[PA-8-2] ポスター:脳血管疾患等 8上肢機能改善と薬物療法により社会的行動障害の改善がみられた一事例
<はじめに>右内頚動脈閉塞により社会的行動障害と思われる症状がみられた事例に対し,多職種連携による対応の統一,左上肢機能の改善からエラーや不安材料の軽減を図り,精神科医による薬物療法の併用で行動障害に改善がみられた.以下報告する.尚,本報告にあたり事例より書面にて同意を得ている.
<事例紹介>50代男性.子煩悩だが固執傾向でトラブルが多く仕事を転々としていた.X日右内頚動脈閉塞を発症し同日バイパス術施行,中大脳動脈への血栓移動による除去術実施.既往にアルコール性肝障害.X+1ヶ月回復期リハ病棟へ転院.独歩可能だが落ち着きなく動き回り,焦燥感が強く待てない.ベッド周囲に服等が散乱,今後の予定や病状について同じ質問を繰り返し,苛立ちや固執も見られた.家族は「病前の5倍大変.自宅退院は考えられない」との認識だった.
<作業療法評価>愛想が良く指示理解も可能だが焦燥感あり.立位で上着に手を通すことは可能だがチャックに左手が近づいても空をつかもうとし,声掛けし視覚的に注意を向けても協調的な操作は困難.茶碗把持は可能だが食事を始めると落とした.左上肢FMA59点,感覚は表在深部とも末梢へいくほど重度鈍麻.STEF右93・左67,MAL;AOU1.6・QOU1.5.FIM94(運動68認知26).コースIQ81,MMSE30.TMT-J A86秒,B121秒. FAB12/18.
<介入の基本方針>重度の感覚障害に起因して運動主体感の低下や動作時のエラーが,不安・焦燥感を強め,情動のコントロールをより困難にしていると考えた.左上肢機能の改善をはかり実用的に使用ができること,多職種で連携し日課の提示や対応の統一等により,エラーや不安材料の軽減を図ることとした.
<経過>視覚情報を入れながら上肢の運動感覚入力を行い多関節運動の協調性を改善.段階づけながら麻痺側上肢の主体的な動きの改善を図り,フィードバックを得られやすいActivityでの知覚探索や道具操作練習を段階的に実施.X+2ヶ月,茶碗把持しての食事摂取も可能となり日課に応じて穏やかに言動できるようになったが,不安・焦燥感に駆られると左手で把持していた物を落とす,家族へ頻回に電話をする等落ち着かなかった.カンファレンスにて「病前からの特性もあり,固執・不安・焦燥に対し専門的な治療が必要」と相談し精神科病院に紹介.「脳梗塞の影響のほか,発達特性やアルコールの関与もあり.ある種の強迫症状.」とのことから,定期内服でセルトラリンが処方された.X+3ヶ月,対話の中で,感情を客観的に捉え,思考を整理することも可能となり焦燥感は落ち着いた.集中できるようになり両手動作や物品識別も改善がみられた.
<結果>左上肢の日常的な使用が可能になり物を落とすことはなくなった.感覚障害は若干改善がみられたものの残存したが,熱いカップは右手で持つなど配慮ができるようになり,日常生活動作は服薬管 理 ・ 入浴含め自立した . FIM122( 運 動 90 認 知 32) . FMA65 , STEF : R94 ・ L84 ,MAL:AOU3.5・ QOU2.8.コースIQ85,TMT-J A61 秒,B121秒 .FAB18/18.X+4ヶ月,家族の連休に合わせて自宅へ退院.
<考察>社会的行動障害の対応として予定等の生活リズムの確立,個々の社会的行動障害がどのようなきっかけで生じているか文脈を調査することが大切といわれている(村井2019).多職種連携により日課の提示や対応の統一,上肢機能の改善を図り生活動作のエラーが減少したことで行動障害に一定の改善がみられた.しかし,それだけでは中核症状である不安・焦燥の改善は困難であった.セルトラリンは社会的行動障害のうつ症状や注意・記憶に対して有効性があるといわれており(生駒2013),精神科医との連携の重要性を感じた.
<事例紹介>50代男性.子煩悩だが固執傾向でトラブルが多く仕事を転々としていた.X日右内頚動脈閉塞を発症し同日バイパス術施行,中大脳動脈への血栓移動による除去術実施.既往にアルコール性肝障害.X+1ヶ月回復期リハ病棟へ転院.独歩可能だが落ち着きなく動き回り,焦燥感が強く待てない.ベッド周囲に服等が散乱,今後の予定や病状について同じ質問を繰り返し,苛立ちや固執も見られた.家族は「病前の5倍大変.自宅退院は考えられない」との認識だった.
<作業療法評価>愛想が良く指示理解も可能だが焦燥感あり.立位で上着に手を通すことは可能だがチャックに左手が近づいても空をつかもうとし,声掛けし視覚的に注意を向けても協調的な操作は困難.茶碗把持は可能だが食事を始めると落とした.左上肢FMA59点,感覚は表在深部とも末梢へいくほど重度鈍麻.STEF右93・左67,MAL;AOU1.6・QOU1.5.FIM94(運動68認知26).コースIQ81,MMSE30.TMT-J A86秒,B121秒. FAB12/18.
<介入の基本方針>重度の感覚障害に起因して運動主体感の低下や動作時のエラーが,不安・焦燥感を強め,情動のコントロールをより困難にしていると考えた.左上肢機能の改善をはかり実用的に使用ができること,多職種で連携し日課の提示や対応の統一等により,エラーや不安材料の軽減を図ることとした.
<経過>視覚情報を入れながら上肢の運動感覚入力を行い多関節運動の協調性を改善.段階づけながら麻痺側上肢の主体的な動きの改善を図り,フィードバックを得られやすいActivityでの知覚探索や道具操作練習を段階的に実施.X+2ヶ月,茶碗把持しての食事摂取も可能となり日課に応じて穏やかに言動できるようになったが,不安・焦燥感に駆られると左手で把持していた物を落とす,家族へ頻回に電話をする等落ち着かなかった.カンファレンスにて「病前からの特性もあり,固執・不安・焦燥に対し専門的な治療が必要」と相談し精神科病院に紹介.「脳梗塞の影響のほか,発達特性やアルコールの関与もあり.ある種の強迫症状.」とのことから,定期内服でセルトラリンが処方された.X+3ヶ月,対話の中で,感情を客観的に捉え,思考を整理することも可能となり焦燥感は落ち着いた.集中できるようになり両手動作や物品識別も改善がみられた.
<結果>左上肢の日常的な使用が可能になり物を落とすことはなくなった.感覚障害は若干改善がみられたものの残存したが,熱いカップは右手で持つなど配慮ができるようになり,日常生活動作は服薬管 理 ・ 入浴含め自立した . FIM122( 運 動 90 認 知 32) . FMA65 , STEF : R94 ・ L84 ,MAL:AOU3.5・ QOU2.8.コースIQ85,TMT-J A61 秒,B121秒 .FAB18/18.X+4ヶ月,家族の連休に合わせて自宅へ退院.
<考察>社会的行動障害の対応として予定等の生活リズムの確立,個々の社会的行動障害がどのようなきっかけで生じているか文脈を調査することが大切といわれている(村井2019).多職種連携により日課の提示や対応の統一,上肢機能の改善を図り生活動作のエラーが減少したことで行動障害に一定の改善がみられた.しかし,それだけでは中核症状である不安・焦燥の改善は困難であった.セルトラリンは社会的行動障害のうつ症状や注意・記憶に対して有効性があるといわれており(生駒2013),精神科医との連携の重要性を感じた.