職種連携が脳卒中患者のADLに及ぼす影響を検証することである.
【方法】
<研究デザイン>研究デザインは後方視的コホート研究とし,STROBE(The Strengthening the Reporting of Observational Studies in Epidemiology)声明に従った.本研究は研究代表者の所属機関の倫理審査委員会の承認を得て実施した(保大第71-69).
<対象>所在地が県内の回復期病棟に所属する作業療法士,理学療法士,言語聴覚士を対象とした.管理業務を通常業務とする管理職者は対象から除外した.
<データ収集>県内の医療機関を便宜的にサンプリングし,研究協力者を介して,対象者に調査票の配布と無記名での回答を依頼した.調査票は,対象者が任意で投函することとし,回答をもって研究参加への同意とみなした.データ収集の期間は2019年12月から2020年4月末とした.調査項目は,対象者が担当し,直近で退院した脳卒中患者1名の年齢,性別,入退院時のFunctional Independence Measure(FIM)などとした.多職種連携は,セラピスト連携実践尺度(Therapist Collaborative Practice Scale: TCPS)を用いて評価した.TCPSは,回復期病棟でのセラピストの多職種連携を28項目5因子で評価する自記式尺度である.
<データ解析>得られたデータから,入院期間が14日未満または180日以上,転院・転棟,欠損値があるデータを除外した.対象者をTCPS総得点で2群に分け(中央値以上/High quality collaboration: H-collaboration, 中央値未満/Normal collaboration: N-collaboration),目的変数をTCPSによる割付,説明変数を年齢,性別,入院期間,総単位数,入院時FIMとしたロジスティック回帰分析にて傾向スコアを算出した.マッチングは1対1の非復元抽出法,Caliperは傾向スコアの標準偏差の0.2倍とした.マッチング後,2群間のベースライン算出とFIM effectivenessの比較を対応のないt検定とχ2検定で行った.統計解析はStata15(StataCorp, USA)を用い,有意水準は5%とした.
【結果】回収された300件のデータから欠損値などを除外し,239件が分析対象となった.傾向スコアによるマッチング後,H-collaboration群とN-collaboration群はそれぞれ88件となり,ベースラインに有意差は認められず両群は同質の集団であることが確認された.FIM effectivenessを比較した結果,総得点(p=0.02, 95%CI 0.01-0.19,効果量(d)=0.35),運動項目(p=0.01 ,95%CI 0.03-0.21, 効果量(d)=0.39),認知項目(p=0.50, 95%CI 0.07-0.13)であった.
【考察・結論】回復期病棟での多職種連携が脳卒中患者のADLに及ぼす影響を検証するため,後方視的コホート研究を行った.239件を分析対象とし,TCPS得点で分類した2群に対し傾向スコアマッチングで交絡因子を調整後,FIM effectivenessを比較したところ,総得点と運動項目に差が認められた.この結果から,回復期病棟での多職種連携は脳卒中患者のADL,特に運動項目の改善に貢献することが示唆された.
【目的】本研究の目的は,回復期病棟における多職種連携が脳卒中患者のADLに及ぼす影響を検証することである.
【方法】
<研究デザイン>研究デザインは後方視的コホート研究とし,STROBE(The Strengthening the Reporting of Observational Studies in Epidemiology)声明に従った.本研究は研究代表者の所属機関の倫理審査委員会の承認を得て実施した(保大第71-69).
<対象>所在地が県内の回復期病棟に所属する作業療法士,理学療法士,言語聴覚士を対象とした.管理業務を通常業務とする管理職者は対象から除外した.
<データ収集>県内の医療機関を便宜的にサンプリングし,研究協力者を介して,対象者に調査票の配布と無記名での回答を依頼した.調査票は,対象者が任意で投函することとし,回答をもって研究参加への同意とみなした.データ収集の期間は2019年12月から2020年4月末とした.調査項目は,対象者が担当し,直近で退院した脳卒中患者1名の年齢,性別,入退院時のFunctional Independence Measure(FIM)などとした.多職種連携は,セラピスト連携実践尺度(Therapist Collaborative Practice Scale: TCPS)を用いて評価した.TCPSは,回復期病棟でのセラピストの多職種連携を28項目5因子で評価する自記式尺度である.
<データ解析>得られたデータから,入院期間が14日未満または180日以上,転院・転棟,欠損値があるデータを除外した.対象者をTCPS総得点で2群に分け(中央値以上/High quality collaboration: H-collaboration, 中央値未満/Normal collaboration: N-collaboration),目的変数をTCPSによる割付,説明変数を年齢,性別,入院期間,総単位数,入院時FIMとしたロジスティック回帰分析にて傾向スコアを算出した.マッチングは1対1の非復元抽出法,Caliperは傾向スコアの標準偏差の0.2倍とした.マッチング後,2群間のベースライン算出とFIM effectivenessの比較を対応のないt検定とχ2検定で行った.統計解析はStata15(StataCorp, USA)を用い,有意水準は5%とした.
【結果】回収された300件のデータから欠損値などを除外し,239件が分析対象となった.傾向スコアによるマッチング後,H-collaboration群とN-collaboration群はそれぞれ88件となり,ベースラインに有意差は認められず両群は同質の集団であることが確認された.FIM effectivenessを比較した結果,総得点(p=0.02, 95%CI 0.01-0.19,効果量(d)=0.35),運動項目(p=0.01 ,95%CI 0.03-0.21, 効果量(d)=0.39),認知項目(p=0.50, 95%CI 0.07-0.13)であった.
【考察・結論】回復期病棟での多職種連携が脳卒中患者のADLに及ぼす影響を検証するため,後方視的コホート研究を行った.239件を分析対象とし,TCPS得点で分類した2群に対し傾向スコアマッチングで交絡因子を調整後,FIM effectivenessを比較したところ,総得点と運動項目に差が認められた.この結果から,回復期病棟での多職種連携は脳卒中患者のADL,特に運動項目の改善に貢献することが示唆された.