[PB-1-1] ポスター:心大血管疾患 1重症大動脈弁狭窄症の一症例~認知機能面の低下を伴う患者の退院支援~
【はじめに】
重症大動脈弁狭窄症により心不全症状を呈した症例を経験した.認知機能面の低下を伴い,心不全療養における患者教育と退院支援を検討する機会を得たため以下に報告する.尚,症例,家族より同意を得ている.
【症例】
80歳代女性,1月程前から浮腫出現しx-61日から体調不良がありx-55日近医受診,うっ血性心不全の診断でA病院救急搬送され入院となった.心不全加療を行い,徐々に改善傾向となった.リハビリ継続,退院後の介護保険サービスの検討目的でx日当院転院となった.既往に高血圧症あり.病前は長男と同居(2年前から)でADL自立,IADLも部分介助(買い物や洗濯等は長男介助)であった.初回介護保険申請で要介護4の認定を受けた.
主訴 本人「家に帰りたい」家族「手術は希望しない.歩ければ自宅退院を希望する」.入院時所見 身長146.0cm,体重35.5㎏,心不全stageC, NYHAIII, LVEF 30%, BNP710.0, CTR60%, AVA 0.5㎠,AVmeanPG88.8mmHg,AV Vmax5.42m/s
【作業療法初期評価】
JCS 0,血圧88/54mmHg,脈拍53bpm,SpO2 96%,握力(R/L)7.0kg/5.3kg,HDS-R13/30点, GDS1/15点,FIM55(Motor41,Cog14),SAS 2Mets(本人は2-3Mets)Brogスケール13
【経過】入院日(x日)から理学,作業療法の処方があり,方針は筋力強化と歩行,ADL訓練であった.ADL状況を観察し,転倒と過活動の予防に対して環境調整を行った.x+17日に多職種カンファレンスが開催され,歩行が監視下で可能になった背景から,ご家族の意向で自宅退院方向となった.自宅退院後の課題についてpaper版ADOCを用いて聴取し,入院前の「炊事」「掃除」を行うつもりであると表出があった.x+40日に退院前訪問指導を実施し,動作の確認と環境調整の提案を行い,その他指導や介護保険サービスの調整を経て,x+59日目に自宅退院となった.
【作業療法最終評価】※変化点のみ記載握力(R/L)11.1㎏/12.4㎏,FIM69(Motor55/Cog14),SAS 2-3Mets 「炊事」「掃除」の模擬動作でBorgスケール11-13
【考察】高度な大動脈弁狭窄の運動療法は禁忌とされている.症例のしているADLから「きつさ」を評価し,過活動にならない負荷で身体活動が継続できるよう環境調整による支援が活動性を維持させ,心不全発症後のディコンディショニングの改善の一助になったと考えられる.退院支援にあたり,症例自身の残存機能として,病前IADLをできるIADLに至るまでは改善が図れた.しかし,認知機能面の低下を認める事例に対して,心不全療養におけるセルフケアの意思決定支援についてはフォーマルだけでなくインフォーマルな支援は欠かせず,家族支援が必須である.症例のナラティブを聴取した結果,疾患特性に配慮した過活動にならない動作指導や環境調整を家族と共有する機会を設けることで,退院後の生活を具体的に想像できるよう支援した.また生活期に移行する際の申し送りにおいても,情報提供には,症例の意向と合わせて活動量の提案やセルフケアの確認事項を共有することで,多職種による継続した支援へと繋げられるような内容の提案を心掛けた.心疾患患者の退院支援において,症例,家族の背景と意思を尊重し,疾患特性に配慮した上で最善利益に近づけるよう参画した経験を今後の事例に活かしていく.
【文献】
1)日本心臓リハビリテーション学会.心臓リハビリテーション必携,2014
重症大動脈弁狭窄症により心不全症状を呈した症例を経験した.認知機能面の低下を伴い,心不全療養における患者教育と退院支援を検討する機会を得たため以下に報告する.尚,症例,家族より同意を得ている.
【症例】
80歳代女性,1月程前から浮腫出現しx-61日から体調不良がありx-55日近医受診,うっ血性心不全の診断でA病院救急搬送され入院となった.心不全加療を行い,徐々に改善傾向となった.リハビリ継続,退院後の介護保険サービスの検討目的でx日当院転院となった.既往に高血圧症あり.病前は長男と同居(2年前から)でADL自立,IADLも部分介助(買い物や洗濯等は長男介助)であった.初回介護保険申請で要介護4の認定を受けた.
主訴 本人「家に帰りたい」家族「手術は希望しない.歩ければ自宅退院を希望する」.入院時所見 身長146.0cm,体重35.5㎏,心不全stageC, NYHAIII, LVEF 30%, BNP710.0, CTR60%, AVA 0.5㎠,AVmeanPG88.8mmHg,AV Vmax5.42m/s
【作業療法初期評価】
JCS 0,血圧88/54mmHg,脈拍53bpm,SpO2 96%,握力(R/L)7.0kg/5.3kg,HDS-R13/30点, GDS1/15点,FIM55(Motor41,Cog14),SAS 2Mets(本人は2-3Mets)Brogスケール13
【経過】入院日(x日)から理学,作業療法の処方があり,方針は筋力強化と歩行,ADL訓練であった.ADL状況を観察し,転倒と過活動の予防に対して環境調整を行った.x+17日に多職種カンファレンスが開催され,歩行が監視下で可能になった背景から,ご家族の意向で自宅退院方向となった.自宅退院後の課題についてpaper版ADOCを用いて聴取し,入院前の「炊事」「掃除」を行うつもりであると表出があった.x+40日に退院前訪問指導を実施し,動作の確認と環境調整の提案を行い,その他指導や介護保険サービスの調整を経て,x+59日目に自宅退院となった.
【作業療法最終評価】※変化点のみ記載握力(R/L)11.1㎏/12.4㎏,FIM69(Motor55/Cog14),SAS 2-3Mets 「炊事」「掃除」の模擬動作でBorgスケール11-13
【考察】高度な大動脈弁狭窄の運動療法は禁忌とされている.症例のしているADLから「きつさ」を評価し,過活動にならない負荷で身体活動が継続できるよう環境調整による支援が活動性を維持させ,心不全発症後のディコンディショニングの改善の一助になったと考えられる.退院支援にあたり,症例自身の残存機能として,病前IADLをできるIADLに至るまでは改善が図れた.しかし,認知機能面の低下を認める事例に対して,心不全療養におけるセルフケアの意思決定支援についてはフォーマルだけでなくインフォーマルな支援は欠かせず,家族支援が必須である.症例のナラティブを聴取した結果,疾患特性に配慮した過活動にならない動作指導や環境調整を家族と共有する機会を設けることで,退院後の生活を具体的に想像できるよう支援した.また生活期に移行する際の申し送りにおいても,情報提供には,症例の意向と合わせて活動量の提案やセルフケアの確認事項を共有することで,多職種による継続した支援へと繋げられるような内容の提案を心掛けた.心疾患患者の退院支援において,症例,家族の背景と意思を尊重し,疾患特性に配慮した上で最善利益に近づけるよう参画した経験を今後の事例に活かしていく.
【文献】
1)日本心臓リハビリテーション学会.心臓リハビリテーション必携,2014