[PA-9-3] ポスター:脳血管疾患等 9運動麻痺,運動失調を呈した患者へ運転再開支援を実施し自動車運転再開となった一例
【はじめに】脳卒中後に自動車運転を再開した者は,ADLの自立度が高い,歩行補助具の使用率が低いといった特徴があり(Fisk GD et al:1997.Yu S et al:2016),運動障害がより軽度な脳卒中患者が自動車運転を再開する傾向にある(Marshall SC et al:2007).今回,右上下肢に運動麻痺,左上下肢に失調症状を呈した者の自動車運転支援に関わった.教習所での実車訓練を繰り返したことで運転操作が向上し,再開に至ったため報告する.なお,発表に関しては個人情報に十分注意し,症例と家族に書面による説明を行い,同意を得ている.
【症例紹介】40代男性,妻子と4人暮らし.自営業.X年Y月Z日脳幹,小脳梗塞発症.第21病日目に当院急性期病棟から回復病棟へ転棟.第104日病日へ自宅退院,第185病日目に自動車運転再開支援を開始した.介入時身体機能は右上下肢極軽度麻痺,左上下肢,体幹に中等度協調運動障害,拮抗運動障害を認め,左上肢は安静時,動作時の不随意運動が見られた.歩行は両上肢ロフストランドクラッチ使用し自立であった.身体障碍者手帳1級.実車評価前検査ではMMSE29点,TMT–J partA67秒,partB 86秒,J-SDSAは運転適性ありであった(スクエアマトリックス:方向32点,コンパス28点,道路標識:11点)簡易自動車シミュレーター(以下;SiDS)の総合判定は境界(要再検査)という結果であった.信号に対するペダル操作の反応時間に遅延を認めたが,走行検査では衝突や車線の逸脱を認めなかった.ペダル操作は右足で可能だったが,ハンドル操作は左上肢が干渉し拙劣さが観察された.
【介入】実車前評価では全般的な認知機能は保たれていたが,注意機能は健常な40歳代と比較して著明な低下を認めた.SiDSは認知反応時間の低下を認めるも走行検査では車線の逸脱,追突は0回であった.医師,本人,家族と相談し指定自動車教習所での改造車での実車練習を実施した.ハンドルの右側に回旋装置を装着し,ペダル操作は右足で実施した.計16時間行い(2時間×8日間),2時間ごとに教習所指導員から運転操作時に見られた特徴や注意点を振り返り本人へフィードバックを行なった.
【結果】1〜2時間目は教習所内で練習を実施した.回旋装置,車体操作不慣れが見られ安全確認や法規走行まで注意が払えない状態であった.3~4時間目から一般道路での走行練習を開始した.一般道での走行は,走行位置が不安定となりやすく,ブレーキや信号への反応の遅れが指摘された.補助ハンドルをとられる場面もあった.15〜16時間目ではハンドル操作がスムーズに可能となり安定した<br /走行が可能となった.慣れた道,交通量の少ない時間帯,助手席に妻の同乗など条件付きで段階的に運転を再開するよう,本人,妻へ提案.実車前評価,実車評価の結果をもとに医師が公安員会提出用の診断書を作成し,自動車改造の手続き,助成金の説明を行った.
【考察】大脳半球の障害側は運転評価の結果に影響を及ぼさない(Barco PP et al:2014)と報告されているが,国産車であれば,右足でのペダル操作,左上肢でのシフトレバーなど左右運動麻痺の特性に応じた運転補助装置の使用や改造が必要になってくる.運動麻痺がある場合,慣れない改造車での運転では周囲の状況に十分な注意を向けらない可能性があり,操作になれるためには一定時間,練習をした後に運転を再開したほうが安全であることが示唆された.
【症例紹介】40代男性,妻子と4人暮らし.自営業.X年Y月Z日脳幹,小脳梗塞発症.第21病日目に当院急性期病棟から回復病棟へ転棟.第104日病日へ自宅退院,第185病日目に自動車運転再開支援を開始した.介入時身体機能は右上下肢極軽度麻痺,左上下肢,体幹に中等度協調運動障害,拮抗運動障害を認め,左上肢は安静時,動作時の不随意運動が見られた.歩行は両上肢ロフストランドクラッチ使用し自立であった.身体障碍者手帳1級.実車評価前検査ではMMSE29点,TMT–J partA67秒,partB 86秒,J-SDSAは運転適性ありであった(スクエアマトリックス:方向32点,コンパス28点,道路標識:11点)簡易自動車シミュレーター(以下;SiDS)の総合判定は境界(要再検査)という結果であった.信号に対するペダル操作の反応時間に遅延を認めたが,走行検査では衝突や車線の逸脱を認めなかった.ペダル操作は右足で可能だったが,ハンドル操作は左上肢が干渉し拙劣さが観察された.
【介入】実車前評価では全般的な認知機能は保たれていたが,注意機能は健常な40歳代と比較して著明な低下を認めた.SiDSは認知反応時間の低下を認めるも走行検査では車線の逸脱,追突は0回であった.医師,本人,家族と相談し指定自動車教習所での改造車での実車練習を実施した.ハンドルの右側に回旋装置を装着し,ペダル操作は右足で実施した.計16時間行い(2時間×8日間),2時間ごとに教習所指導員から運転操作時に見られた特徴や注意点を振り返り本人へフィードバックを行なった.
【結果】1〜2時間目は教習所内で練習を実施した.回旋装置,車体操作不慣れが見られ安全確認や法規走行まで注意が払えない状態であった.3~4時間目から一般道路での走行練習を開始した.一般道での走行は,走行位置が不安定となりやすく,ブレーキや信号への反応の遅れが指摘された.補助ハンドルをとられる場面もあった.15〜16時間目ではハンドル操作がスムーズに可能となり安定した<br /走行が可能となった.慣れた道,交通量の少ない時間帯,助手席に妻の同乗など条件付きで段階的に運転を再開するよう,本人,妻へ提案.実車前評価,実車評価の結果をもとに医師が公安員会提出用の診断書を作成し,自動車改造の手続き,助成金の説明を行った.
【考察】大脳半球の障害側は運転評価の結果に影響を及ぼさない(Barco PP et al:2014)と報告されているが,国産車であれば,右足でのペダル操作,左上肢でのシフトレバーなど左右運動麻痺の特性に応じた運転補助装置の使用や改造が必要になってくる.運動麻痺がある場合,慣れない改造車での運転では周囲の状況に十分な注意を向けらない可能性があり,操作になれるためには一定時間,練習をした後に運転を再開したほうが安全であることが示唆された.