第56回日本作業療法学会

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ポスター

脳血管疾患等

[PA-8] ポスター:脳血管疾患等 8

Sat. Sep 17, 2022 12:30 PM - 1:30 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PA-8-3] ポスター:脳血管疾患等 8外来作業療法における小児片麻痺患者を対象とした修正版CI療法の有効性について~ケースシリーズ~

川原 佑亮1吉田 尚樹1強口 朋美1工藤 大弥1田邉 良2 (1千葉県千葉リハビリテーションセンターリハビリテーション治療部,2千葉県千葉リハビリテーションセンター診療部)

【はじめに】欧米では,脳性麻痺や脳卒中の小児症例に対してConstraint-Induced MovementTherapy(以下,CI療法)を実施し,その効果が報告されている.近年本邦でも報告されているが少数に留まり,かつ入院での介入が主流となっている.
【目的】今回,外来にて小児片麻痺患者に対しmodified CI療法(以下,mCI療法)を3症例に実施した.介入前後の臨床評価結果と,外来におけるmCI療法の有効性について考察する.尚,報告に際し症例及び家族から同意を得た.
【方法】症例1は10歳男児,1歳時に左脳室拡大優位の脳室周囲白質軟化症,脳性麻痺と診断.右片麻痺を主症状としていた.Brunnstrom Stage(以下,BRS)は上肢Ⅴ,手指Ⅴ.症例2は10歳男児,1歳時に痙攣重積発作後の細菌性髄膜炎と診断.左片麻痺を主症状としていた.BRSは上肢Ⅴ,手指Ⅴ.症例3は13歳男児.10歳時に左前頭葉出血による左片麻痺を呈していた.BRSは上肢Ⅳ,手指Ⅳ.3症例とも普通校に在籍しており,mCI療法を行う際の認知的な問題はなかった.mCI療法のプロトコルは,症例1は週5日通院し,1日3時間の課題試行型訓練とホームエクササイズを3週間,計50時間実施した.症例2,3は週に1回通院し1時間の課題試行型訓練と毎日1時間のホームエクササイズを4週間,計35時間実施した.症例1,2については,家族見守りのもとでホームエクササイズを行った.実施にあたり麻痺手の拘束は行わないものとした.外来通院時には,自宅にて行う反復的課題試行型訓練の難易度調整やTransfer Package(以下,TP)の振り返り,家族指導を中心に行なった.臨床評価はmCI療法の開始時,終了時,終了1ヶ月後に実施した.
【結果】介入後,3症例ともにカナダ作業遂行測定(以下,COPM)の遂行度,満足度,MotorActivity Log(以下,MAL)のAmount of Use(以下,AOU),Quality of Movement(以下,QOM)で向上を認めた.また運動機能障害については,症例1はQuality of Upper Extremity SkillsTestやBox and Block Test(以下,BBT)で向上が見られた.症例2は,Fugl-Meyer Assessment(以下,FMA),BBTで向上が見られた.その内,3症例ともにCOPMの遂行度,満足度,MALのAOUにおいて,Minimal Clinically Important Differenceを超える結果となった.mCI療法終了1ヶ月後の評価では,3症例ともにMALの AOU,QOMで低下傾向が見られたが,運動機能については維持された.
【考察】外来でのmCI療法は入院のCI療法と比較し,セラピストが直接介入する時間が短く,ホームエクササイズ中心になる特徴があるが,入院でのCI療法と同様にCOPM,MALのAOUの向上が見られ,作業遂行の変化や麻痺手の使用頻度向上を示せた.これは,TPの設定をホームで行うことでリアリティある訓練となり日常生活に汎化させやすかったと考える.運動機能の向上については,ホームエクササイズで設定した課題を家族にも指導しフィードバックに積極的に関与を求めたことや,T Pの使用を本人だけでなく家族も記載に関わったことが要因と考える.mCI療法終了1ヶ月後の生活場面での麻痺手の使用頻度は,減少傾向であるが著明な低下ではなく,運動機能は維持されていた.外来でのmCI療法がホームエクササイズ中心であり,実生活場面において主体的な麻痺手の使用を意識づけられたことが要因と考える.外来でのmCI療法は日々の生活行為のバランスの変化を抑えられるメリットがある.従来の方法に比べ短い時間で,かつホームエクササイズ中心での介入により麻痺手の行動変容を促せることは,学業により入院が難しく麻痺手の集中訓練が難しい症例でも,適用できる治療法である.