[PA-9-9] ポスター:脳血管疾患等 9回復期脳卒中上肢麻痺に対するReoGo-Jの併用効果の検討
【序論】脳卒中治療ガイドライン2021では,亜急性期以後の障害に対するリハビリテーション診療では,ロボットを用いた上肢機能訓練を行うことが妥当(推奨度B)であるとされている 1) .本邦においてロボット療法に関する研究が報告されているが,効果的な適用範囲や適用期間などに関する報告は少ない.
【目的】
当院に入院している脳卒中患者に対して,ロボット療法を2020年3月より導入し,作業療法の治療手段として活用している.本研究では,2019年度に実施した通常の作業療法と2020年度にロボット療法を併用した作業療法を比較し,ロボット療法による上肢麻痺への効果的な適用を検討することを目的とした.
【方法】
対象は当院の回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)に入院した脳卒中患者で,2019年4月から2020年3月までの期間で通常の作業療法を実施した者(通常群)と2020年4月から2021年3月までの期間で通常の作業療法にReoGo-Jを併用した者(ロボット療法群)とした.対象者の除外基準は,MMSE23点以下,明らかな高次脳機能障害,次に示す調査データが得られない者とした.調査データはFugl-Meyer Assessmentの肩,肘,前腕の得点とし,4週目(FMA4週)と8週目(FMA8週)のデータを抽出した.また,FMA8週目と4週目の得点差をFMA利得として算出した.なお,両群の重症度を考慮し,通常群の対象者はロボット療法群のFMA4週の最小値9点以上の者とした.本研究は対象者より書面による同意と当院の承認を得て実施した.
【結果】
通常群の年齢は67.7±10.5歳(平均値±標準偏差),脳梗塞32名,脳出血9名,硬膜下血腫1名で,ロボット療法群では67.7±8.3歳,脳梗塞21名,脳出血6名であった.通常群のFMA4週は29.8±7.7,FMA8週が31.1±7.1であった.ロボット療法群のFMA4週は26.0±8.0,FMA8週が30.1±5.9であった.2元配置分散分析の結果,交互作用が有意(F=14.75,p<0.001)(η 2 =0.08,効果量中)であった.単純主効果を検定した結果,FMA4週とFMA8週の比較では通常群(F=6.62,p=0.01)(効果量r=0.51,効果量大),ロボット療法群(F=64.05,p<0.001)(効果量r=0.74,効果量大)ともに有意な改善を認めた.また,通常群とロボット群の比較ではFMA4週が有意(F=4.38,p<0.05)(効果量r=0.23,効果量小)であったが,FMA8週は有意でなかった(F=0.39,p=0.53).
【考察】
本研究で通常群とロボット療法群を比較した結果,どちらも有意な上肢機能の改善を認めたが,ロボット療法群でやや重い上肢麻痺患者にも改善を認めた.また,FMA8週では両群に差を認めなかった.以上のことから,回復期リハ病棟でやや重い上肢麻痺患者に対してReoGo-Jの併用が上肢機能改善に有効であることが示唆された.また,両群の比較からReoGo-Jの併用効果は8週までを目安として検討してもよい可能性が考えられた.しかし,本研究では4週と8週のみの比較のため,その後の改善への影響やFMA8点以下の症例,早期からの併用効果など,今後も継続的に調査し,回復期リハ病棟における効果的なロボット療法の適応時期と範囲を検討する必要がある.
【引用文献】1)日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会:脳卒中治療ガイドライン2021.第1版,協和企画,2021,pp.266-267.
【目的】
当院に入院している脳卒中患者に対して,ロボット療法を2020年3月より導入し,作業療法の治療手段として活用している.本研究では,2019年度に実施した通常の作業療法と2020年度にロボット療法を併用した作業療法を比較し,ロボット療法による上肢麻痺への効果的な適用を検討することを目的とした.
【方法】
対象は当院の回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)に入院した脳卒中患者で,2019年4月から2020年3月までの期間で通常の作業療法を実施した者(通常群)と2020年4月から2021年3月までの期間で通常の作業療法にReoGo-Jを併用した者(ロボット療法群)とした.対象者の除外基準は,MMSE23点以下,明らかな高次脳機能障害,次に示す調査データが得られない者とした.調査データはFugl-Meyer Assessmentの肩,肘,前腕の得点とし,4週目(FMA4週)と8週目(FMA8週)のデータを抽出した.また,FMA8週目と4週目の得点差をFMA利得として算出した.なお,両群の重症度を考慮し,通常群の対象者はロボット療法群のFMA4週の最小値9点以上の者とした.本研究は対象者より書面による同意と当院の承認を得て実施した.
【結果】
通常群の年齢は67.7±10.5歳(平均値±標準偏差),脳梗塞32名,脳出血9名,硬膜下血腫1名で,ロボット療法群では67.7±8.3歳,脳梗塞21名,脳出血6名であった.通常群のFMA4週は29.8±7.7,FMA8週が31.1±7.1であった.ロボット療法群のFMA4週は26.0±8.0,FMA8週が30.1±5.9であった.2元配置分散分析の結果,交互作用が有意(F=14.75,p<0.001)(η 2 =0.08,効果量中)であった.単純主効果を検定した結果,FMA4週とFMA8週の比較では通常群(F=6.62,p=0.01)(効果量r=0.51,効果量大),ロボット療法群(F=64.05,p<0.001)(効果量r=0.74,効果量大)ともに有意な改善を認めた.また,通常群とロボット群の比較ではFMA4週が有意(F=4.38,p<0.05)(効果量r=0.23,効果量小)であったが,FMA8週は有意でなかった(F=0.39,p=0.53).
【考察】
本研究で通常群とロボット療法群を比較した結果,どちらも有意な上肢機能の改善を認めたが,ロボット療法群でやや重い上肢麻痺患者にも改善を認めた.また,FMA8週では両群に差を認めなかった.以上のことから,回復期リハ病棟でやや重い上肢麻痺患者に対してReoGo-Jの併用が上肢機能改善に有効であることが示唆された.また,両群の比較からReoGo-Jの併用効果は8週までを目安として検討してもよい可能性が考えられた.しかし,本研究では4週と8週のみの比較のため,その後の改善への影響やFMA8点以下の症例,早期からの併用効果など,今後も継続的に調査し,回復期リハ病棟における効果的なロボット療法の適応時期と範囲を検討する必要がある.
【引用文献】1)日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会:脳卒中治療ガイドライン2021.第1版,協和企画,2021,pp.266-267.