[PB-1-2] ポスター:心大血管疾患 1心臓血管外科領域における術後せん妄に対してICUから開始するADL訓練の効果検証
【はじめに】
我々は第54回日本作業療法学会において,心臓血管外科術後せん妄が術後のADL改善の遅延,入院期間延長や自宅退院率の低下要因となる可能性を報告した.そのため,術後せん妄発症者には術後のより早い段階からADL獲得に向けた取り組みを行っていくことが重要と考え,術後ICUからADL訓練を新たに開始した.今回,その効果を検証したため報告する.
【方法】
対象は2018 年7月から2019年6月までの期間,当院心臓血管外科へ開胸を伴う人工血管置換術,弁置換・形成術,バイパス術を目的に術前から待機入院した93名とした.術後翌日より集中治療室(ICU)で日本語版 NEECHAM 混乱/錯乱状態スケールを用いてせん妄のモニタリングを行った結果,29名に術後せん妄発症を認め,状態の悪化並びにせん妄の遷延や術前ADLに到達できなかった9名を除いた20名から有効なデータが抽出された.術後リハビリテーションの介入として,手術翌日のICUから理学療法は運動療法や歩行訓練を中心に介入し,作業療法は端坐位での食事や整容動作,排泄誘導など医師の安静度の指示に基づいたADL訓練を中心に介入した.術前ADLに到達した時点でADL訓練は終了とした.これらICUよりADL訓練を早期に開始した群を早期群,対照群として第54回日本作業療法学会で報告した術後せん妄発症者21名を通常群とした.この通常群はそれまで一般病棟転棟後にADL訓練を開始していた群である.検証内容はせん妄の重症度と消失期間,一般病棟転棟時と安静度解除の指標となる術後8日目のFIMによるADL自立度,術前ADLへの到達日数,ICU在室日数,術後入院日数,転帰状況とし,それぞれを両群で比較した.統計処理はt検定を使用し,転帰はχ二乗検定を使用した.統計解析には SPSS version23 for Windowsを用い,解析の危険率を 5%とした. 尚,本研究は当院倫理委員会の承認を得ている(承認番号290602号).
【結果】
性別や年齢,術前のADLや認知機能など二群間での対象者の属性に差はなく,術後せん妄の重症度や消失期間に差は見られなかった.一般病棟転棟時のADL自立度に差はなかったが,術後8日目では早期群の自立度が高く(p<0.05),下位項目では清拭,車椅子移乗,トイレ移乗,浴槽(シャワーチェア)移乗が優位に向上した(いずれもp<0.05).術後のICU在室日数,入院期間,転帰状況に差はなかったが,術前ADLへの到達日数は早期群が早かった(p<0.05).
【考察】
一般病棟転棟時には多くがせん妄の罹患期間内にあり,ADLの自立度に向上は見られなかったが,その多くがせん妄を離脱した術後8日目では自立度が向上した.早期群ではせん妄の離脱後に自発的な活動が増したものと思われ,より早く術前のADLに到達できたものと考えられた.術後せん妄発症者に対して術後ICUから開始するADL訓練は,活動遂行の自発性を増加させADLの早期獲得を図れる事が示唆された.しかし,今回の関わりの中ではせん妄の期間減少には至らず,入院期間や転帰に差はなかった.ADL訓練以外にも日中の生活リズムを付けた療養環境の早期設定や,他職種とのより密接な連携と関わりが必要であったと考える.今後の課題として取り組みたい.
我々は第54回日本作業療法学会において,心臓血管外科術後せん妄が術後のADL改善の遅延,入院期間延長や自宅退院率の低下要因となる可能性を報告した.そのため,術後せん妄発症者には術後のより早い段階からADL獲得に向けた取り組みを行っていくことが重要と考え,術後ICUからADL訓練を新たに開始した.今回,その効果を検証したため報告する.
【方法】
対象は2018 年7月から2019年6月までの期間,当院心臓血管外科へ開胸を伴う人工血管置換術,弁置換・形成術,バイパス術を目的に術前から待機入院した93名とした.術後翌日より集中治療室(ICU)で日本語版 NEECHAM 混乱/錯乱状態スケールを用いてせん妄のモニタリングを行った結果,29名に術後せん妄発症を認め,状態の悪化並びにせん妄の遷延や術前ADLに到達できなかった9名を除いた20名から有効なデータが抽出された.術後リハビリテーションの介入として,手術翌日のICUから理学療法は運動療法や歩行訓練を中心に介入し,作業療法は端坐位での食事や整容動作,排泄誘導など医師の安静度の指示に基づいたADL訓練を中心に介入した.術前ADLに到達した時点でADL訓練は終了とした.これらICUよりADL訓練を早期に開始した群を早期群,対照群として第54回日本作業療法学会で報告した術後せん妄発症者21名を通常群とした.この通常群はそれまで一般病棟転棟後にADL訓練を開始していた群である.検証内容はせん妄の重症度と消失期間,一般病棟転棟時と安静度解除の指標となる術後8日目のFIMによるADL自立度,術前ADLへの到達日数,ICU在室日数,術後入院日数,転帰状況とし,それぞれを両群で比較した.統計処理はt検定を使用し,転帰はχ二乗検定を使用した.統計解析には SPSS version23 for Windowsを用い,解析の危険率を 5%とした. 尚,本研究は当院倫理委員会の承認を得ている(承認番号290602号).
【結果】
性別や年齢,術前のADLや認知機能など二群間での対象者の属性に差はなく,術後せん妄の重症度や消失期間に差は見られなかった.一般病棟転棟時のADL自立度に差はなかったが,術後8日目では早期群の自立度が高く(p<0.05),下位項目では清拭,車椅子移乗,トイレ移乗,浴槽(シャワーチェア)移乗が優位に向上した(いずれもp<0.05).術後のICU在室日数,入院期間,転帰状況に差はなかったが,術前ADLへの到達日数は早期群が早かった(p<0.05).
【考察】
一般病棟転棟時には多くがせん妄の罹患期間内にあり,ADLの自立度に向上は見られなかったが,その多くがせん妄を離脱した術後8日目では自立度が向上した.早期群ではせん妄の離脱後に自発的な活動が増したものと思われ,より早く術前のADLに到達できたものと考えられた.術後せん妄発症者に対して術後ICUから開始するADL訓練は,活動遂行の自発性を増加させADLの早期獲得を図れる事が示唆された.しかし,今回の関わりの中ではせん妄の期間減少には至らず,入院期間や転帰に差はなかった.ADL訓練以外にも日中の生活リズムを付けた療養環境の早期設定や,他職種とのより密接な連携と関わりが必要であったと考える.今後の課題として取り組みたい.